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アコギ回顧録 番外編その⑪「アコギの材料(木材)、そのクオリティの話」

 ギターを道具(弾くもの、使うもの)として捉え、プレイヤーの視点から見た良いギターとはどのようなものか?その答えを追い求めて50年余り。所有したギター本数も3桁に届くぐらい?!
 その答えと言えるかどうかわかりませんが、過去~現在を振り返って自分なりの考え方をまとめてみようと思いました。アコギ好きの方、興味のある方にとって、少しでもお役に立つことができれば幸いです。

まずはハカランダ(Brazilian rosewood)から

 同じハカランダでも、グレードの差は相当あります。ハカランダに限らず、全ての材料に差は必ずありますが・・・。

 アコースティックギターでハカランダの話をするなら、まずはMartinからでしょう。はっきりと数値で証明できるものがありませんので、絶対に間違いないと断定はできませんが、年代によるクオリティの差は確実にあると思っています。この差はハカランダがローズウッドに代わった後も、同様にあると思っています。

 あまり表面には出てきませんが、過去〜現在ギター用材のクオリティは下がり続けていると思っています。(ギター業界がそのことを認めることは、まずないでしょうけど。)

 今から30年以上前に、現代ギターの記事で「枯渇してきたギター用材」というのがありました。まだ世の中にヴィンテージという概念が定着していなかった頃の話です。その後もギターは生産され続けていますし、それを補えるほど木材は育っていません。

 以前はほとんど見かけなかった材料が、最近では当たり前のように使われるようになってきています。自分の記憶では、ヴィンテージギターにハマり出した頃、マダガスカルやココボロなどはまったく知らない材料でした。かろうじてニューハカランダ(ホンジュラス産のローズウッド)、パリサンドルぐらいは知っていましたが。

 話をMartinに戻しましょう。数は多くありませんが、最近でもハカランダをサイド・バックにしたモデルが製作されています。1930年代〜1960年代のギターをたくさん見てきました。「大まかな年代による違い」のようなものが、あると思っています。1969年以前のものと、それ以降に製作に使われたハカランダは別物と言ってもよいでしょう。少なくとも、自分にはそう見えます。また、1969年以前のハカランダも同様に、年代によってかなり差があるのは間違いないと思います。もちろんアコースティックギターのサンウドはサイド・バックの材質だけでは決まらないので、個々のサウンドを構成するファクターの一つとして捉えていますが。

 材質のクオリティの差は、あまり話題になっていないようです。それを言い出すと、今のギターがダメ!ということになりかねないからでしょう。業界からそんな声は、まず出てこないですね。

柾目のハカランダ(Fields F-RC 1996)

 あと、ハカランダの話ですがどうしても気になることがあるので書かせていただきます。ワシントン条約が発効されて以降、その影響もあってハカランダの価格が無茶苦茶上がりました。そのことからハカランダ=最高の材、みたいなイメージが出来上がってしまっているようです。サイド・バックに使われる材としてはそうかもしれませんが、指板に使われていることやヘッドの突板に使われていることを必要以上に誇張されて宣伝に使われているのでは?と思っています。ヴィンテージマーチンの例でいえば、モデル18の指板が1946年ぐらいにエボニーからハカランダに変更されています。(同じ時期にトップ材もアディロンダックからシトカに変更)材の枯渇によるものなのかどうかはわかりませんが、グレードを落としたようなイメージを持っています。なので、指板の材としては「エボニーがベストでハカランダは特に最高というワケではない。」というのが自分の評価です。
 ヘッドの突板に関してはほとんどサウンドに影響はないと考えます。単純に木目の美しさで選ばれているのだと思いますので、特に問題ではありません。

続いてスプルース
 アディロンダック、ジャーマン、ヨーロピアン、スイス、ルーマニアン、エンゲルマン、シトカ、Etc.産地によってそれぞれ呼び名があるようです。日本ではヤマハを筆頭に、上級クラスのギターにはエゾ松がよく使われていました。

