AIとの共存とエンタメへの融和性は将棋ファンなら15年前からとっくにリテラシーを持ってますという話

今日は「AIとの共存とエンタメへの融和性」というテーマでひとつ書いてみたいと思います。

何やら堅苦しそうな題名ですがそこそこ大切なことなのでぜひ読んでいただければと思います。

ちょっと長くなると思うんですが、将棋とAIの歴史も踏まえて読み応えはあると思うのでどうかお付き合いください。



AI(人工知能)という言葉がここ数年でようやく市民権を得たように思います。

もうちょっと前まではAIに対する知見やリテラシーは人によってかなりハッキリと区別されてたと思うのですが、じわじわとそのグラデーションは薄まってきたように思います。

とはいえ世間的にはまだまだ自分たちの日常との距離感はそこまで近くなかったかもしれませんが、2019年の紅白での「AI美空ひばり」だったり、去年登場したAIが画像を生成してくれる「Midjourney」というサービスの登場だったり、エンタメ業界にもAIがじわじわ進出してきてさすがにもう「分からない」では済まないよねっていうフェーズに突入している昨今だと思います。

ちなみにMidjourneyにピンと来てない方のために軽く説明しますと、端的に言えば「AIが絵を描いてくれる」というもので。

描いてほしい絵のイメージやキーワードを入力してワンクリックすれば、ものの数十秒でプロレベルの絵を何枚も描いてくれるという感じ。

しかも上がってきた絵がイメージとそぐわなかったら何回もやり直しもしてくれます。

どの程度のクオリティの絵があがってくるのかはMidjourneyで画像検索をかけてもらえば分かると思います。

そしてそれは「オリジナルの絵(画像)」として普通に世に出して使ってもいいという具合。

まだまだ始まったばかりのサービスなのでおそらくアップデート的なことを繰り返しているんでしょうから、AIの進化と共にクオリティはもっともっと上がっていくんでしょう。

誰でも数十秒でプロレベルの絵や画像が誰でも簡単に生成できるとなると、同じ土俵で人間の絵描きさんが勝負を仕掛けても潰される未来しかないと思います。
(この人に描いてほしいみたいな人間的価値があれば別ですが)

なので大切なのは「共存」という考え方になってくると思います。

日本の中でAIというものが世間的に浸透し出したのがいつくらいからなのかはわかりませんが、少なくとも僕が意識し始めたのは15年前です。

ハッキリ言ってめちゃくちゃ早いと思います。
技術者たちを除く世間という部類では先駆けのレベルだと思います。

なぜなら僕が「将棋ファン」だから。

日本の中でAIという存在の進化をどの業界よりもリアルに目の当たりにしてきたのは将棋ファンだと思います。

というのも、ご自身が将棋ファンである科学者や技術者たちが、プログラミングを駆使して「将棋ソフト」をそれぞれに開発し始めるというムーブメントが30年以上も前に起き始めたんです。

そしてそんな将棋ファンの技術者たちが集まって、誰が開発した将棋ソフトが一番強いのかという好奇心からなのか「コンピュータ将棋選手権」という大会が開催されます。

実に平成初期の話です。

その頃はまだ技術者同士が自分たちのソフトを持ち寄って戦わせて一喜一憂していたんですが、2006年にその選手権で優勝したBonanza(ボナンザ)というソフトがちょっとレベル違い、段違いの圧倒的強さで優勝したんですね。

それに伴って翌年2007年にとんでもない対局が組まれます。

Bonanza - 渡辺明竜王(当時)という特別対局。

将棋ソフトの王者が現役バリバリのプロ棋士、しかもタイトルを保持しているトップ棋士と対局するという一戦。
(将棋ソフトとプロ棋士が公式の場で戦うこと自体史上初でした)

当時の僕としては、これは将棋ソフトの優勝のご褒美みたいなもので「トップ棋士と対局できるぜやったー!」くらいのエキシビジョン的な感じで捉えてたんです。

全盛期バリバリのイチローがピッチングマシーンに三振するなんて想像できないじゃないですか。対局が発表された際の当時の僕の人工知能に対するリテラシーはそんなもんです。

ただ、いざ対局が始まってみると…

結果的には渡辺明竜王(当時)が勝利したんですが、はっきり言って肉薄でした。

普通に危なかった。ひとつミスったら負けだったというレベルの戦い。

そこで初めてAIというものの脅威を感じたのを覚えています。

とはいえ、まだまだやっぱり人間のほうが強いだろうっていう風潮が当時の将棋ファン全体の中にはあったんですが(願望も入ってたと思います)、その数年後にとんでもないことが起きます。


