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症例振り返り10 蛇咬傷

自然毒は苦手な人が多いと思いますが、僕も苦手です。
田舎にいる限りは基本の対応を知っておかないと、いざというときに一から調べるということもできないです。

今回はヘビ咬傷

「ヘビに咬まれました」「何ヘビでしたか?」

日本本州で臨床をやる場合にはマムシ、ヤマカガシ、その他無毒のヘビを鑑別する必要があります。

マムシが圧倒的に多いため抗マムシ血清をおいている病院は割とあります。
逆にヤマカガシは頻度が少ないため抗血清の在庫を置いている病院は少なく必要時にはスネークセンターに問い合わせる必要があります。

ヘビの見た目は地域によってバリエーションがありますし、写真があれば多少有益ではあるものの、患者さんの話はあてになりません。

身体所見で重要視するべきは3点
①咬み痕→下図
②腫脹しているか→腫脹するのはマムシらしい
③出血が持続しているか→腫脹なく出血持続はヤマカガシらしい

https://www.takamatsu.jrc.or.jp/archives/010/201609/%E3%83%9E%E3%83%A0%E3%82%B7%E5%92%AC%E5%82%B7.pdfスライドから引用


https://www.takamatsu.jrc.or.jp/archives/010/201609/%E3%83%9E%E3%83%A0%E3%82%B7%E5%92%AC%E5%82%B7.pdfスライドから引用

そして血液検査も鑑別に有用です
①血小板が低下傾向→マムシらしい
②フィブリノゲンが低下傾向→ヤマカガシらしい


ヘビ咬傷の治療

原則入院:マムシ、ヤマカガシともに進行性の病態であるため

セファランチン10mg divは副作用も少なくヘビ咬傷では実施されることが多い。有効性の確固としたエビデンスはない。

咬まれてから6時間が勝負どころ
①腫脹が肘関節や足関節を越えて中枢に広がってこないかマーキング
※ヘビ咬傷は四肢末端に多く、肘関節より近位まで腫脹が広がる場合にはマムシ咬傷のGradeⅢ以上に該当し、抗マムシ血清を投与する適応となる。
②血小板、フィブリノゲン、CKなど項目をフォロー

抗マムシ血清は投与がややこしい

抗マムシ血清は適応があればできる限り早く投与すべきです。四肢末端の咬傷では肘・膝関節近位まで腫脹が進行する場合、または腫脹により気道閉塞をきたす可能性がある部位の咬傷でも投与が推奨されます。

抗マムシ血清はウマの血性です。そのためアレルギー反応の副作用の頻度が高いです。
急いで投与しようとしても、アレルギー反応の確認のため皮内試験などが必要であり添付文書に記載はあるものの煩雑です。

急いでいるとき添付文書を理解して間違いなく投与するのは難しく、ミスも起こりやすいため、使用頻度の多い病院ではだれでも投与できるようなマニュアル作成が必要でしょう。


まとめ

  • ヘビ咬傷はマムシ、ヤマカガシ、その他無毒ヘビの鑑別を行う

  • ①咬み痕 ②腫脹の有無 ③出血の持続 が鑑別の参考になる

  • ①血小板 ②フィブリノゲン も鑑別の参考になる

  • 原則入院加療、最初の6時間の観察が重要

  • マムシ咬傷は肘・膝関節より近位まで腫脹が拡大すれば抗血性の投与適応

  • 抗血性の投与は、事前の皮内試験など煩雑である。I度読んでイメージを


参考になるリンク

乾燥まむしウマ抗毒素の添付文書
松山赤十字病院 皮膚科 雲財先生のスライド
高松赤十字病院 神野先生のスライド
Antaa「救急外来の動物咬傷」ゆっくり救急医のスライド


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