 ジャーマン、ヨーロピアン、スイス、ルーマニアン、エンゲルマンなどは、自分にはほとんど見分けがつきません。かろうじてシトカだけは他と比べて赤茶色いので、何とかわかるような気がします。ただシトカとジャーマンははっきりサウンドに違いがあるので、ある程度はわかります。ただ、問題はそれぞれの堅さであると思っていますので、ブラインドテストをしたら見分けがつかないこともかなりありそうです。と言うか、全く聴き分ける自信はありません。

 ここでもMartinの話になりますが、1946年以前のトップ材はアディロンダックでした。良質のアディロンダックの枯渇により、シトカに切り替わっていきます。シトカに切り替わった後にも、イレギュラーでアディロンダックを使ったモデルは少数ですが製作されています。Dー28を例に書かせていただきますが(実際に所有していたので)、シトカとアディロンでは高音域の響きがぜんぜん違います。アディロンの方がよりきらびやかに鳴ります。ジャーマン、ヨーロピアン、スイス、ルーマニアン、エンゲルマン等も押しなべていうと、同じような傾向にあると感じています。演奏する音楽ジャンルによっては、必ずしもこちらが良いとは言えないですが、一般的にはこちらの方が評価が高いようです。

シトカスプルース(GREVEN D-HBDX 1993 押尾コータローモデルと言われているギターです。)
メチャクチャ堅いシトカスプルースということを聞いていました。30年近く使っていますが、
トップの膨らみはまったくありません。ミディアムゲージしか張っていないのに!です。

 自分で測定した訳ではありませんのであくまで推定ですが、より硬い材料の方が高音域がきれいに(きらびやかに)響くようです。Dタイプのような容積のあるギターでは、どうしても低音域の方が強くなりがちです。その点トップがジャーマンやアディロンだと、低音域に負けずに高音域が鳴ってくれるというイメージです。こういう低音域も高音域もちゃんと鳴る(もちろんミドルレンジもですが)ギターが、自分の理想とするギターで、ずっとそんなギターを追い求めてきました。
 余談ですが、硬さの話になると忘れてはいけないのが「ベアクロウ」です。簡単に言うと“クマが爪でひっかいたような木目”という感じでしょうか。寒暖の差が大きいほど、こういった木目が生まれる確率は高いようです。そしてそれは材質的に堅いことの証明であると言われています。木目としてはきれいではないので、クラシックの世界ではあまり使われていないようです。逆にアコースティックギターの世界では、良い材料として認められています。木目に好き嫌いがあるので好まない方もおられるかもしれませんが、自分は好きです。(勝手に良い音の証明になると思い込んでいるだけですが)

ベアクロウのトップ

 話が少し逸れてしまいました。アディロンダックについてついてはこの動画が参考になると思います。
一度見ておいていただきたい動画です。https://www.youtube.com/watch?v=9TGwp46AO7Q&t=16s

 スプルースもハカランダと同様に差があります。それぞれが製作される時にどれだけシーズニングされていたか等は、買い手にはほとんどわかりません。まれに数十年シーズニングされたジャーマンで、新品でありながらかなり焼けた色合いのものがあります。それと、アコースティックギターのサウンドは一つの材料で決まるものではありません。様々な種類の木材の組み合わせによって決まります。最終的には、完成した時に出てきた音が全てです。

よく焼けたジャーマンスプルースです。(Fields D 1996)

 話の内容がうまくまとまりませんでしたが、スプルースもどんどん質が落ちているということをお伝えしたかったんです。中途半端な文章で申し訳ありません。
 あくまでの個人の意見ですので、絶対にこれが正しいという訳ではありません。こんな考え方もあるんだな、という感覚で読んでいただき、少しでも参考にしていただければと思います。

 拙い文章をお読みいただき、誠に有難うございます。皆様の感想、ご意見をお聞かせください。 またアコギに関する相談等がございましたら、どんなことでもOKです。遠慮なくお尋ねください。
宛先 e-mail:mail@acogian.com または twitter(@acogibucho)にお願いします。

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