テレビ東京最後の日

(あらすじ)
テレビ東京の新人アナウンサー・東 七太郎が、初仕事として「テレビについてどう思う?」という街頭インタビューに挑む。東の期待に反し、「これ、テレビですか?」「テレビってまだやってるんですか?」と冷ややかな反応が次々に寄せられる。テレビに興味を示したのは一人の老人のみ。老人は往年の人気番組を例に挙げ、「また、面白いテレビつくってよ」と東に頼む。
テレビへの想いを熱くする東だったが、テレビ東京のテレビ部門はすでに大幅に人員が削減され、まもなく閉局が予定されていた。
そんなとき東は、最後の特番のスタッフが募集されていることを知り、さっそく担当プロデューサー氏のもとを訪ねる。が、話を聞くと、特番とは名ばかり。ようは「最後の日なんだから、何かやれ。『明日の天気予報』がいいだろう」という上からのお達しだった。しかも番組は、東がほぼ一人で作り上げなければならないという。「分かってると思うけど、テレビだよ? お金かけらんないから」。名ばかりのプロデューサー氏に告げられたのは、夢もへったくれもない言葉だった。
それでも東は、ウザがられながらも、往年のスタッフにヒアリングし、天気予報コーナーの作り方を一から学んでいった。そして当日、カメラを除き、取材・音声・照明・メイク・小道具など、東がほぼ一人で担当する『明日の天気予報』の生放送が始まり、西は沖縄・九州から、天気予報が快調に進んでいく。
が、終盤、東は大変なことに気づく。自分で書いた原稿であるにもかかわらず、北海道の地名「倶知安」が読めないのだ。愕然とする東。残された時間はごくわずか。密かにモニターで注目していた局内のスタッフたちも固唾を飲んで見守る。
重苦しい空気が漂うスタジオに突然、派手なスーツに身を包み、メイクを決めた女性がさっそうと現れる。「〇〇P?」と驚く東。そう、プロデューサー氏の正体は、テレ東伝説のアナウンサーだった。「見てらんないわね」と東から原稿を受け取り、天気予報を引き継ぐ伝説のアナウンサー。「北海道倶知安(くっちゃん)町は季節外れの大雪に見舞われ……」と見事に原稿が読み上げられると、東は思わずガッツポーズを決める。
「スタジオからは以上です」と『明日の天気予報』が締めくくられると、「オッケーです!」とスタッフの声が上がる。カメラが引くと、スタジオには「テレビ東京最後の日」撮影スタッフの姿が見えるのだった。

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