当日精算(取り置き)による着券率との因果関係の根深い問題

昨日、Twitterのタイムラインに流れてきたこんなツイート。


予めお伝えしておきますが、僕はこのツイート主の方とお仕事をご一緒したこともなければ面識もまったくないので、基本的に今日の記事は僕自身の経験からの一般論として読んでもらえればと思います。

このツイートはどなたかがRTしてたので目にしたんですが、数字的にもそこそこ話題になっているようです。

ざっくり言うと、予約で満員だったのに蓋を開けて見たら30名ほどの空席があったというお話(キャパの半数だそうです)。

で、その全てが「当日精算」の方。

予約リストは心当たりのない名前が並んでいるということと、ほとんどの予約アドレスは捨てアドレスだったということなので、十中八九「嫌がらせ」だと思っていいと思います。

この件自体にスポットを当てたら当然あってはならん話ですし、どう考えてもその(おそらく)嫌がらせ犯の倫理観は非難されるべきだとは思うんですが、そもそもこういうことって起こるべくして起こってるよねっていうのが今回のお話。

コメント欄を軽く眺めてたりすると「最低だ」とか「ひどい」みたいな感じで皆さんでその嫌がらせ犯(おそらくね!)を集中非難しているわけですが、そこを言っててもあんまり意味が無くて、なんでそんなことが起こるかって部分に速やかにフォーカスを当て直したほうがよっぽど建設的な気がしています。

繰り返しますが捨てアドレスで予約だけしといて来ないっていう行為そのものは非難されて然るべき行為です。

ただ「やめてください」と何億回伝えたところでやる人はやるので、そこを言っててもしょうがない。

問題はこの「当日精算」というシステム。

僕みたいにライブハウスでずっとやってきた側としては「取り置き」っていう言葉が一番馴染みがありますね。

タイトルにも書いた「着券率」っていうのは、事前に算出されている来場予定人数に対して当日来場者数がその何割を占めるかという率のこと。

自分たちで企画しているワンマンやイベントで会場側と精算をするっていう機会を僕はたくさん重ねてきました。

その精算の時間でまず最初に話題に上がるのが「着券率は?」です。

ここの率が「当日精算(取り置き)」のシステムを用いているか否かでけっこう変わってくるんです(当然アーティスト差はあると思いますが)。

そこそこの規模のイベントになってくると話は別ですが、小・中規模のイベントの場合はこの「取り置き」っていうシステムはまだまだ当然のように大活躍しているわけですが、言ってしまえばこれってただの「口約束」なんですよね。

「○月○日にライブあります!よかったら来てください!」と言った側に対して「行きます!」と言っただけで、その時点で当日の席がひとつ埋まるわけです。

その時に金銭のやり取りがなくても。

これが例えば一緒に仕事をするくらいの中だったり、定期的にラインとかで普通に連絡を取り合ってる知り合いとかならまだ分かるんですが(連絡なしのドタキャン率は極めて低いと思うので)、例えばストリートで初めて見かけた人とか、SNS上で言ってくれた人みたいなめちゃくちゃ薄い薄い人(もしかしたら顔も知らない人)との間で「口約束」で集客1を勘定するというのは、よくよく考えたらけっこうな博打ですよねって、改めて思ったわけで。
(DMでも予約受け付けてます!とかちょこちょこ見かけるので)


じゃあ例えば…

キャパが100名の会場でワンマンをするとします。

手売り分のチケットが50枚売れている段階で、口約束の取り置き(当日精算)の人数が50人に達しました(手売りと取り置きの合わせ技もよくある話)。

キャパ的にはここで「ソールドアウトしました!」って言わないといけないわけです。

ただ、はっきり言って取り置きの人って簡単にドタキャンします。

もちろん来場できない事情はいろいろあるんだと思います。

体調面だったり仕事の都合だったりっていう本当にやむなくっていう理由もあるとは思うんですが、中には「なんかその日になって気乗りしなくなった」とか「めっちゃ雨が降ってるから」みたいな理由もあると思いますし「忘れてて別の予定入れてた」くらいの理由もあると思います。

なんとなくSNS上で気になったとかストリートでちょっと見かけて声かけた…くらいの距離感の方の「取り置き」の熱量の場合の話です。

で、そもそもチケット代も払っていない状態なので行かなくてもリスクはまったくなかったりする。

実際に過去参加させてもらった現場で「今日は満員になるよ」と聞いていたのに、蓋を開けてみたらなかなかに空席が目立ったっていうライブがあって、あとで聞いてみたら「取り置きがほとんど来てない」と言ったものでした。

その「取り置き」の危険性、信頼の無さを思い知っていくうちに、自分たちのバンドの時は例え100人規模の公演だとしてもチケット代の事前振り込みがマストのプレイガイド(チケットぴあとかイープラスとか)発売に切り替えて、取り置き・当日精算システムを完全に無しにして運営してきました。

だからって着券率が100%になるかっていうと残念ながらそうでもないんですが、打率がアップするのは明らかです。

※ちょっとダサい余談ですが4月に行った3年半ぶりのライブはメール予約での当日精算システムでやっちゃって、やっぱり1割くらいは未着券でした。
(3年半ぶりってことで完全にそのあたりのシビアさが錆びていたんだと思います。反省!)

冒頭で引用させてもらったツイートの件はかなり悪質な話ではありますが、取り置きシステムからくる「予約の人が全然来てない〜」みたいなことって大なり小なり日々あちこちで起きていると思うので、事前精算のほうに振り切ったほうが十分なリスクヘッジにはなるよねってことを思った次第です。
(最近はECサイトの充実でずいぶん気軽に売り出せるようになりましたしね)

そもそもメールやらDMやら口約束で一旦お金を払わず席を確保できる当日精算(取り置き)っていうシステムがある以上、これからもこういうことは起こるべくして起こると思うので。

※来なかったとしてもしょうがないけどあわよくば来てくれたら嬉しいな〜くらいのスタンスの方(イベント)の場合は別

引用させていただいた件は非常にお気の毒なお話ではあるんですが、「最悪っすね!」「つらいっすね!」とだけ言っててもしょうがないなと思ったので、そもそも当日精算(取り置き)ってシステム自体が怖いよねっていう根本に立ち返って今日は書かせていただきました。

ではまた。



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