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アコギ回顧録 Vol.29 「“新しい世界”のギターと、ヴィンテージギターに対する評価の変化」「Somogyi」

 ギターを道具(弾くもの、使うもの)として捉え、プレイヤーの視点から見た良いギターとはどのようなものか?その答えを追い求めて50年余り。所有したギター本数も3桁に届くぐらい?!
 その答えと言えるかどうかわかりませんが、過去~現在を振り返って自分なりの考え方をまとめてみようと思いました。アコギ好きの方、興味のある方にとって、少しでもお役に立つことができれば幸いです。

「新しい世界のギターとヴィンテージギターに対する評価の変化」
 幸運にもオーナーと仲良くなれた神戸のギターショップには、マーチン・ギブソン以外の新しい世界のギターがたくさんありました。(Santa CruzやGreven,Somogyi )それらのギターも片っぱしから弾かせてもらうことができ,今までと違うギターサウンドに触れて少しずつヴィンテージに対する評価も変わっていきました。

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Santa Cruz H-KOA 1987年製(以前所有していたギターです。)

 一時マーチンやギブソンのヴィンテージギターはそれほど鳴っていないと感じた時期がありました。今思えば、(すべてがそうではありませんが)鳴っている状態ではないタイミングで弾いていたからそう思えたのではないかと思っています。というのは、日常的に使われている状態で弾いたわけではないからです。日常的に使われているギターとそうでないギターには、相当な差があります。ここ最近、特にそのことを強く感じるようになってきました。自分たちの仲間内では「寝ている」という表現をするのですが、これを弾き込んで「起こしてやる」(あるいは「叩いてやる」という言い方をします。)ことでギターの反応や音量がどんどん変化していきます。
 ヴィンテージギターの中でも高価なものほど大事にされすぎて日常的に弾かれていないものが多く、必然的に鳴っていない状態になっていると言えます。ヴィンテージではないギターでもこれは同じで、楽器というものすべてに通ずることだと思います。常に鳴らしておいて、良い状態で使うことが大切です。ギターは楽器、弾いてナンボの世界です。

 それともう一つ“どういう使い方をするか?”という観点です。100パーセントそうだとは言い切れませんが、フラットピッキングとフィンガーピッキングではアタックの強さがかなり違います。なので、よほどのことがない限りマーチンやギブソンのヴィンテージはオープンチューニングを多用するようなフィンガー系のギタリストには使われていません。ブルースやギャロッピング、ラグタイムのような楽曲では使われています。その時代の音楽に合っていたサウンドだったのでしょう。逆に言うと、そのようなサウンドも持ったギターがあったから、その時代に合った音楽が生まれてきたのかもしれません。音楽に合わせて、どのようなギターを使うのか?(どのような特性を持ったギターが、やろうとしている音楽に適しているのか?)が決まってくるのだと思います。

 そんなこんなで、ヴィンテージギターに対する評価が少しずつ変化して行きました。アコス―ティックギターサウンドに対する見方(考え方)が変わって行ったと言った方が正しいかもしれません。

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Greven D- Herringbone Deluxe 1993年製、世間では押尾コータローモデルと言われているものです。押尾君のより、こちらの方が少し古いです。

「Somogyi」
 今でこそフィンガーピッキングを志すプレイヤーで知らない人はいないだろうと思えるほど有名になってしまった Ervin Somogyi。(日本ではソモギと呼ばれていることが多いですが、本当の読みはソモジーの方が近いらしいです。)このギターを初めて見たのは30年以上も前のことでした。当時はまだフィンガーピッキングという言葉すら聞いたことがない頃で、自分もフラットピックでしかギターを弾いたことがありませんでした。(スリーフィンガーや伴奏でアルペジオは弾いていましたが・・・)
 後で知ったことですが、Somogyiは1970年代から製作されていましたが評価され始めたのは1980年代の前半ぐらいからです。アコースティックギター個人製作家のコンテストで1位となり、マーク・オコーナーがそのギターを使用するようになってから一気にその評価が上がったと聞いています。

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Somogyi DーSC 1987年製(以前所有していました。今は友人の所有です。)フラットピックで使えるギターでした。バケモノでしたね。

 初めて見たSomogyi、当然見せてもらってもまったく興味が沸かず「あっ、そう」という感じで終わってしまいました。もちろん試奏もしていません。ちなみに値段はハカランダもので「65万円」でした。近年価格が高騰し、ホームページを見たら40,000ドルというプライス表示でした。(今の円レートで450万円ぐらい。)「このとき買っておけば・・・。もったいないことをしたなぁー」と思ってしまうのは貧乏人の浅はかさでしょうか?それでも当時の65万は50年代のD-28が十分買える価格でしたが・・・。

 それから時を経ずして東京の有名楽器店で、再度Somogyiを見せてもらう機会がありました。今度はしっかりと弾かせてもらったのですが、当時の自分にはその良さ、すごさがどうしてもわかりませんでした。(まだフィンガーピッキングの世界も知らず、試奏もフラットピックのみでした。)ちなみにこの時の価格は100万円でした。この後、初めてSomogyiを購入するまで4~5年の時間を要することになります。

 余談ですが、はじめてSomogyiさんのホームページを見たときの価格は6,000ドルでした。それでもSomogyiというギターを知ってから数年経っていたと思うので、もっと低価格の時期もあったのだと思います。Somogyiさんのギターについては、いずれ別の機会に書いてみようと思っています。(1970年代後半から2008年ぐらいまで、数十本弾いてきました。)数十年の間にメチャメチャサウンドが変化しています。

 拙い文章をお読みいただき、誠に有難うございます。皆様の感想、ご意見をお聞かせください。
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