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ヴィンテージギターの価値(アコギ回顧録 番外編その④)

 ギターを道具(弾くもの、使うもの)として捉え、プレイヤーの視点から見た良いギターとはどのようなものか?その答えを追い求めて50年余り。所有したギター本数も3桁に届くぐらい?!
 その答えと言えるかどうかわかりませんが、過去~現在を振り返って自分なりの考え方をまとめてみようと思いました。アコギ好きの方、興味のある方にとって、少しでもお役に立つことができれば幸いです。

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今回はマホガニーの写真を集めてみました。
Santa Cruz D-Custom Mahogany(1999)

 ギターの世界にヴィンテージという言葉が使われ出してから、それほど時間が経っていません。私が若いころは“オールド”と呼んでいました。
「VINTAGE」・・・元々はワインの意味の[VIN]と、年代を意味する「AGE]が合わさった言葉です。ワインに限っては、収穫年代だけを意味しますが、他の商品に使用する時は、年代物と言う意味の形容詞として使われ、最高の出来であるとか、古く価値があるという意味で使用されています。

参考
 ヴィンテージとは、前述のように元来はぶどうの収穫を指し、ぶどうを醸造してワインにする年号、そして車両やジーンズ、ギターなどに対してある特定の年代の事を指す言葉である[1]。
 「ヴィンテージ」の語源の一つとして "vine" がある。これは、つる植物を意味し、その多くはぶどうを指す。例えば "grapevine" はぶどうの木を指すが、ぶどう園の事を "vinery" あるいは "vineyard" と呼ぶ。又、ワインと関連する酢も英語で "vinegar" と書きフランス語で酢を意味する "vinaigre" も単に語源は "vin aigre" (酸っぱいワイン)という意味から分かるように "vine" はぶどうに大きく関係している言葉である。(※:ちなみにワインも "wine" である。)これらの事からぶどうの収穫が質・量共に良かった時代の年を "vintage" として「特定の年に作られた良いもの」という意味で使用された。さらに意味が派生してワインを含め、車やジーンズ、ギターなどある特定の年の「よき時代」に生産された物が長い年月を掛けて現在にも残る「年代物」といった意味で使用される言葉である。例えば、乗用車における "vintage car" は、1910年代後半(1916年から、又は1919年から。文献によって違いあり)より1930年までに生産された自動車を指し、自動車愛好家にとって「特定の年に作られた良いもの = ヴィンテージカー」という認識が存在しているからだと考えられる[2]。
 「年代物の逸品」という解釈は間違っていないが「特定の年に作られた良いもの」という非常に限られた範囲の指標を持つ意味である事が、ヴィンテージという言葉の意味で特筆とされる部分であろう。

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Gallagher GC-CUSTOM(2002)

 皆さんは、ヴィンテージギターのどこにその価値を見出すのでしょうか?
大まかに分けて、2つの見方ができると思います。楽器として見るか?それとも骨董品として見るか?もしくは、使う道具として見るか?鑑賞する美術品・工芸品として見るか?サウンドを楽しむのか?ノスタルジーに浸るのか?
 だいたいこんなところではないかなと思いますが、どうでしょうか?その価値観は人それぞれですので、良いとか悪いとかを決めたいわけではありません。ただそれぞれの線引きがあまりにもあいまいで、基準というものが全くと言ってよいほど見えてきません。

 皆さんは何を基準にヴィンテージギターを選んでいますか?

 アコースティックギターの価値をどこに見出すのか?それは人それぞれなので、正しいとか間違っているとかの観点で見るべきものではないと思っています。その中で自分がたどり着いたアコギ観は、楽器としてのギターでした。ギターは弾くものであり、使うものであるという考え方です。道具として使うということに言い換えることができるかもしれません。

 アコースティックギターの魅力は、何といってもそのサウンドでしょう。このことに異論を唱える人は少ないと思います。ギターを楽器として(道具として)見た場合、本当のサウンドを知るためにはベストなコンディションにしなくてはいけません。きちんとリペア、セットアップがされている状態で弾かないと、そのギターの本当のサウンドはわかりません。道具としてみた場合、板前さんやコックさんの包丁、大工さんののこぎりやカンナと同じです。きちんと研いだり手入れをしてやらないと良い仕事はできません。

