乳幼児健診④

乳幼児健診 -9・10か月健診-

9・10か月健診で注目すべきポイントについてお話していきます。
9~10か月には運動発達では、姿勢の変化による重心移動に対して姿勢を保つ平衡反応が出現してきます。パラシュート反射が確立し、安定した座位、四つ這い、つかまり立ちができるようになり、多様でなめらかな運動がみられるようになります。精神発達では喃語でさかんに話したり、親のマネをしたりと、かわいさが倍増してくる時期でもあります。


1. 1か月健診  2. 3・4か月健診
先日の記事でお話しました。

3・ 9・10か月健診

基本的な身体発育状況の確認を行うのは、1か月健診、3・4か月健診の時と変わりはありません。また急ぎの治療を要する生まれつきの病気が見つかる頻度は少なくなります。一方で、精神発達や運動発達に遅れがある場合はこのころに目立ってくる時期でもあり注意をする必要があります。

① 運動発達について
パラシュート反射が出現します。こけそうになった時、パッと手がでますよね。この反射のことです。このころのこどもは、座位や四つ這い、つかまり立ちなどができます。さらにパラシュート反射を獲得することで今後のひとり立ちや歩行の準備(こけても手をついてケガをしないように!)をしているわけです。また親指と人差し指でものをつかむなど細かい動きもできるようになってきます。9・10か月健診ではこういった反射の出現や姿勢の保持、筋力、協調運動などをみていきます。
時に四つ這いやうつぶせを嫌がり、座位のままズリズリと移動し、はいはいをしないお子さんを経験します。中には、はいはいをすっ飛ばしてつかまり立ちをする子もいます。シャッフリング ベビー(shuffling baby)といいます。移動運動に多少の遅れが生じ、歩くのが1歳半~2歳くらいになることがありますが、歩行開始後に運動発達が追いついてくることがほとんどなので心配はいりません。ただし、少ない頻度で自閉症スペクトラムや筋緊張低下を来す疾患が隠れている場合もあり、その他所見と総合して考える必要があります。
非常に頻度はまれですが、West症候群という病気(生まれつきのてんかん)では、このころに発達の退行といって、今まで「できていたこと」が「できなくなってくる」ことが目立ち始める時期でもあり注意を要します。

② 精神発達について
呼びかけると視線があう、近くにあるおもちゃをつかんでとる、なめたり、振り回したりして一人で遊ぶようになります。二つの積み木を持たせるとカンカンと打ち合わせることができ、拍手などのまねもできるようになります。知らない人をじーっとみたり、見て泣いたりするなどの人見知りもします。このようなことができない場合、精神発達の遅れだけに注目するのではなく、視覚や聴覚などの感覚器に問題がないかも評価が必要になります。がしかし、親子遊びやおもちゃでの遊ばせ方など、親子関係や愛着形成に起因することも少なくなく、そういった場合は育児カウンセリングや指導なども併せて行っていきます。


以上、9・10か月健診では精神運動発達の評価がメインになってきます。クリニックで担当する乳幼児健診について今まで4回にわたり記事にしてきました。健診って何をみるの?行く意味は?などの疑問に少しでもお答えできる内容になっていれば嬉しいです。

次回からは、予防接種の記事を書いていこうと思います。
今後ともよろしくお願いします!

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