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詩集『朝のはじまり』 全作品

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2010年に刊行した詩集『朝のはじまり』(BOOKLORE / 絶版)の収録作品です。現在は、詩集『歩きながらはじまること』(七月堂)に収録されています。 作品は、上から下へ目次…
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#詩

作品「花ふぶき」

花ふぶき            晴れ 時々 花ふぶき こんな日は 昼から 飲むことにしよう…

西尾勝彦
6か月前
12

作品「いぬのふぐり」

いぬのふぐり       春の初め 今年も 畦道で見つけた青い花 目立たず  ひっそり自…

西尾勝彦
6か月前
7

作品「まむし」

まむし           とうとう ヘビまで捕まえてしまった 庭で飼い犬があまりに吠…

西尾勝彦
6か月前
7

作品「ひとりたのしむ」

ひとりたのしむ      朝の光を 独り楽しむ 猫の寝言を 独り楽しむ 庭の仕事を 独…

西尾勝彦
6か月前
5

作品「ならまちの古本屋」

ならまちの古本屋           奈良町は ところどころ崩壊気味の 迷宮である もと…

西尾勝彦
6か月前
8

作品「路地奥の記憶」

路地奥の記憶          私の最初の記憶は、小さな黒い家に結びついている。京都…

西尾勝彦
6か月前
3

作品「地べた」

地べた            奈良は まだ 地べたが多い 手つかずの自然が そのままに ある 地面の表情が じかに 見てとれる 人と同じで くるくると 顔色を変える 長雨の日は 水たまりをあちこち作る 凍える日は すすっと霜柱をこしらえる たまらなく暑い日には 強い根っこを育てる 雨上がりには 湯気をしゅううと上げる 時々 庭の地べたに寝ころんでみる 顔を 空に向け 背中は 地べた 空は  いつも  よそよそしげに 遠ざかっていく 地べたは  なぜか  親しく  重い

作品「路上」

路上      秋の終わり  庭の大きな櫟(くぬぎ)は ようやくすべての葉を手放した 日曜…

西尾勝彦
6か月前
3

作品「手ぶらの人」

手ぶらの人         どこへ行くにも 基本は手ぶら 散歩は 手ぶら 仕事に行くとき…

西尾勝彦
6か月前
9

作品「現代の昔話」

現代の昔話    のっぺりとした ならまちの西に 坂道が現れる その途中 陰陽町 いんぎ…

西尾勝彦
6か月前
5

作品「小さな電車」

小さな電車        「京都岩倉の病院に入院しています」  若い知人からメールが…

西尾勝彦
6か月前
4

作品「千年のダンス」

千年のダンス             平城京の時代 つまり八世紀から 春日山は原始の姿…

西尾勝彦
6か月前
1

作品「月の人」

月の人            たぶん しかたなく 地球にやってきた 月の人を 知っていま…

西尾勝彦
6か月前
11

作品「優しさ」

優しさ            本当に強い人は優しい 幾多の困難に打ちのめされても はい上がってきたから 苦しみや悲しみを心の底で 感じてきたから 自分が人に助けられてきたことを 知っているから そして優しい人は弱い すぐに 人を信じてしまうから すぐに 心 傷ついてしまうから でも弱い人は強い その矛盾を 噛みしめて生きているから その矛盾を 深い 優しさに代えていくから 『歩きながらはじまること』(七月堂) 『朝のはじまり』(BOOLORE