制限があるからこその産物
先日、ちょいと調べ物をしていたらたまたまこんな動画にたどり着きました。
まずそこそこ長い動画なので全部見るのは大変なのと、そもそも元ネタを知ってる人と知らない人で見てる時の熱量が雲泥の差だと思います。
ファミコンソフトの金字塔「ドラクエ4」のBGMを全て生演奏で(しかもゲーム機内に使われてる音と同じ音源の楽器で)演奏している動画です。
1990年発売ということですから、僕と同世代から少し上の方からしたらドンピシャすぎる作品だと思います。
動画をほんの少しでも見ていただければ分かると思うんですが、いわゆる8bitサウンドと呼ばれるものでシンセが3音+効果音の系4音が同時最大発音の音楽です。
当時のファミコンの限界です。
同時最大発音の4音のうち1音は効果音ということを考えれば、実質3音で全ての曲を構成しているということになります。
僕たちの世代(の特に男子)はこのたったの3音で構成されている音楽に心が揺れ動くんです。今聴いても。
ここからスーパーファミコンに進化し、セガサターンやプレイステーションと発展していく中で音楽もどんどん豪華になります。
そしてドラクエ4もリメイク版として2001年にプレイステーション版、そして2007年にはニンテンドーDS版が発売されるんですが、その時分には技術も進化しているので音楽はオーケストラ演奏に差し代わっています。
オーケストラのほうが当然発音数も段違いだしめちゃくちゃ豪華なので、曲のポテンシャルをおもいっきり音楽として発揮できるはずなんですが、やはり僕は前述の8bit音楽のほうにワクワクしてしまいます。
当然、リアルタイムでプレイしながら聴いていた音楽だからというノスタルジーが発動しているのは言うまでもないですが…
大人になった今、ましてやプロのミュージシャンとしての観点から聴いても「すごいな」と圧倒的に思わせてくれるのは3音の8bitサウンドのほうです。
オーケストラの練りに練られた濃密な編曲も素晴らしいんですが、そもそもたったの3音でよくもこんなに多種多様なBGMを作れるなという部分のほうが、ぶん殴られた感がすごいからでしょうか。
何がすごいかと言うと、音楽を作曲するにあたりテレビや映画や舞台のBGMでバンドサウンドやオーケストラは当たり前のように使われている中で、ファミコンはスペックの都合で機械音3つまでしか許されなかったという点。
世の中の他のコンテンツがバリバリいろんな楽器や声を用いて音楽を作っている中、この制限というかハンデと言ってもいいでしょう。
それで何十曲も作るというのはなかなかの縛りだと思います。
ただ、だからこそ「限られたルールの中でどこまでできるか」という縛りから生まれる発想もあるのかなとも思います。
たくさん楽器やトラックを使えずに3音しか使えないからこそ、とことん要素を削ぎ落とし削ぎ落とし、まったく無駄のない洗練された音楽が出来上がったという側面もあるかもしれません。
PSやDSへの移植版のBGMを聴くと8bitサウンドに比べて、本当に豪華で8bitにはなかった「裏メロ」のようなものもたくさん入っています。
本来頭の中にあった原曲がこれでファミコン版はとことん削ぎ落とした骨部分のみを聴かせていたのか、もともとファミコン版の3音が原曲で後々オーケストラアレンジでおもいっきり増幅したのか。
その卵と鶏の前後は分かりませんが。
子供の頃リアルタイムでプレイしていた頃はなんとも思ってませんでしたが、改めて最初にアップした動画で音を聴いてみたらたった3音でのやり繰りがとんでもない。
逆に言えば「3音あればこれだけの音楽が作れるんじゃん」とも思いました。
たくさんの道具があるとついつい手を伸ばしちゃうんですが、3音で曲を作るなんてことをやるほうが創造の部分の比重が大変そうでおもしろそうなので、ちょっとこれはこれで実験的にやってみようかなと思った今日なのでした。
大人になってからの再発見、まだまだ眠ってそうなのでこれからも発掘していきます。
ではまた。
[P.S.]
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