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【表現評論】メモリーズオフ初代(1st) コアレビューその8 みなもルート(終)【全作プレイシリーズ】

シリーズ全般のネタバレが含まれます。

●前回の記事

●みなもと一緒に勉強

とにかく一緒に勉強させとけというゲームでございます。中間試験が特大イベントだからね。みなもは最初から主人公に気があるって感じですね。

●誰に力を入れているか

シナリオというのはキャラによって力の入れ具合が異なるわけですが、当然メインルートは一番力を入れますよね。1stだと唯笑。じゃあ他のキャラはどうなのかと。一番労力をかけていないのは小夜美でしょう。その間のグラデーションはどうなってるのか。再プレイする前は

唯笑>みなも>詩音>かおる>小夜美

だと思っていましたが、実際は詩音とかおるは逆じゃないか。個人的には唯笑みなもかおるがメインキャラで、詩音と小夜美はサブキャラなんじゃないかと思えます。シナリオのあっさり具合的に。力の入れ具合と人気はまた別の話なわけですが。

●みなもと古文

こんなCGあったかな。追加CGっぽい。主人公が答え言おうとすると遮ってくる。結構負けず嫌いです。みなもってこのゲーム随一の不思議ちゃんだよね。唯笑よりも謎。好奇心丸出しで声をかけてくるにキッズに近いものがある。見た目と違ってワガママで我も強い。後輩ちゃんなのに。伊勢物語は後々の伏線ですね。

●攻略が難しい

25年経ってもいまだにフラグがよくわかってないキャラです。詩音と同時攻略みたいな感じでやると上手くいく。

●雨の中でずぶ濡れに

なったみなもをおぶって保健室へ運ぶ主人公。伊勢物語を思い出すみなも。なぜ雨の中校門の前で待っていたのか。下駄箱で待てばいいのではないか。そんなツッコミはなしで。夢がひとつ叶ったというみなも。

●智也さん

テスト後に屋上で主人公を呼ぶときの声、彩花にそっくりじゃない。ここで絵の鑑賞会。肝心の絵がないので、みなもの画力は分かりません。

●オチバミ

みなもといえばオチバミ。勝手に造語を作るのもキッズっぽい。春に花見に行けばいいやろと返す主人公に絶対今行きたいとゴネるみなもさん。春まで生きてるかわかんないからね。事情がわかると切ないシーン。オチバミは唯笑と3人で集まるわけですが、不思議ちゃん同士意気投合してます。アンジャッシュのコントのよう。そして出てくる金色の海というワード。落ち葉が落ちていく時に一瞬金色に光る場面を見たみなもは、落ち葉が一面に浮かんでいたら金色の海になるじゃないかと言います。やばい。このワード聞いたら泣けてきた。

●主人公の似顔絵

自宅のポスト届けられた似顔絵。本物より男前だとか。まあね。人間の認知なんてみんな同じとは限らんからね。みなもには主人公が絶世のイケメンに見えているのかもしれない。唯笑はここで主人公をみなもに譲ったような発言をしています。

●彩花の従姉妹

唐突に開示される事実。昔から智也のことも知ってましたというね。最初から気があったのもそういう理由でした。病弱で今を必死に生きるみなもと過去に囚われる自分という構図に気づき、自分の情けなさを自覚した主人公は、今を生きることを選択します。これはみなもルートでしかできない対比ですね。

●みなもとデート

スケッチに行く二人。郵便局と街路樹の二択。街路樹の方に行くとみなものCGが出てきます。回収するならこっち。みなもは全キャラで一番好き好きオーラが出てますね。ど真ん中に豪速球をドンドン投げ込んできます。きゅーちゃんという謎おにぎりが出てきますが、正体はわからず。きゅうり? 最後に1万の本をプレゼントする男気を見せる主人公でした。夜の海が描きたいということで、連れていくと約束します。

●入院

デートの翌日に入院するみなも。主人公はここでようやくみなもが重い病だと知ります。主人公は毎日通い詰めるわけですが、みなもが元気な時に病院を紹介しているシーンがあります。やばい。ここ本当に泣けてきた。そんだけ病院に詳しいって、ずっと病院にいたってことですやん。主治医からドナー移植が必要な病だと聞かされる主人公。みなもが自分の顔を描いてるシーンもやばいですね。日に日にやつれていくから毎日修正して描けなくなっていくという。ドナー検査に立候補したけど、他人だと数万人に一人なので、当然引っかかりません。現実は甘くない。最後のトドメとして、実は彩花がドナーに適合していたことを知らされます。これで完全にノックアウトされて病院にいくこともできなくなりました。まあみなもはそれを全部知ってたわけですよね。恨み言ひとつ言わずに、主人公と仲良くなっていたわけです。これは耐えられない。

●最後のシーン

みなもが病院を抜け出して主人公の自宅を訪ねてきます。ろくに動けもしないような体調で、どうやって来たのか。想像するだけで泣けてくる。この1ヶ月が人生で一番幸せだったから、何も気にしなくていいと主人公を諭しますが、もう長くないことを察しているせいか、夜の海に行きたいと譲りません。主人公はみなもをおぶって夜の海に出かけます。ここでも伊勢物語が絡んでくる。夜の海を眺める二人。そして海は夜明けに金色の海に変わります。オチバミの伏線回収です。しかし物語はここでぶつ切りエンドに。その後どうなったかは全く分かりません。死んだか生きてるかも不明。ただみなもは最後の瞬間は幸せだったんじゃないでしょうか。そう思わせる物語でした。

●みなもルートまとめ

いやね、自分もだいぶ歳食いましたからね。25年前に感動したからって、今どうかな〜と思ってましたよ。ところがどっこい、全然当時と変わらない破壊力でした。やつれていくシーンとか、マジで泣きそうになる。病弱なのに意外とワガママで我が強くて不思議ちゃんな女の子が、主人公を振り回すところも、記憶よりはずっと可愛く見えましたね。当時は何も思わなかった気がするけど。

主人公の過去の罪が、今とリンクしていく様は、みなもルート独自のものです。よくこんなの考えたな、考えた奴悪魔だろってレベルの仕打ちです。ここまで主人公を痛めつけるルートは他にないですね。ただみなも(おそらく彩花も)は主人公を恨んではいない、むしろ主人公に感謝している、この1ヶ月が人生で一番楽しかったとすら言っているということで、余計にいたたまれない話になっています。いや〜。切ない。

色んな意味で今も昔も心に残る物語でした。

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