僕に宿る「俯瞰的ナルシシズム」という存在

「自身のピアノに関していつもこれをしているっていうことがあったら教えてください」という質問をいただきました。

ピアノという楽器に限らずだいたいこの手の質問に対しておおよそ想像できる答えっていうのは…

「基礎練は毎日欠かさずしてるよ」とか「こういうトレーニングを取り入れたりしてるよ」とか「こういう時はこういう曲を練習して、こういう時はこういう音楽を聴いたりして…」みたいな、実にプロっぽい技術面だったりルーティン的な答えが想像されるかと思います。

そんな中、僕がその質問に対して即答した内容は「一日に一回は自分の演奏に聴き惚れる」というもの。

「いつもこれをしている」と聞かれて真っ先に浮かんだのはソレでした。

リアルタイムで弾いてる自分の音でも録音を聴き返している時間でも過去に作った作品を聴いてる時でも、TPOはなんでもいいんですがとにかく「自分が誰よりも自分のピアノのファンである」ということを毎日実感する時間は必ずあります。

で、ここからが大事なんですが…

これは自画自賛とかただのナルシスト(ナルシシズム)っていうそんな単純な話ではないんです。

物理的には自画自賛に間違いないんですが、マインド的には本当に「他画自賛」という感じ。
(そんな言葉があるのか知らないけど)

分かりやすくするために具体例を挙げると…

自分を顧みた時に、何かしらの作品を提供したり演奏したりした時にご一緒してる方や聴いてくれた方から「ピアノめっちゃいいですね」とか「ピアノかっこいい」と言われた時に「ありがとうございます!」とか「いやいや…(謙遜)」みたいなことを言う頻度は他のミュージシャンの方よりもおそらく僕は圧倒的に少なくて…

どこか他人事のように「ね、本当カッコいいですよね〜」っていうリアクションをすることが多いです。

その一言を返してる時の僕っていうのは本当に本当に他人事のようにそれを言ってて「俺のピアノかっこいいだろ!」とかいう感覚はまったくなくて、聴いてくださってる方と同じ立場になって俯瞰的に「かっこいいよね〜」と心の底から思っていたりします。

コロナ禍で無観客配信ライブが全盛だった時期。

リハーサルが終わって本番までの合間に僕を抜いてるカメラ映像のプレビューを配信スタッフの方に見せていただいている時間、僕はいつも「うわ…かっこいい」「やば、めっちゃかっこいい」「今のとこかっこよすぎるからもう一回見せて」とか言いまくってたんです。

それは側から見たらどこをどう切り取ってもただのナルシストだと思うんですが、本来僕の性分として自分にナルシシズムなんて一ミリも存在しないことは自分が一番よく分かってるんですが、自分のピアノの音(ならびに弾き姿)を見聞きしている時は本当に本当にただのイチ観客というかイチファン目線で観ちゃう。

「俺のピアノいいな〜」じゃなくて「この人のピアノいいな〜」って感覚。

その都度都度の「ファンっぷり」に関しては、日頃熱心に応援してくださってる方には申し訳ないんですが断トツで僕が一番だと思っています。

そもそも聴いてる量が段違いだし(当然なんですけども)。

ここで履き違えてほしくないのは「自分が一番だ」という意味合いとは全然違うということ。

世の中、素晴らしいピアノ弾きの方がたくさん居ますしみんなカッコいいし上手だしすごいな〜って思います。

「自分が誰よりも自分のピアノのファン」という感覚と「自分のピアノが一番だ」という感覚はまるっきり違うということだけは誤解のないように押さえておいてほしいと思います。

バッキバキに決まってる時も、ちょっと緩い演奏の時も、ミスタッチしちゃってる時も、リズムがグダグダの時も、その酸いも甘いも音にこもる喜怒哀楽も全部ひっくるめて愛おしくてしょうがないという感じ。

なんかこうやって書けば書くほど「結局めちゃくちゃナルシストじゃん」「めっちゃ自分で言うじゃん」と思われる方がいらっしゃったら、多分この感覚は分かり合えないかもしれません。

これは本当にナルシシズムとは一線を画しているんですが、ただまったくナルシシズムがかすってもないかと言われたらさすがにそうでもないとも思います。

ので勝手に「俯瞰的ナルシシズム」と名付けました。

今日も自分のピアノの大ファンで居られている。
今日も自分のピアノにときめく。
今日も自分のピアノにワクワクする。

そう思えているうちは大丈夫。

なので「自分のピアノに(俯瞰的に)聴き惚れる時間を過ごす」ということが最低限であり最強の日課であるという答えです。

多分、そんな感じでいるからこそライブとかでも基本お客さんにドヤったりもしないし「勝手に聴いといて」くらいの態度でピアノに没入しちゃうんだと思います。

ファンサも欠片もなくてどうもすいません。
(いやむしろ音=ファンサだと思ってますけども)

表現者として自分から出るものの一番のファンは自分ってのはごくごく当然のことなんじゃないのかなと思います。

それをナルシストだ自画自賛だと片づけちゃうのはかなり浅いよな〜とも。

てことで「俯瞰的ナルシシズム」というバランスの取れた造語(おそらく)を落とし所にしておきたいと思います。

そんな感じです。



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