 そういう観点で見て行くと、一般的なヴィンテージギターの価値観はまったく逆の位置にあることがわかります。「オリジナルが最高!オリジナルであることが最も価値が高い」ということです。自分はヴィンテージギターの世界に入ってからずっと、このことを疑問に思っていました。「オリジナルであることが最も価値が高い」ということは、パーツを交換してはいけない(価値が下がる)ということになります。弦は劣化してきたら交換します。ナット・サドルも交換します。(弦が当たる部分はすり減って行くし、その他の部分も劣化していきます。)フレットも研磨したり打ち換えたりします。フレットを打ち換える時には、当然指板のレベルも修正してもらうことになります。良い状態で使うためには、消耗品の交換は必要不可欠です。

 またたとえ話になりますが、自動車で考えてみましょう。タイヤがすり減ってまったら交換します。ある程度の山がないと車検すら通りません。エンジンオイルやオイルエレメント、ブレーキパッドなども劣化すれば交換が必要になります。そうしないと安全に走ることができません。きちんとパーツを好感し、メンテナンスすることが命を守ることにつながります。ギターの消耗品は交換しなくても命の危険はありませんし、誰かに迷惑をかけたりすることもありません。安物のギターならば、それでも構わないと思います。リペアやメンテの費用の方が本体より高くなることも考えられますので・・・。しかしヴィンテージのような高価で音の良いギターは、リペアやメンテナンスをする十分な価値があるのではないでしょうか?そうすることで、そのギターの持つ本来のサウンドが生きてきます。
キツイ言い方かもしれませんがヴィンテージに限らず、弾きにくいギター、ピッチの合わないギター、鳴らない(鳴っていない)ギターには何の魅力も感じません。たとえそれがどんなに高価なギターであっても!です。
 「クラシックの世界ではそのようなことはあり得ない!」らしいです。常に楽器として最良の状態で使うということが常識になっているようで、かのストラディバリウスでさえメッチャ修理してあるものがあるとのことです。

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Epiphone FT-79 Texan(1959)

何故
 ヴィンテージのアコースティックギターとエレキギターだけが、“オリジナルこそベスト”という価値観に支配されてしまったのでしょうか?私自身使えない(弾きにくい、ピッチが合わない、音が良くない)ヴィンテージギターを数えきれないぐらい見てきました。そして、ショップの方から何度も聞かされてきたセリフがあります。「ヴィンテージって、どれもこんなもんですよ。」「下手に触ると(リペアしたり、パーツを変えると)価値が下がります。」
 それって、おかしくないですか?
弾きやすくして、ピッチが合うようにして、音が良くなるようにする。そのことがギターの価値を下げることになる?
楽器としての価値は上がりますよね?

ずっと疑問でした。
ずっと「何で?」と思い考えていました。そしてたどり着いた結論は、

楽器屋さんが、
最も経費をかけずにヴィンテージギターを最も高く売る方法だ!
ということです。

 逆に言うと(プレーヤーサイドから見ると)、楽器として良いものの方が安く買える可能性があるということにもなります。私自身もこの見方で“楽器として価値のあるヴィンテージギター”を何本もゲットしてきました。
 残念ながら今の業界ではマイナーな考え方になってしまいますが、楽器としての価値でギターを見る。そういう仲間が増えることを祈りつつ、今回のお話はこれぐらいにさせていただきます。

 少し極端な(ある意味偏った)考え方に捉えられてしまう方もおられるかもしれません。価値観は人それぞれですので、必ずしも自分の意見が絶対に正しいとは言い切れませんし、思ってもいません。一人のアコギ好きの考え方(意見)だと思って受け止めていただければ幸いです。

 アコースティックギターとかかわって52年が過ぎました。他にこれと言って趣味はなく、10代の頃から小遣いのほとんどをアコースティックギターにつぎ込んできました。先日頑張って記憶を手繰り寄せて数えてみたら、今まで購入したギターは120本を超えていました。(全部を記録していなかったので、正確な数字はわかりません。忘れているのが何本かはあると思います。なので、もう少し多くなりそうですが、今となっては調べる術はありません。)またいずれかの機会に、過去に所有したギターを思い出した分全部を書いてみたいと思っています。

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Somogyi OO Cutaway(2001)とM.D. Cutaway(2004)

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 拙い文章をお読みいただき、誠に有難うございます。皆様の感想、ご意見をお聞かせください。
 またアコギに関する相談等がございましたら、どんなことでもOKです。遠慮なくお尋ねください。
宛先 e-mail:mail@acogian.com または twitter(@acogibucho)にお願いします。

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