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症例振り返り11 髄膜炎対応

救急外来に出る医師は誰もが髄膜炎の初期対応はできないといけません。
初期研修医の先生方は、もう自信をもって髄膜炎対応できますか?


髄膜炎対応とは

髄膜炎か?と思った時点で頭を使わず反射で動かなければなりません。
心停止時の蘇生プロトコールと同じです。

それは治療の遅れが致命的になるからです。だらだらと時間を無駄にしてはいけません。今時電子カルテを使ってない初期研修病院はないでしょうから覚えられなければ、テンプレートにして隠し持っておきましょう。

髄膜炎対応の流れ

  1. 人を集める。とにかく人手が必要です「髄膜炎対応で動きます!」と宣言しましょう。「心停止です!誰かいませんか!」と同じです。

  2. 血液培養2set採取。意識障害+発熱の原因検索も同時並行で進めましょう。髄液検査よりも陽性率が高いです。必ず取りましょう

  3. DEX9.9gを静注します。肺炎球菌性髄膜炎で、抗生剤投与前にDEX投与すると予後改善効果があります。抗生剤投与後の開始は推奨されていません。

  4. CTRX2g、±ABPC2gを静注します。dripじゃないですよ、ポタポタやってる時間はないです。アレルギーは?起こってしまったら対応するしかありません。それくらい急ぐのです。

  5. VCM1gをdrip開始します。VCMはRedman症候群となるため投与速度は守らなければいけません。

  6. 頭部CT撮影し髄液検査前に脳ヘルニア所見がないか確認しましょう。CT画像は必須ではなく、所見を確認すればskipできるとされますがCT普及率の高い日本では急いで撮影してしまうことが多いです。

  7. 髄液検査を行う。抗生剤が先に入ってても速やかに行えば培養結果には問題はないとされています。

  8. ACVの投与を検討する。巣症状を伴う発熱+意識障害ではヘルペス脳炎を考える必要があります。疑わしくは治療です。

髄膜炎の抗生剤選択の理由

髄液移行性が高く肺炎球菌をターゲットとしてCTRXを選択します。
しかしPRSPではVCMが必要となるため併用します。

小児や60歳以上の高齢者ではリステリアもカバーする必要があります。CTRXに耐性なのでABPCを使用します。

アシクロビルはヘルペス脳炎に対して用います。ヘルペス脳炎の検査には髄液PCRを用います。血清の抗体などは既感染者が多いので使えません。しかし今のところ髄液ヘルペスPCR検査は保険外、15000円。病院持ち出しになってしまいますが、検査しなきゃわからないので自腹を切らざるをえません。

髄膜炎の治療薬の削り方

DEXは肺炎球菌性髄膜炎での予後改善効果が示されていますが、それ以外の原因では不要です。検査結果から肺炎球菌が否定的であれば中止します。

VCMはPRSPが否定的であれば終了します。そもそものPRSPが地域にどれだけいるかで事前確率を見積もります。

ABPCはリステリア以外の起因菌が判明すれば終了できますが、血液培養陰性の場合には悩ましいです。リステリア髄膜炎の標準治療期間が21日なのでやりきる場合もあります。

ACVについてはヘルペス脳炎が否定的な場合に中止します。発症3日以内のヘルペスPCR陰性では1回で否定するには感度が不十分なため、再度髄液のPCR検査陰性を確認します。

またステロイドが入ると髄膜炎の症状はマスクされるため、尿路感染症や肺炎と同様に局所検体の改善所見をフォローする必要があります。具体的には数日後の髄液フォローが必要になります。

髄膜炎対応のポイント

髄膜炎対応を救急みんなの共通認識にする

これすごく大事なんです。
心配蘇生のプロトコールは皆分かってるから、心臓マッサージやアドレナリンや除細動やら医療者なら誰でもあの流れに参加できますよね
髄膜炎対応も一緒なんです。誰でも「髄膜炎対応します!」って宣言を受けたら参加できる準備が必要なんです。
救急診療にあたる医師はもちろん看護師にも共通認識を持ってもらうように働きかけなければいけません。

血液と髄液は余分に取って保存しておく

細菌性髄膜炎と分かれば治療自体はシンプルです。
問題は無菌性髄膜炎だったとき。
無菌性髄膜炎の鑑別は多岐にわたって、自己免疫性脳炎や腫瘍随伴性などステロイドが最初から入ってしまっていて治療反応性ではわからない状態になります。

ステロイドが入る前の血液検体、髄液検体を多めに取っておけば後から各種自己抗体の検査に使うことができます。
無菌性髄膜炎となった場合の戦いを見越して検体保存ができるといいと思います。

まとめ

  • 救急診療にあたる医療者は髄膜炎対応を反射でできる必要がある。

  • 髄膜炎での抗生剤選択の理由を知る。

  • DEX、CTRX、ABPCはdripじゃなくて静注する。

  • 血液検体と髄液検体は後々のために多めにとって保存する。


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