即興なの?テキトーなの?
とても基本的な事なのですがダンスをソロで踊るというのはテキトーに考えなく踊り散らかすのではなく、練習に支えられた安定した技、流れのあるダンスをすることです
何が言いたいかと言うと、簡単にまとめると
「楽しむ事、参加する事に意義があるから下手でもバトルに出た方が良い」
という風潮へのアンチテーゼです。ダンスは言わば肉体芸術なので、目だけでしか判断しません。しかしこれが楽器ならどうでしょうか?ギターを始めて1ヶ月でコンクールに参加するでしょうか?ギター教室に行かず、先輩に教えてもらわず自然とFマイナーなんて絶対に押さえられないと思います。起承転結を学び、Aメロサビ間奏Bメロサビと流れていくはずです
やはりそこは確実に多少身に付けるために時間と労力は要するはずです。ギターを掻き鳴らすのは0歳児でも出来ます。弦に触れれば音は出ますから。ではギタリストとただ鳴らすだけの人との違いは何でしょうか?
それは安定感だと思います
何回弾いても同じ演奏が同じピッチで出来ること、メロディーが崩れない事。そして即興なら楽譜がなくてもその場のノリでメロディーを奏でてしかも聴ける美しさであること。反復に裏打ちされたコード進行、紡がれるメロディーとリズム。それが即興で演奏するということであり、テキトーではないということ。
ではダンスなら?
とりあえずバトルにエントリーし、サークルに並びDJのかける音楽で自由に踊る。これがダンスバトルでしょう。しかし誤解を恐れずに言うなら
ただテキトーに動き、制限時間の45秒を耐えて帰ってくるという人が多いのではないでしょうか?即興とはそういうものなのでしょうか?今日はこのポイントにフォーカスしていこうと思います
そもそも日本においてダンスを即興で踊る事の意味を考えた事があるでしょうか?まず皆さんはダンスをどこでどうやって始めましたか?ほとんどがダンススタジオかダンスサークル、ダンス部でしょう。そこでどういったレッスンを受けましたか?
おそらく
ストレッチ→アップ→基礎→振付
ではないですか?これでは自分の感覚で自由に曲をとらえてダンスすることは出来ません。まずは表現方法を学ばなければなりません。ここを教えるクラスがないのにバトルイベントが多いのではないかと思うのです。空手でも最低限の体作りや基本的な所作を学びます。様になるまでは師範が試合などさせないでしょう。ダンスはそもそも楽しむという前提があるとはいえ、音楽の表現という基本的な行為をしようとせずに(知らずに?)即興のダンス大会、いわゆるダンスバトルに参加しているのではないでしょうか
まずは音楽に対してアプローチする最低限の手法はジャンル関係なくセオリーを知るのが良さそうです。
⚫強い音で【ドンッ!】なら胸で大きく派手にヒット(ポッピングの技術の一つ)を打つ
⚫流れるような音【キュルキュル】ならウェーブ(ポッピングの技術の一つ)を流す
⚫【ボヨン】という跳ね返る音ならスクービードゥー(ロックの技術の一つ)
など。滑る音ならスライド、マシンガンの音なら高速ステップ、バイブレーションなど音楽を表現するのに大事なアプローチはたくさんあります。義務ではないですが、ダンスを踊るなら最低限これくらいはしましょうという技術はあります。そこをまず知ってほしいのです
日本はあまり考えないでとにかくレッスンをたくさん受ければダンスが上手くなれるという空気があり、とてもたくさんのダンススタジオがあります。しかしながら本当にダンスを教えている先生は一握りのように感じます。ギターならコードのおさえ方、ボクシングなら構え方、習字なら筆の持ち方。そこからしっかり教えてない印象があります
例えば私が自身のクラス、中級者向けに行っている強化レッスンではまずヒットの打ち方は必ず教えます。そしてダイムストップ(微動だにせず止まり続ける)とウェーブとスライドをまず徹底してやり、ピルエットもやります。これだけを練習すればなんとなく合うということがわかってきます。
そしてジャンルによって合わせ方もそれぞれちがいますので、その曲、あの曲をかけて「この曲ならどういう感じで踊る?」という会話をしています。例えば有名なT connectionのDo What You Gonna Doなら25秒くらいのところでたたみこむようにくる
ダダンダ.ダダンダ.ダダンダ.ダダンダ
ダカダカダカダカ.ダーダーダン
はLOCKERでもWAACKERでもシェイクやリストロールの連続、トゥエルをしまくると音にマッチすると思います。このように各ジャンル毎に音に対してのアプローチの仕方を練習します。最低限の部分だけです。お葬式に黄色のスーツでラジカセ抱えて行かない程度の知識だと教えています。
そして即興においてとても重要なのは
【空気を読む、察すること】
だと思います。まず曲調が明るく、メジャーコードを中心に出来ている曲で切なく踊ると違和感ありますし、逆にドナドナでアップロックしても荷馬車が揺れすぎて大盛り上がりです。大変です。
なんとなくで良いので曲調に合わせる努力をしましょう。歌詞まで分かろうとしなくてもいいのです。案外英語圏でもそこまで細かく気にはしていません。盛り上げたもん勝ちな面が大きいですね。
と、ここまで見ていただいてソロを踊るというのは、しっかり最低限の技術を覚えて、曲の雰囲気に合わせて踊っていくということがお分かりいただけたと思います。しかしそういう技術を知っていてもいきなり知らない曲で踊るのなら合うかどうかわからない。という人の意見もごもっともです。そのあたりも考えていきましょう
まずここで言っているのは日本でのバトルなどでの即興のソロダンスの話で、色んな曲がかかります。アメリカのビーチパーティーなどではとにかくハッピーな曲しかかかりませんので割愛させていただきます。
当然キッズたちは最新の曲からバトルでよく鳴る曲までいっぱい聴いて研究していますし、覚えておいた方がハメる時に、上記のような練習をしていればタイミングも完璧、質感も完璧な状態でハメきれるので曲は知っていれば知っているだけ得です。ですが逆に曲を知りすぎていてハメ待ちになってしまい、波に乗れずに作業的になることが多いです。これはいけません
ですがやはり準備を普段から欠かさずに勉強を続けている音ハメニストの努力は誉められるべきです。
では知らない音の場合はどうやって踊れば良いのでしょうか?答えは簡単です
テキトーに踊るのです
究極の矛盾でしょう?しかし事実なのです。どういうことかというと、上記をしっかり練習していれば音楽にマッチさせることに集中さえしていれば必ず1ラウンドで1度はハマります。だいたい私は生徒に
「4エイトでつかめ」
と言っています。
⚫曲調
⚫音の強弱
⚫繰り返している音
などを早くつかみ、後は自分を信じてテキトーに踊るのです。必ずハマります。逆になまじ知っている音だと答案用紙を持っているテストを受けているような感覚に陥り、白々しいダンスになることが往々にしてあります。わざとらしくなってしまうのです
まとめると簡単で
基本をしっかり
これだけなのです。ソロで曲をかけて上記の練習をせずに闇雲に踊る練習だけをしていても赤ちゃんがドラムを無理やりたたいて音を出しているのと同じ事です。何を持って即興なのか。よく考えないといけません
どうせソロをやるなら緊張に耐えるだけの時間にならないように自信をもって踊れるようになれれば良いですね?
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