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アコギ回顧録 Vol.33 「Santa Cruz」「Santa Cruz Guitar」についてのあれこれ

 ギターを道具(弾くもの、使うもの)として捉え、プレイヤーの視点から見た良いギターとはどのようなものか?その答えを追い求めて50年余り。所有したギター本数も3桁に届くぐらい?!
 その答えと言えるかどうかわかりませんが、過去~現在を振り返って自分なりの考え方をまとめてみようと思いました。アコギ好きの方、興味のある方にとって、少しでもお役に立つことができれば幸いです。

「Santa Cruz」
 ぼちぼちSomogyiの話に入ろうかなと思いましたが、その前に忘れてはいけないいくつかのギターのことを書こうと思います。

 まずはSanta Cruz。アメリカのカリフォルニアにある小さなギターメーカーです。(今でこそギターメーカーと言えますが、1970年代に会社を立ち上げてから1990年にヤマハと代理店契約を結ぶ頃までは、製作から営業まですべてを2人でやっていました。)1970年代の終わりごろにはすでにその地位を確立していましたが、1990年以降量産し始め(生産台数の桁が変わるほど急激に増産し始めました。)品質が低下してしまったようです。個人や数人規模の小さなギタービルダーには、そもそも桁が変わるほどの生産ができような材料のストックがなかったと思われます。これはあくまでも憶測ですが、それこそあてがいぶちの材料を何とか持ってきて数だけたくさん作っていたのではないかというように考えざるをえません。

 細かい説明は省きますが、自分がより評価できるのは1980年頃から1990年以前のSanta Cruzということになります。以前アメリカの中古ギターのカタログをたくさん集めて、Santa Cruzのシリアルナンバーを追いかけたことがあります。1970年代から1989年までは、見事なほど生産台数が変わっていませんでした。(月産2~3本、年間30本程度)

 現在のSanta Cruzのギターは、量産していた90年代と比べるとかなりクゥオリティが上がっているように思います。日本ではあまり高い評価を受けていないようですが、アメリカではコリングスと同等かそれ以上の評価を受けているようです。コリングスと比べると、ユーズドギターの価格差がかなりありましたので、日本での中古のSanta Cruzはかなりお買い得と言えたと思います。
 そのサウンドの特徴は(マーチンと比べると)明るいクリアーなトーンということになります。マーチンのような廻り込みがなく、よりタイトなサウンドといっても良いかもしれません。最近のようなオープンチューニングを多用するフィンガーピッキングには少し物足りなさを感じるかもしれませんが、フィンガーピッキングとフラットピッキング両方をプレイするプレイヤーには非常に使い勝手のよいギターになるのではないかと思います。ヤマハと代理店契約を結ぶまではずっと月産2~3本だったので1980年代のSanta Cruzはなかなか市場には出てきませんが、ねらい目のギターかも?です。(ただし、1980年代のSanta Cruzがすべて当たりというわけではありませんので、探してみようという方は自己責任でちゃんと弾いてから判断してください。)また、90年代以降のSanta Cruzの中にも良いものがあるかもしれません。ギターは、メーカー、製造された年代、同一モデル、材質(スペック)だけでは判断できないと思います。1本ずつ別々の個体としてとらえた方が良いのではないでしょうか?このことはヴィンテージのマーチンやギブソンにも言えることです。ギターのサウンドは個体で判断しましょう。先入観は禁物です。

モデルH 1987年製

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 ついでに、過去に所有したSanta Cruzを挙げておきます。
トニーライス(1990 ジャーマン、ハカランダ)
トニーライス(1990 ジャーマン、ハカランダ)
トニーライス(1989 シトカ、ハカランダ)
トニーライス(1988 シトカ、ローズウッド)
D(1986 ジャーマン、ハカランダ)
D(1989 ジャーマン、ハカランダ)
OOO(1986 ジャーマン、ハカランダ)
D-KOA(1979 シトカ、コア)
H-KOA(1986 シトカ、コア)
F(1993 シトカ、ローズウッド)
H-KOA (1987 オールコア)
D-KOA D-151(1985 シトカ、コア)
F(1998 セダー、マホガニー)
D-Custom 45(1996 ジャーマン、ハカランダ)
トニーライス(1995 シトカ、ハカランダ)
Vintage Artist D(1997 シトカ、マホガニー)
Vintage Jumbo(2000 シトカ、マホガニー)
D-Custom Mahogany(1999 アディロン、マホガニー)
D-Pre War(2008 シトカ、ローズウッド)

D-Pre War 2008年製です。

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最後にここだけの話を
 Santa Cruzは1990年にYAMAHAと代理店契約を結び、急激に生産本数を増やしました。しかし日本国内では思ったほど売れず、YAMAHAに相当な数の在庫が残ってしまったようです。時期ははっきり覚えていませんが、ほどなくYAMAHAが代理店契約を打ち切り在庫を投げ売りしたようです。このせいで市場で値崩れを起こし、何年か前までは非常にリーズナブルな価格で中古のSanta Cruzが出回っていました。自分自身の中ではSanta CruzはCollings(コリングス)と同等かそれ以上の評価をしていたので、かなり悔しい思いをしていた覚えがあります。量産されだして以降、かなり品質が落ちたであろうということは否定できませんが、すべてのギターがそうだとは思えません。うまく当たりを探せれば、良いギターをゲットすることができたと思います。
 近年、日本での価格も本来の価格になってきているようです。最近のものはほとんどがカスタムビルドという感じになっています。レギュラーモデルの方が少ない感じがしますね。安くはないですが、十分価格に見合ったサウンドを持ったギターだと思っています。(ここ最近、メッチャギターの価格が高くなったような気がします。世界的にインフレになるという話もあるので、嫌なムードです。)

 拙い文章をお読みいただき、誠に有難うございます。皆様の感想、ご意見をお聞かせください。 またアコギに関する相談等がございましたら、どんなことでもOKです。遠慮なくお尋ねください。
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