乳幼児健診③

乳幼児健診 - 3・4か月健診 -

今回は3・4か月健診で注目すべきポイントについてお話していきます。
赤ちゃんはこのころになると、Moro反射や把握反射などの原始反射が消失し、頚定(首がすわる)、手の協調運動、追視(ものを目でおう)などの機能を獲得します。これから獲得していく、寝返りやお座り、はいはいなどの準備をし始める時期になります。

1. 1か月健診
先日の記事でお話しました。


2. 3・4か月健診
基本的な身体診察は1か月健診の時と同様で月齢レベルの発育をしているか?先天性の疾患が隠れていないか?をチェックしていきます。ただ、このころは視覚・聴覚の発達が特徴的な時期でもあり、以下のようなことに注目しながら診察を行っていきます。

① 視覚について
赤ちゃんは生後2~3か月頃から、両目で物を立体的にとらえる機能(立体視)が急速に発達します。この時期に症状としてはっきりしてくるのが乳児内斜視になります。正常な赤ちゃんでは生後4か月で約85%、生後6か月になると95%以上が眼球の位置は正位となります。生後2か月以降に重度の内斜視がある場合、自然に軽快する可能性は低く、適切な治療をうけないまま3か月以上経過してしまうと、弱視となってしまい立体視の獲得が難しくなります。健診の際に内斜視が疑われた場合、眼科専門機関でフォローをお願いすることになります。


ご家庭で赤ちゃんの視機能をみるポイントを以下に示します。このような症状があり、ご心配な場合は健診以外でも受診していただければと思います。

<家庭でのチェックポイント>
☑ 瞳が白くみえたり、光ってみえる
☑ 眼の大きさや形がおかしい
☑ 視線があわない
☑ 動くものを目でおわない(追試の有無)
☑ 目がゆれることがある(眼振)
☑ 目つきや目の動きがおかしい
☑ 極端にまぶしがる(羞明)
☑ 片目を隠すと嫌がる

② 聴覚について
人の聴性行動には、・言語発達に関連した人としての聴性行動・反射的な聴性行動・周囲から見える聴性行動の3つの部分から成り立ちます。このうちの周囲からみえる聴性行動が、生後4か月ころに一時的に機能が低下します。聴覚発達が正常な赤ちゃんでも、周りからみると音が聞こえていないように感じ、「もしかしてうちの子は難聴では?」と心配になってしまうことも少なくありません。なので赤ちゃんの場合、一元的に評価するのは難しいので聴覚チェックリストを用いながらスクリーニングを行っていきます。新生児聴覚スクリーニングを受けていない、あるいは受けたが両側または片側でリファーがでた赤ちゃんで、難聴の疑いがある場合は精密な聴覚検査が必要になります。
先天性難聴は内耳性難聴であることが多く、前庭機能の異常が併発し、頚定(首がすわる)が遅れる場合があります。頚定がこの時期に獲得されていない場合、聴覚機能についても注意をする必要があります。

視覚のところでお話したことと同様、ご家庭で以下のチェックをしていただき、ご心配があれば受診していただければと思います。生後3か月以降の項目に注目していただき、健聴な赤ちゃんはいくつかの項目の〇がつきます。すべてに×がついた場合、高度難聴の可能性がありますのでより早期に医療機関の受診をしてもらうようよろしくお願いします。

