アコギ回顧録 Vol.32 「初めてのGreven」「Grevenについて」
ギターを道具(弾くもの、使うもの)として捉え、プレイヤーの視点から見た良いギターとはどのようなものか?その答えを追い求めて50年余り。所有したギター本数も3桁に届くぐらい?!
その答えと言えるかどうかわかりませんが、過去~現在を振り返って自分なりの考え方をまとめてみようと思いました。アコギ好きの方、興味のある方にとって、少しでもお役に立つことができれば幸いです。
「初めてのGreven」
その当時まだ珍しかったSanta CruzやGrevenなどの手工ギターにも興味を持ち始め、少しずつ「欲しい」と思う気持ちが芽生え始めました。ただ安い値段ではなかったので(新品なら50年代後半から60年代前半のD-28が買えるぐらいの値段でした)、そう簡単には決断できませんでした。なので、「中古でいいものがあったら何とかしよう」くらいの気持ちでいました。
とりあえず通っていた神戸のギターショップに「何かいい出物が入ったら教えてください。」とお願いしておき待つことにしましが、何とそれからわずか1週間ほどで連絡が来たのでした。
「良いGrevenの中古が入荷したから見においで」 、もちろん次の休日には飛んで行きました。
初めて買う気で見せてもらったGreven、トップがジャーマンスプルース、サイドとバックはハカランダの“White Lady”1978年製でした。ユーズドではありましたが状態は良く、とりあえず買うことにしました。
“とりあえず”というのは、正直なところそのギターの本当の良さがそのときにはわからなかったからです。今まで自分が良い音だと思っていたマーチンのヴィンテージとはまったく違う音質のギターであるということはよくわかったのですが、それが良い音なのかどうかその当時の自分にはわかりませんでした。ただお店のオーナーのことは信用していましたし「買っておいて絶対に損のないギターやで。」という言葉にも説得力がありました。今現在は本当にいい音だと思うし、すごいギターだなと自信を持って言えますが・・・。(余談ですが後に坂庭 省悟さんと仲良くなって我が家に来られた時、いつも決まってこのギターを弾かせてと言われるギターでした。)言葉ではうまく表現できませんが、あえて言うなら“色気のある音”でしょうか?こういう音色を持ったギターは他に出会ったことがありません。
ちなみにこの“White Lady”、そのギターショップで初めて正式に輸入した第1号だったそうです。ヘッドのインレイに使用されているホワイトパールも、サウンドホールとトップのボーダーに使用されているアバロンも相当に吟味された最高のものが使われているとのことでした。ほかの“White Lady”と並べて比べるとその違いがすごくよくわかります。たまたま縁があって自分のものになりましたが、本当にラッキーだったと思います。
はじめて買ったGreven。そのときにはわからなかったサウンドの良さが、自分のものになって毎日弾くことにより少しずつわかり始めました。それとともにフィンガーピッキングでプレイするときに必要になるサウンドとはどのようなものか?という疑問にも、少しずつではありますが自分なりの解釈ができるようになっていたように思います。
「Grevenについて」
Grevenは1980年代の中ごろから少しずつフィンガーピッキングに特化したサウンドづくりに変わっていったようです。もともとはプリウォーのマーチンサウンドを目標にしていたと聞いていますが、いち早くそういったサウンドを目指したことが現在の高い評価につながったのではないかと思っています。一般的にはあまり知られていませんでしたが、非常に音の分離がよく録音などには最高に力を発揮するギターです。アメリカのナッシュビルで活躍するスタジオミュージシャンの間では昔から評価が高かったということです。個人のビルダーが製作している数としてはかなり多作の方だと思いますが、アメリカの市場にもユーズドはほとんど出てこないようです。
Grevenは現在も進化し続けていますし、そのサウンドからは本当に木の持つ温もりやさしさを感じることができると思います。個人的にはフラットピックをメインで使っていますので、フィンガーピッキングに特化される前のほうのサウンドが好きなのですが・・・。
Grevenというギターを語るとき必ず出てくる話題に「作りが粗い!」ということが挙げられます。これは否定しようがない事実であると言えます。今までかなりの数のGrevenを見てきましたが、おそらく何もせずにそのまま使えるようなものはなかったと思います。ネックのリセットは当たり前、フレットの打ち直しや指板のレベル調整、指板そのものの交換(当然ナット、サドルは交換)、ブリッジの交換、塗装のやり直し、Etc.といちいち挙げていけばきりがないほどです。
たまたま自分がいつも買っていたギターショップでは、そういった部分をすべて完全にやり直してセットアップしていました。信じられないぐらいのコストをかけていたのですが、それはGrevenがそれでもなおそれだけの値打ちがある(それだけのサウンドを持っている)と言えるギターだったからでしょう。こういうお店にめぐり合えたことも非常にラッキーだったと思っています。一般の人たちにはほとんどわからないと思いますが、他のギターショップで扱っているGrevenとは明らかに別物のギターです。長年使っていると余計にそのことを感じます。
以前所有していたSJ Mapleのヘッドインレイ。初期のGREVENのインレイはどれもこんな感じでした。
ずっとメインで使っていた 1993年製GREVEN D-HBのヘッド。後に押尾コータローさんがメインで同じギターを使われるようになり、世間では“押尾コータローモデル”と言われています。新品で購入して、ずっと使っています。
拙い文章をお読みいただき、誠に有難うございます。皆様の感想、ご意見をお聞かせください。 またアコギに関する相談等がございましたら、どんなことでもOKです。遠慮なくお尋ねください。
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