『塩むすび』で15分の番組をもたせた土井善晴先生からの教訓

土井善晴さんという料理研究家の方がいらっしゃいます。

ご存知の方も多いとは思いますが、名前を聞いてピンと来ない人でも顔を見たら「あ〜見たことある」ってなる方もいらっしゃるかと思います(よかったらググってみてください)。

※顔を見てもピンとこられない方とはかなり世代間ギャップがありそうです


僕は小学校の頃、この土井先生がやられていた『おかずのクッキング』という料理番組が好きで毎日熱心にテレビで見ていました。

それは別に料理を学ぶために見ていたというよりも、土井先生の軽妙なトークと、インテリ感と庶民感が絶妙なバランスで織り混ざったキャラクターに惹かれていたからだったりします。

そんな土井先生が15分尺の料理番組(おかずのクッキングとは別)で『塩むすび』を題材に扱ったことがあります。

料理番組っていうのはだいたい『肉じゃが』とか『ぶり大根』とか、もっと言うと『なんとかとなんとかの煮付け』だとか『なんとかとなんとかの和えもの』みたいに、それなりに材料があって工程がある料理を扱うのが相場で、その調理手順を実践を交えて説明していくことで時間が過ぎていくものです。

時にはまともにやってたら時間が足りないので「〜で、それを終えたものがこちらになります」と予め用意しておいた別素材でショートカットすら行うくらいです。

そんな中『塩むすび』です。

特段凝った具なんかもない本当にただの塩むすび。

材料は白米と塩のみ。
工程は塩をまぶして握るだけ。

これで15分いくわけですが、土井先生ときたらこの塩むすびできっちり15分をやりきられたわけです。

しかも特に工程も無駄に加えずひとつひとつの時間と言葉に意味をしっかり持たせて、何の間延びもせずにきっちりと。

思ってるより15分の一人しゃべりは長いです。
しかも全然脈絡のない雑談を一切挟まずに『塩むすびの作り方』の一点だけで15分。

これはもう料理というより立派なエンターテインメントの世界です。

例えばそこそこ技術や専門知識が必要だったり工程がかなり入り組んだものの場合は、そこの説明だったりそれらを具現化することにそもそも時間を費やすのでただその道を辿れば良いと思うんですが、塩むすびみたいに専門知識も必要なければ工程もまったく入り組んでないものの場合は『掘り下げ力』がとにかく必要になってきます。

ちょっと凝った料理ならただ敷かれたレール(レシピ)を進めば15分消費することが可能なわけですが、塩むすびで15分もたせようと思ったらいかに塩むすびという存在、ならびにそれに付随するあれやこれやを掘り下げることができるか。

そこでまったく退屈させず無理矢理繋いでるような間延び感もなく、きっちり15分かけて塩むすびを完成させた土井先生のエンターテイナーっぷりにとても感銘を受けた記憶があります(これはそこそこ大人になってからの話)。

そういう感情が根底にあるのかたまたまなのかは分かりませんが、実はこのnoteにもその要素は活きていたりします。

時と場合にもよりますが、毎日書いている中でテーマとして『塩むすび』程度のテーマの日もあったりします。

普通に書いたら5行で終わるようなことだったり、何だったら140文字以内でツイートしてもそれなりに伝わるようなこともあります。

それは前述の塩むすびで言うところの「炊いたご飯に塩をまぶして握れば良し」というひと言で片付けるという事と同じだと思うんですが、気付けばいつも2,000文字前後になります。

サクッとひと言で片付けちゃってもいいんだけども、いやいやそのひと事の中に掘り下げれる部分や分析する要素はたくさん眠っているはずで、それらをひとつひとつ見つけて紐解いてっていう時間がとても大切なんじゃないかと思っています(その考える時間がただ好きなだけっていうのもあります)。

で、自らそこに飛び込んでいくと稀に新たな気付きや発見に書きながら出くわすことがあります。

それは数行で済ませてたらきっと出会えなかった部分で、こんな感じで書いとけばいっかって部分で手を止めずに掘って掘って掘ってみると、思いがけず新しい鉱脈に出会ったりして新しい世界が広がったりすることがあります。

無論、それはクリエイティブの話もまったく一緒。

元々自分の中でこの性格的な癖みたいなものはずっとあることは自覚しているんですが、特にここを始めてからは加速している具合が半端なくて。

「今日のライブめちゃくちゃ楽しかった」で済ませばそれでいいんですが、楽しかったってことは何かしらの手応えがあったということで、じゃあその手応えの正体はどこにあるのかとか、前と何が違うんだとか、そういうことをどんどん掘り下げていったら「あ〜だからか!」みたいな感じで自分で認識できてなかった部分にたどり着けたりする(新しい鉱脈に出会う瞬間)。

で、ここはこれでもかというくらい掘り下げる。

そう思ったら、料理研究家の方も料理を掘り下げまくってるでしょうから、その道のプロの方が塩むすびで15分をもたせることは案外容易いことなのかもしれないですね。

ただ、それは脳内をしっかり体現化するという能力もセットで必要になるので、やはり土井先生の「トーク力」の比重も大きいように思います。
(掘り下げれたとしても口下手な方なら15分はもたないでしょう)


先日、セブンイレブンの塩むすびを手に取った時にふと土井先生の話を思い出して、そこから派生して今日はこんなことを書いてみました。

最初は土井先生の話だけで終わろうかと思ったんですが、もう少しそこの理屈を掘り下げてみたら「自分のnoteも似たような部分があるかもしれない」というところにたどり着いたわけで、それもまた掘り下げ癖のおもしろい部分です。

以上でございます。

ではまた。



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