<田中・進藤式 聴覚チェックリスト>
0か月ごろ
( ) 突然の音にビクッとする
( ) 突然の音にまぶたをぎゅっと閉じる
( ) 眠っているときに突然大きな音がするとまぶたが開く
1か月ごろ
( ) 突然の音にビクッとして手足を伸ばす
( ) 眠っていて突然の音に目を覚ますか、または泣き出す
( ) 目が開いているときに急に大きな音がするとまぶたを閉じる
( ) 泣いているとき、または動いているとき声をかけると泣きやむか動作を止める
( ) 近くで声をかける(またはガラガラを鳴らす)とゆっくり顔を向けることがある
2か月ごろ
( ) 眠っていて急に鋭い音がすると、ビクッと手足を動かしたり、まばたきをする
( ) 眠っていて子どもの騒ぐ声や、くしゃみ、掃除機などの音に目を覚ます
( ) 話しかけると、アーとかウーとか声を出して喜ぶ(またはニコニコする)
3か月ごろ
( ) ラジオの音、テレビの音、コマーシャルなどに顔(または眼) を向けることがある
( ) 怒った声や優しい声、歌や音楽に不安げな表情をしたり喜んだり嫌がったりする
4か月ごろ
( ) 日常のいろいろな音(玩具・テレビ・楽器・戸の開閉)に関心を示す(振り向く)
( ) 名を呼ぶとゆっくりではあるが顔を向ける
( ) 人の声(特に聞き慣れた母の声)に振り向く
( ) 不意の音や聞き慣れない音、珍しい音にははっきり顔を向ける
5か月ごろ
( ) 耳元に目覚まし時計を近づけると、コチコチという音に振り向く
( ) 父母や人の声などよく聞き分ける
( ) 突然の大きな音や声に、びっくりしてしがみついたり泣き出したりする
6か月ごろ
( ) 話しかけたり歌をうたってやるとじっと顔をみている
( ) 声をかけると意図的にさっと振り向く
( ) ラジオやテレビの音に敏感に振り向く
7か月ごろ
( ) 隣の部屋の物音や、外の動物の鳴き声などに振り向く
( ) 話しかけたり歌をうたってやると、じっと口元を見つめ、時に声を出して応える
( ) テレビのコマーシャルや番組のテーマ音楽の変わり目にパッと振り向く
( ) 叱った声(メッ、コラなど)や近くでなる突然の音に驚く(または泣き出す)
8か月ごろ
( ) 動物のなき声をまねるとキャッキャと言って喜ぶ
( ) きげんよく声を出しているとき、まねてやると、またそれをまねて声を出す
( ) ダメッ、コラッなどというと、手を引っ込めたり泣き出したりする
( ) 耳元に小さな声(時計のコチコチ音)などを近づけると振り向く
9か月ごろ
( ) 外のいろいろな音(車の音、雨の音、飛行機の音など)に関心を示す(音のほうにはってゆく、または見まわす)
( ) 「オイデ」「バイバイ」などの人のことば(身振りを入れずにことばだけで命じて) に応じて行動する
( ) となりの部屋で物音をたてたり、遠くから名を呼ぶとはってくる
( ) 音楽や、歌をうたってやると、手足を動かして喜ぶ
( ) ちょっとした物音や、ちょっとでも変わった音がするとハッと向く
10 か月ごろ
( ) 「ママ」、「マンマ」または「ネンネ」など、人のことばをまねていう
( ) 気づかれぬようにして、そっと近づいて、ささやき声で名前を呼ぶと振り向く
11 か月ごろ
( ) 音楽のリズムに合わせて身体を動かす
( ) 「・・・チョウダイ」というと、そのものを手渡す
( ) 「・・・ドコ?」と聞くと、そちらを見る
12〜15 か月ごろ
( ) となりの部屋で物音がすると、不思議がって、耳を傾けたり、あるいは合図して教える
( ) 簡単なことばによるいいつけや、要求に応じて行動する
( ) 目、耳、口、その他の身体部位をたずねると、指さす

以上、今回は3・4か月健診についてのお話をしました。視覚や聴覚の話ばかりになりましたが、もちろん身体発育やその他臓器疾患の有無も診察していきます。またこのころになると、乳児アトピーもちらほらでてくる月齢になり、皮膚ケアの心配や、それに付随した食物アレルギー、離乳食開始時期の心配も多々でてくるかと思います。今後アトピーや、食物アレルギーについても記事にしていきますのでよろしくお願いします。

3. 9・10か月健診
次回の記事でお話していきます。

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