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アコギ回顧録 Vol.35 「そしてSomogyi」「Somogyiについてのあれこれ」

 ギターを道具(弾くもの、使うもの)として捉え、プレイヤーの視点から見た良いギターとはどのようなものか?その答えを追い求めて50年余り。所有したギター本数も3桁に届くぐらい?!
 その答えと言えるかどうかわかりませんが、過去~現在を振り返って自分なりの考え方をまとめてみようと思いました。アコギ好きの方、興味のある方にとって、少しでもお役に立つことができれば幸いです。

「そしてSomogyi」
 はじめてゲットしたSomogyiは1993年製のモディファイドDのカッタウェイ(No.133)、トップはヨーロピアンスプルース、サイド・バックはブラジリアンローズウッドでした。

 Somogyiというギターを手に入れていつでも好きなときに弾くことができるようになり、一番驚いたのはチューニングのときでした。緩めていた弦を張っていき徐々に音が高くなってくるとき、その反応(レスポンス、音の伸び、音量など)が今まだ持っていたギターとまったく別の次元のものでした。特にプレーン弦(1・2弦)でそのことを強く感じました。また深夜に家族にわからないように小さな音で弦を爪弾いたとき(何もそんな時間に弾かなくてもよさそうなものですが・・・)、どんなにアタックを小さくしてもきちんと反応が返ってくることにすごく感動したことを覚えています。
 もうひとつ、自分で弾いているときにはさほどすごいとは思わなかった低音の鳴りが、録音してみて「えーっ、こんなに鳴ってたんか?」と思うほどすごい音だったことでも驚きました。
 けっして安い買い物ではありませんでしたが(それでも今の価格から思えば当時はまだ安かったなと思ってしまいます。)、十分それだけの価値はあると思わせてくれるギターでした。

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最初に手に入れたMD-Cutaway(左側)と2本目のMD
MD-Cutawayは新品で購入、MDはUsedでしたがSerial No.は連番でした。

「Somogyiについてのあれこれ」
 Somogyi(正しい発音はソモジーらしいです。)さんは1971年にギター製作家として出発し、最初はフラメンコギター、次にクラシックギター、そしてスチール弦のギターを製作していきました。最初はそれほど評価されてはいませんでしたが1980年代に入ってから(たぶん1982~3年ごろだったと思います。ギタービルダーのギター製作コンテストで優勝し、そのギターをマーク・オコーナーが使っていたという話があります。)だんだんと評価が高くなりその地位を確立していったようです。

 1991年にカリフォルニアでおこった大規模な山火事に巻き込まれ、それまでの工房がすべて焼けてしまいました。所有していた自動車に(フォルクスワーゲンのゴルフだったそうです。)積めるだけギターの材料を積んで着の身着のままで逃げたということです。このあと再びギター製作を始めるまで約2年の歳月を要することになります。

 自分が最初に所有したSomogyiは、火事のあとの再生産後の最初のロットの内の1本です。火事の影響でギターにはいくつかの変化がありました。一番大きな変化はサウンドですが、それ以外にもヘッドの形状など工房が焼けてしまう前とは違う点があります。(火事で工房が焼けてしまい、ギター製作のための型枠が無くなってしまったことが原因です。)

 この時期のSomogyiのサウンドの特徴ですが、なんといっても音の芯が太い。(というふうに文字で書いても、読んでいる方にはわからないと思いますが・・・)Somogyiというギターが評価されるようになってから現在に至るまで、たぶんこの頃のものが最も芯が太い音がするのではないかと思います。反面、ふくよかさという点ではどうしても物足りなさを感じてしまうのですが、パワーがあるという点ではこの頃が一番だと思っています。
 ヘッドの形状が変わったのもおそらく以前の型(テンプレート)がすべて消失したために、新しく作り直したのだろうと思われます。はっきりいつから変わったのかは確認していませんが、その後何年か経っていくらか小さめになりました。昔のものと似たようなヘッドの大きさになっているようです。

 Somogyiのサウンドの変化を大まかに分けると、初期~1980年代前半、1980年代中期~1991年(火事で工房が焼けるまで)、1993年以降となります。ただ、93年のリスタート以降はものすごく大きく変化しています。その変化の説明だけで、相当な文字数になりそうです。サウンドの話なので言葉で表現するのは非常に難しく、どうしても伝えきれない部分があると思います。
 1993~1994年頃のものは音の芯がやたら太く、パワーも凄かったです。その反面繊細さに欠け、レスポンスも後年のものと比べると劣っているように感じました。1990年代の中ごろから徐々に音の芯が細くなって行き、繊細さやふくよかさ、レスポンスの良さ等がどんどん出て来るようになります。あくまでも個人的な感想ですが、200年代の中期以降は行き過ぎてしまったように思います。レスポンスや繊細さ、ふくよかさは凄いけれど、音の芯が細くなりすぎてアタックが少し強いと音つぶれてしまうような感じがします。レスポンスを突き詰めて行くとそうなってしまうのかもしれませんが、どうしてもその部分は納得できませんでした。自分はかなりアタックが強い方なので、ここまできてしまうと「俺には使えないやろうな。」と思ってしまいました。右手のアタックを超繊細にコントロールできなければ、使いこなせないと思います。違う見方をすれば、このギターでないと表現できない楽曲が無いのではないか?と思えてしまうぐらいです。

Somogyiさんのホームページ
https://esomogyi.com/pricing/
ギター写真が数多く出ています。サウンドもさることながら、そのデザインセンスの良さにも驚かされてしまいます。

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OO Cutaway 2001年とM.D. Cutaway 2004年、どちらもサイド・バックはQuilted mahogany

 あと余談ですが、
 数々のギタービルダーの中でSomogyiさんだけが、別格であると長い間信じて疑いませんでした。新しく出来てくるギターを弾かせてもらうたびに、「凄い!!よくこんなギターが造れるなぁ。」と感じていました。「なんや、これ!あかんやん。」というのは1本もありませんでした。(初期の作品~82年ぐらいまでは除く)
 このことは、とりもなおさずSomogyiさんが狙ったサウンドをちゃんと作り上げていることの証明だと思っています。ほとんどのビルダーのギターは、良いものがあっても「たまたま出来ただけ。」ということが多かったです。たまに「おおっ!」というのがあったとしても、その次の作品がイマイチだったりします。俗にいう“当たりハズレ”というやつですね。もちろんSomogyiさんの作るギターにも優劣(好みと言った方が良いかもしれません)はあります。それでも非常に高い次元のことであり、ばらつきが少なく「音づくりということを理解して、造っているのだな。」ということを感じさせてくれるビルダーです。
 例外で一人だけ、Somogyiさんと同じぐらいのレベルだと思わせてくれたビルダーがいます。Jason Kostal(ジェイソン・コスタル)という製作家です。彼のギターも高価なので(アメリカで中古でも20,000ドル近い価格です。)、実際に見たり弾いたりすることは難しいかもしれません。

 拙い文章をお読みいただき、誠に有難うございます。皆様の感想、ご意見をお聞かせください。 またアコギに関する相談等がございましたら、どんなことでもOKです。遠慮なくお尋ねください。
宛先 e-mail:mail@acogian.com または twitter(@acogibucho)にお願いします。

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