シェア
帰宅 春風は 野原に生まれる 鹿と静かに見つめ合い 苔の道を…
花ふぶき 晴れ 時々 花ふぶき こんな日は 昼から 飲むことにしよう…
いぬのふぐり 春の初め 今年も 畦道で見つけた青い花 目立たず ひっそり自…
まむし とうとう ヘビまで捕まえてしまった 庭で飼い犬があまりに吠…
ひとりたのしむ 朝の光を 独り楽しむ 猫の寝言を 独り楽しむ 庭の仕事を 独…
ならまちの古本屋 奈良町は ところどころ崩壊気味の 迷宮である もと…
路地奥の記憶 私の最初の記憶は、小さな黒い家に結びついている。京都の路地奥の家。父が生まれた一九四二年に建ったという。 朝日の中、家族四人が目を覚ましたばかりの風景。夕暮れ時、二階の窓から見えた瓦屋根の家並み。豆腐屋の淋しげなチャルメラの音。家の前の道は、砂利道だった。雨上がり、いくつもの水たまりには、それぞれに澄みきった青空が映し出されていた。当時、ペダルカーで路地を疾走するのが好きだった。特に、近くのS字カーブをスピード上げて曲がることが楽しみ
地べた 奈良は まだ 地べたが多い 手つかずの自然が そのままに あ…
路上 秋の終わり 庭の大きな櫟(くぬぎ)は ようやくすべての葉を手放した 日曜…
手ぶらの人 どこへ行くにも 基本は手ぶら 散歩は 手ぶら 仕事に行くとき…
現代の昔話 のっぺりとした ならまちの西に 坂道が現れる その途中 陰陽町 いんぎ…
小さな電車 「京都岩倉の病院に入院しています」 若い知人からメールが…
千年のダンス 平城京の時代 つまり八世紀から 春日山は原始の姿…
月の人 たぶん しかたなく 地球にやってきた 月の人を 知っています 初めて会った日は 本当に驚きました だって 雰囲気が異質なんですから 全身が のほん というか ほほん というか 不思議な薄いヴェールに 包まれていたのです まったく 見ないタイプの人でした だから 僕は緊張しました 言葉がきちんと通じるかと 心配もしました ただ顔をよく見ると いつも眠たそうでした きっと 地球に不慣れだったのでしょう 性格は 案外気さくで いろいろと話をする