「訪問者」あらすじA

(あらすじ)
朝、公園で暮らすホームレスの老人が園内を掃除していると、ある男と出会い、男の家の留守番を依頼される。
突然の依頼に戸惑ったが、老人は男の雰囲気に惹かれ、「こんな自分でも役に立つなら」と留守番を引き受けることにする。
「好きに使ってください」と案内された家は、老人に自身の過去を思い出させた。「俺もこんな家で暮らしていた。あのころは楽しかったなぁ」と思いを馳せていると、少年や中年女性、老婦人など、見知らぬ者たちが一人ひとり訪ねてくる。
「あの……〇〇さんは?」
「あいにく留守です」
老人が答えると、訪問者たちはみな、寂しそうな表情を浮かべた。その様子が気になり「ご用件は?」と訊ねると、訪問者たちはみな、困ったような表情を浮かべた。老人はそのたびに居たたまれなくなり、自分が知っている男が、いかに好感のもてる人物かを語ってみせた。すると訪問者たちはみな、「私が知ってる〇〇さんもそういう人です」と微笑み、老人もつられて笑った。
夕方、男が帰宅する。老人は訪問者たちとの会話を、楽しそうに男に報告する。と、老人は男が苦笑していることに気づき、「いや、好き勝手言って申し訳ない。あなたを見てると、なんだか他人とは思えなくて」と言い訳する。「……僕もですよ」と寂しそうに微笑む男——。
突然、老人は不安に襲われる。視線をさまよわせ、テーブル上の伏せられた写真立てに気づく。写真には、ある家族(男や訪問者たち)が写っており、その一人は老人自身だった。
「ここは……」
「(うなずき)あなたの家です」
「……いつからだ? いつから俺はこんなことを?」
「もう何年も前から……毎日です」
老人は、家族がいつのまにか部屋にいることに気づく。みな、心配そうに自分を見つめている。肩を落とす老人。男は、老人を励ますように言う。
「でも思い出せてよかった。今日もまた、家族でいられます」
老婦人は老人に手を重ね、家族は夕飯の支度を始めるのだった。

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