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アコギ回顧録NEW ①「アメリカの価格を参考に考えてみる」「Santa Cruzと1970年代のD-28を例に」

 ギターを道具(弾くもの、使うもの)として捉え、プレイヤーの視点から見た良いギターとはどのようなものか?その答えを追い求めて50年余り。所有したギター本数も3桁に届くぐらい?!
 その答えと言えるかどうかわかりませんが、過去~現在を振り返って自分なりの考え方をまとめてみようと思いました。アコギ好きの方、興味のある方にとって、少しでもお役に立つことができれば幸いです。

「アメリカの価格を参考に考えてみる」
 インターネットが普及したおかげで、世界中の情報がほとんどリアルタイムで入ってくるようになりました。情報を集める上では、本当に便利になりました。自分がアメリカからギターやパーツ(ついでに服とか靴とかもよく買っていました。)を買っていた頃、日本とアメリカではかなりの価格差がありました。(1990年代の前半ぐらい)まだインターネットがない頃で、買い物も郵便でカタログを請求してファックスで注文するというパターンでした。
 ギターやそのほかのものも、日本と比べるとかなり価格差がありました。服などはブランド品でもセール品をうまく見つけて、日本の半分から3分の1ぐらいの価格で買えたことがありました。ギターもたくさん買いましたが、リペアしてから楽器屋さんに委託に出しても損はしませんでした。カードで買うことにも不安があり、主に国際郵便為替というのを使っていました。銀行から送金したこともありますが、どうしても先方がそうして欲しいと言ってきたときだけでした。

1994年にMARTIN D-35 1971年製を買ったときの国際郵便為替です。1ドル=106.95円。手数料込みで133,618円!(当時日本では、概ねこの2倍ぐらいの価格だったと思います。)今から思えば、ホンマにええ時代でしたね。下はその時のEMSです。

 ここ最近はインターネットのおかげで、良くも悪くも日本とアメリカの価格差は無くなってきたように感じます。ただ急激な円安が続いていて、この先もっと円安になるようだと少し差ができるかもしれません。
 わかりやすい例を挙げてみますと
MARTIN D-28 AUTHENTIC 1937 7,499ドル(マーチン社のHPから)
1ドル=145円で換算して1,087,355円

日本では1,040,000万円(クロサワ楽器のHPより)

 概ね同じぐらいの価格になっています。こんな感じでいろいろなギター価格を日本とアメリカで比較してみたら、「意外と日本では安い!」と思えるものを見つけることが出来るかもれません。
 

「Santa Cruzと1970年代のD-28を例に」
 すでに過去の話になりつつありますが、Santa Cruzが良い例です。Santa Cruzのことは以前にも書いたことがありましたが、ここで少し復習しておこうと思います。
 1976年にリチャード・フーバー、ブルース・ロス、ウイル・デイヴィスの3人が設立。79年にウイル・デイビスが退社。その後は1990年に日本のヤマハと代理店契約を結ぶまではリチャード・フーバー、ブルース・ロスの二人で、製作から販売まですべての業務をこなしていました。1970年代の終わりごろにはすでに高い評価を得ていたようで、当時の日本のギター雑誌に紹介されていたのを見たことがあります。自分が初めてアメリカで買ったギターもSanta Cruzのトニー・ライスモデルでした。
 Santa Cruzは設立当初から月産2~3本の製作数で、それは1990年にヤマハと代理店契約を結ぶまで変わりませんでした。(年間で30本程度)すべてを二人でこなしていたのだから、妥当な数字であると思います。それが1990年以降、生産数の桁が変わります。1992~1993年頃には10倍以上(年間数百本)の生産数になっていました。日本ではほとんど知られていませんがアメリカの個人や少人数の工房(ガレージビルダーという呼び方もあるようです。)では、それほど多くの材料を持っているようなことはありません。ですので、急に今までの何倍ものギターを製作するのは不可能です。この時点でSanta Cruzの材の質が落ちたのは間違いないと思っています。また、製作する職人も急に育つはずがありません。工作精度も以前と同じレベルを維持することができなくなったのではないでしょうか?その頃に聞いた話ですが(本当かどうかのウラは取れていませんが。)、Santa Cruzの工場に見学に行ったら「アルバイトのおばちゃんがフレットを打っていた。」という話がありました。

1980年代のH-KOA ラベルの上部に二人の名前が印字されています。今は現社長であるリチャード。フーバー氏一人の名前しか入っていません。

 ヤマハの販売の仕方が悪かったのかどうかはわかりませんが、日本ではかなり売れ行きが悪かったようです。短い期間で代理店契約を止め、大量の在庫を安い価格で叩き売ったという噂がありました。たぶん本当ではないかなと、個人的には思っています。結果的に非常に安い価格で中古が出回るようになりました。アメリカでの価格を知っていた自分には考えられないような価格です。自分はもともとSanta Cruzのギター(鳴り)が好きだったので、経済的に余裕のある時には買っていました。そんなこんなで延べ20本ほど所有することになりました。(入れ替わりがあります。20本同時に所有していた訳ではありません。)今現在残っているのは5本です。

 この原稿を書き始めてから、あらためてアメリカのギターショップのサイトを除いてみました。急激な円安もあって、円に換算するとメッチャ高くなっていてビックリです。特にヴィンテージは、日本に比べると高いと感じるものが多いです。写真で見るだけなので(たまに動画もありますが)リアルな状態と音はわかりませんが、ほんとうにその価格なのかな?と思ってしまう個体もあります。押しなべて見て、日本の方が割安な価格になっているように感じました。アメリカがインフレになって来ていることと、日本が長い間デフレであったことが影響しているのかもしれません。今、日本は世界的に見てもかなり物価が安いみたいです。
 
 1970年代のD-28でも4,000ドル越えがザラですし、中には5,000ドルを超えるものもいくつかありました。最近は日本でも1970年代のD-28やOOO-28が50万円越えのものを見かけるようになりましたが、比べ物になりません。前述の1994年に買ったD-28、1,240ドルでした。当時の日本での価格は20~25万円ぐらいだったと思います。アメリカでの値上がりを考えると、今は単純に3倍ぐらいでしょうか。それなら日本で60~75万円ぐらいするということになります。そう思うと、日本の1070年代のD-28は安いと言わざるを得ません。自分にはとても信じられない価格ですが・・・。

1ドル=148円換算で814,000円
1ドル=148円換算で806,600円
1ドル=148円換算で887,260円

 上記のD-28の情報は本日(2022年10月15日)現在のものです。
 かなり日本の価格の方が安いなと感じると思います。が、単純にお金の観点から高い安いの話をしただけですので、だから買おうというのは本末転倒です。あくまでも一つの参考としてとらえていただいた方がよろしいかと。

 楽器としての価値はともかく、価格は需要と供給の関係で決まってしまいます。コンディションも千差万別ですので、様々な情を集めて自分で納得できる買い方をするようにしましょう。
 
 久々にアメリカのサイトをあちこち見て、驚きもありましたが楽しめました。ギターを購入するときの一つの情報源として持っておくのも悪くないと思います。

最期におまけの画像です。

1ドル=148円換算で19,980,000円!
初めてニューヨークのマンドリンブラザースへ行ったとき。同じ1941年製のD-28が
10,000ドルちょいでした。30数年経っていますが13倍以上!ビックリです。

 拙い文章をお読みいただき、誠に有難うございます。皆様の感想、ご意見をお聞かせください。 またアコギに関する相談等がございましたら、どんなことでもOKです。遠慮なくお尋ねください。
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