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「夢と金/西野亮廣」を読み終えてみて、レビューというか読書感想文というか僕なりの本気の見解を書いてみます。

昨年の暮れ、ミュージカル『えんとつ町のプペル』大阪公演に明け暮れている時期にキングコング西野さんとお酒の席を何度か共にさせてもらいました。

とにもかくにもいろんなお話をさせてもらいました。

エンタメの世界の第一線で戦い続けながら結果を出し続けている西野さんから直で出てくる言葉ひとつひとつは全てがリアルで説得力が半端なく、その中には過去の著書で書かれていることやオンラインサロン等のメディアで日頃発信されているような事柄も含まれていたわけですが、多数に向けてメディアを介して発信しているものを受け取るのと本人の口からリアルに聞くのとでは刺さり方も全然違うわけで、たくさんの学び(インプット)を重ねたあの時間は全てが僕の財産になっています。

そんな中で特段印象に残っている話があって、これは忘れないでおこうと思ってスマホのメモ帳に走り書きメモを残した話があります。

今回、この西野さんの最新刊「夢と金」を読了して改めてその時にしてもらった話と通ずる部分があったので書いてみようと思います。

記憶の範疇ですので一字一句正確ではないと思いますが、あの時ハッキリと言い切られていたのは…

「エンタメとしてのポテンシャルみたいなものは世界に比べて日本人は全然負けてない、引けを取ってない」といった話。
(記憶の範疇ですので一字一句正しくはないかもですが)

実際に世界中を飛び回って世界戦レベルのエンタメ(ライブなりショーなり)をたくさん観たうえで、エンターテイナーとしての能力は日本人は全然負けてないと断言されてました。

じゃあなんでこんなにどんどん世界レベルから引き離されていってるのか?

それは「圧倒的な予算力の差」だと。

もちろん日本のエンタメプレイヤーの中でも質の優劣はありますから手放しでみんながみんなそうだって話ではなく、あくまで日本のトップレベルの人たちを基準にしている話ではあると思いますが、とにもかくにも「予算の差」という部分を強調されていたことをハッキリ覚えています。

すなわち「お金」の差。

「夢か?金か?」という議論をキミのまわりの連中は繰り返すだろう。
耳を傾ける必要はない。あんなのは全て寝言だ。
「夢」と「お金」は相反関係にない。僕らは「夢」だけを選ぶことはできない。
「お金」が尽きると「夢」は尽きる。これが真実だ。

西野亮廣著「夢と金」前書きより抜粋

この本はこんな前書きから始まります。
(前書きのさらに冒頭部分だけを抜粋しています)

この中の『夢とお金は相反関係にない』という一言は実に痛快です。

日本人の美徳というかなんというか「お金じゃないんだ!」みたいな風潮ってあるじゃないですか。

まあ時と場合によってはその姿勢が良い方向に働く現場や作品もあるとは思うんですが、僕が思うにそれは「お金(予算)をしっかり設計している人(現場)が言っていいことなんだろうと思います。

最初からその美徳を振りかざして予算作りをサボるのと、しっかりと予算設計がされてるうえで「お金じゃないんだ!」という熱量で頑張るのとはワケが違うかなと。

ただ、どうにもこうにも「少しでも良い作品・ステージを作りたい」とか「充実した活動を続けたい」という気持ちがあるからこそ、そのためにどうやったらお金を生めるかとあれこれ考えて発信した結果、「金稼ぎですか」とか「ファンからそうやって搾取するんですね」みたいな戯言(ハッキリ言わせてもらいます)が僕レベルの現場まわりでも大なり小なり聞こえてくるのは悲しいかな事実です。

自分が主催するイベントをより良くしようと思うからこそクラウドファンディングで予算を集めにいった結果、批判が起こって「もうクラファンやりたくない。クラファンやらなくてもなんでもできるくらい売れなきゃ」と精神ずたぼろになった…みたいなSNS上の発信を仲間内の子がされてたのを目にしたことが少し前にあって、さすがにそれを目にした時は愕然としました。

やはりお金(予算)を集めに行く=悪い(後ろめたい)事みたいな風潮はまだまだ根深そうです。

夢と金は相反関係にない。

自分の技術や作品内容そのもののクオリティの向上は自身の努力で賄うべきポイントですが、そのポテンシャルを最大限に発揮するためにはお金が相反関係にないことくらい当たり前じゃないですか。

同じ脚本、同じキャスト、同じ音楽で舞台を作るにあたって予算が100万円なのか、1000万円なのか、1億なのかでクオリティに差が出るか否かなんてのは猿でも分かる話でして。

もちろん闇雲にとりあえずお金を集めまくれ!っていう姿勢は全然違うと思います。その姿勢だけが前面に出ちゃうとさすがに銭ゲバと言われてもしょうがないかもしれない。

要はまず頭の中で「これくらいの規模でこれくらいショーアップされたものをやりたい」といった青写真を最初に描いて、じゃあそのためにいくらくらい予算が必要かを計算する。

この次の一手の考え方で明暗が分かれていると思います。

「さすがにそんなに予算はかけれないから思い描いている理想から、少しずつ妥協して予算を削れそうなところから削っていく」

という一手を指すのか…

「だいたいこれくらいの予算があれば実現できそう。じゃあその予算をどうやって作るかという導線設計を考える」

という一手を指すのか。

どうしても相対的に「さすがにそんなにお金はかけれないよ」というところから入りがちな気がします。

ただ、しっかりとしたお金の知識(リテラシー)があって、予算作りのノウハウ(ならびに行動力)を身につければそんな一手指さなくてもよかったのにって感じで立ち消えたり、思い描いていた理想より劣化したものを結果的に作ったって事例は本当にたくさんあるんだろうなぁ…と思う次第で。

もちろんこれは作り手側だけじゃなくて「金儲けか」とか「搾取」だとか思ってしまう受けて側のリテラシーの低さも大きな加担材料だと思います。

そんなことが続けば本当にいよいよこの国のエンタメは衰退の一途をたどり続けることになりますよって(むしろもう手遅れに近いレベルのギリギリですよと)。

だから今一度、作り手側も受け手側も改めてちゃんと考えませんか?学びませんか?

せっかくポテンシャルでは負けてないのに、そんなことが足かせになって世界からボコボコにされるのなんて悔しいじゃないですか。


……

みたいなことがとっても高い水準で、そして実際に十何年もそこに身を投じてデータを取りまくって一定の結果を出して、なお貪欲に挑戦し続けている人の言葉として綴られている一冊となっています。


以上、僕なりのレビュー(読書感想文)でした。

ではまた。



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