石の記憶と子どもの心
道端のひとつの石が、
何億年も昔のことを教えてくれる。
昨日6月5日、日本を代表する洞窟博士、浦田健作先生と一緒に歩く「地質学ハイキング〜3億4000万年の地球の記憶〜」を開催しました。
浦田先生は30年以上にわたり、平尾台やカルスト地系を研究されているスペシャリスト。NHKをはじめとするテレビ番組でも監修・出演をされている、日本で唯一の洞窟博士でもいらっしゃいます。
そんな浦田先生と実際に平尾台を歩きながら、目の前の地形や岩石について解説をしていただくという贅沢すぎるハイキングを企画しました。
歩き出してすぐに民家の石垣に注目する先生。平尾台ならでは、石垣も石灰岩でした。
平尾台の石灰岩は特殊で、大昔(約一億年前)にマグマの熱によって一度溶かされ結晶化しており、よく見ると岩の表面がつぶつぶしています。そのひとつひとつが小さな結晶なんです。
見晴らしの良いところでは、平尾台全体を見渡しながら地形の説明。なぜ平尾台がデコボコしているのか、石灰岩とそうでないところの違いなど、目から鱗の情報が先生の口から泉のように溢れてきます。
たった一つの石、なにげない山や谷の風景から、何万年、何億年も前に起こったであろうことを推測することができる。それはまさに、彼らが語る言葉でないメッセージなんですね。
地質学は実験ができません。
実証しようにも、何億年も前に起こった地下数十キロのマグマの活動や、台地の隆起などを再現することはできないからです。
「地質学は、知識×イマジネーションが大切なんです。現代に残されたものから想像することが重要です。」
浦田先生がおっしゃったことで一番印象に残った言葉です。
分野に関わらず、何かを知ろうとするとき、とにかく情報や知識を集めて覚えようとしてしまいがち。だけど一つの情報から、いったん立ち止まって「もしかして…」と自分なりの想像を膨らませること。
それは誰もが子供の頃、あたりまえに持っていた果てしなく広がる想像力なのかもしれません。
青草ゆれる美しい平尾台がその内に何億年もの記憶をもっていること、地質学を少し学べば、そして果てしない想像力があれば、誰もがその記憶を辿ることができること。
浦田先生が教えてくださったことは、地質学という学問を超えた「ものごとを見る時の姿勢」そのものだったのではないでしょうか。
昨日の先生と参加者の方々の姿を思い起こしながら、そして平尾台が歩んできた果てしない時間に思いを馳せながら、今日もまた草原を歩いています。
2021年6月6日
西中 あかね
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