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詩集『朝のはじまり』 全作品

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2010年に刊行した詩集『朝のはじまり』(BOOKLORE / 絶版)の収録作品です。現在は、詩集『歩きながらはじまること』(七月堂)に収録されています。 作品は、上から下へ目次… もっと読む
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#西尾勝彦

作品「帰宅」

帰宅               春風は 野原に生まれる 鹿と静かに見つめ合い 苔の道を…

西尾勝彦
6か月前
14

作品「花ふぶき」

花ふぶき            晴れ 時々 花ふぶき こんな日は 昼から 飲むことにしよう…

西尾勝彦
6か月前
12

作品「いぬのふぐり」

いぬのふぐり       春の初め 今年も 畦道で見つけた青い花 目立たず  ひっそり自…

西尾勝彦
6か月前
7

作品「まむし」

まむし           とうとう ヘビまで捕まえてしまった 庭で飼い犬があまりに吠…

西尾勝彦
6か月前
7

作品「ひとりたのしむ」

ひとりたのしむ      朝の光を 独り楽しむ 猫の寝言を 独り楽しむ 庭の仕事を 独…

西尾勝彦
6か月前
5

作品「ならまちの古本屋」

ならまちの古本屋           奈良町は ところどころ崩壊気味の 迷宮である もと…

西尾勝彦
6か月前
8

作品「路地奥の記憶」

路地奥の記憶          私の最初の記憶は、小さな黒い家に結びついている。京都の路地奥の家。父が生まれた一九四二年に建ったという。  朝日の中、家族四人が目を覚ましたばかりの風景。夕暮れ時、二階の窓から見えた瓦屋根の家並み。豆腐屋の淋しげなチャルメラの音。家の前の道は、砂利道だった。雨上がり、いくつもの水たまりには、それぞれに澄みきった青空が映し出されていた。当時、ペダルカーで路地を疾走するのが好きだった。特に、近くのS字カーブをスピード上げて曲がることが楽しみ

作品「地べた」

地べた            奈良は まだ 地べたが多い 手つかずの自然が そのままに あ…

西尾勝彦
6か月前
6

作品「路上」

路上      秋の終わり  庭の大きな櫟(くぬぎ)は ようやくすべての葉を手放した 日曜…

西尾勝彦
6か月前
3

作品「手ぶらの人」

手ぶらの人         どこへ行くにも 基本は手ぶら 散歩は 手ぶら 仕事に行くとき…

西尾勝彦
6か月前
9

作品「現代の昔話」

現代の昔話    のっぺりとした ならまちの西に 坂道が現れる その途中 陰陽町 いんぎ…

西尾勝彦
6か月前
5

作品「小さな電車」

小さな電車        「京都岩倉の病院に入院しています」  若い知人からメールが…

西尾勝彦
6か月前
4

作品「千年のダンス」

千年のダンス             平城京の時代 つまり八世紀から 春日山は原始の姿…

西尾勝彦
6か月前
1

作品「月の人」

月の人            たぶん しかたなく 地球にやってきた 月の人を 知っています 初めて会った日は 本当に驚きました だって 雰囲気が異質なんですから 全身が のほん というか ほほん というか 不思議な薄いヴェールに 包まれていたのです まったく 見ないタイプの人でした だから 僕は緊張しました 言葉がきちんと通じるかと 心配もしました ただ顔をよく見ると いつも眠たそうでした きっと 地球に不慣れだったのでしょう 性格は 案外気さくで いろいろと話をする