「打倒プロ棋士」を掲げて技術者たちは来る日も来る日もAIを駆使してご自身のソフトの棋力を上げるために研究、開発に没頭し続けたわけですが。

2013年にこんな企画が行われました。

プロ棋士と将棋ソフトの5対5の団体戦。
コンピュータ将棋選手権の上位5ソフトと、プロ棋士選抜の団体戦です。

そこで驚愕の結果が出ます。

見てもらえば一目瞭然。

プロ棋士側の1勝3敗1分。

団体戦としては完敗といっていいでしょう。

絶望的なことはさらに続くもので…

プロ棋士側のリベンジという側面も兼ねた団体戦は翌年も行われます。

結果がこちら。


プロ棋士側の1勝4敗。

もうここまで来たら認めざるを得ないんです。
将棋ソフト(AI)はプロを超えたと。

この辺りから将棋界は「AIと張り合うんじゃなくAIと共存する」という風潮に一気に傾きます。

プロ棋士が皆、ご自身の棋力向上のために将棋ソフトを使い出したんです。

将棋ソフト(AI)を認めて、自分の先生にしたわけですね。
プロが自宅でパソコン相手に稽古をつけてもらうという感じ。

その風潮になってから将棋界のレベルが驚くほど上がりました。

そしてここがミソなんですが「AIなんてもの分からんわ」とか「人間がやるもんなんだからソフトなんかに頼らん」みたいな変なこだわりで将棋ソフトを練習に取り入れないおじいちゃん達が結果面で驚くほど取り残されていきます(失礼な表現かもしれませんがファン目線のリアルです)。

将棋ファン以外の方は驚く話かもしれませんが、ここ数年プロ棋士の対局のネット中継の画面はこうなってるんです。


出典:ABEMA

上のパーセントは将棋ソフトの評価です。
今の形勢はこうだよっていう。

そして右側が将棋ソフトが示している次の「正解」の一手。

すっかりAIが最強と認められているからこそ、我々ファンは「AIが示している手をプロ棋士が指せるのか」という楽しみ方に変わっているんです。

そしてAIが示している手と違う手を差したら当然上のパーセンテージ(評価値といいます)がガクンと下がる。

「いかにAIと同じ手を指せるか」が今の強さの基準というわけです。


ちなみに将棋ファンじゃなくてもご存知であろう「藤井聡太」という存在。

彼は世代的に将棋にのめり込んだ時期から「将棋ソフト」を相手に育ってきたので、いわばAIの申し子のような存在。

そりゃあ強いわけです。

とは言え他の同世代も同じような環境で育ってきた中で彼だけがずば抜けていることを考えると、本人の努力や探究心やポテンシャルも当然ずば抜けているわけだから、天才がAIと共存した結果の今だとも思います。

ちょっと余談ですが、将棋ソフト黎明期は開発材料として過去の膨大なプロ棋士たちの対局データを材料に開発してたのですが…

羽生善治の対局成分がかなり多いらしいです。

多少乱暴な言い方になりますが、羽生さんがアナログで積み上げてきたものを搭載して進化したAIを駆使して誕生したのが藤井聡太という側面もあると思います。

実はそんな2人が令和の今、タイトル戦を戦っている最中なんです。
エモすぎますね。歴史ってすごい。

話を戻します。

こんな感じで、2007年に行われたAIとプロ棋士の対局以降、趣味の将棋を通してAIというもののリテラシーを深め続けてきた僕です。

当然、今は将棋界の話かもしれないけどいずれありとあらゆる分野でこういうことが起きていくんだろうなと考えてたわけで。

そこで去年「Midjourney」が現れて「絵」という分野に進出してきた。


将棋と絵を比べるのはもしかしたら強引なのかもしれませんが…

「AIなんて…」と言っていたプロ棋士たちが軒並み取り残されていき、AIとの共存を選んだ棋士たちがどんどん棋力を上げていった背景をリアルタイムで見てきた僕は、ここでしっかりAIリテラシーを深めて共存の道をしっかり探らないとあっという間に取り残されていくんだろうと考えてしまいます。

では「音楽」はどうなのか。

実は既に音楽もAIが自動で作曲してくれるというサービスは既に幾多も存在しています。

メロディだけじゃなくドラムだベースだギターだとかのアレンジ面も含めて何個かのキーワードやイメージの指定をすると、ものの数分でしっかりと曲として成立させてくれます。

そしてそこに「著作権」は存在しません(今のところ)。

なのでAIで(が)作った曲を誰かがYouTubeかなんかに自分のオリジナル曲としてアップして、それがめちゃくちゃバズるなんて未来もそう遠くないと思います。

すなわち「誰でも音楽が作れる」ということが常識になるわけですね。

そこまで考えた時に…

じゃあ今のAIの作曲レベルはいかほどのものなのか。
ここを研究してみたいなと思いました。

将棋で言うところの、まだまだプロ棋士には到底及ばないレベルなのか、肉薄しているレベルなのか、団体戦みたいに「こんな曲数分で作られたらたまらんわ」というレベルなのか。

当然、AI自動作曲のサービスによっても優劣あると思うんですが。
(将棋ソフト内でも棋力の差があるように)

ちなみにMidjourneyの絵を見てても、同じAIが生成するとはいえクオリティの差ってけっこうあるんです人によって。

なので、同じ将棋ソフトを使ってるプロ棋士同士でも差が生まれるように、「AIを駆使する力」の差みたいな競合ポイントもあるんじゃないかなとも思ったりします。

まあ何事も触ってみなければ分からないので、せっかくこんな話を書いたのでAIで一曲作ってみようと思います。

果たしてどの程度の曲がどの程度の時間で出来るのか。

あくまでAI自動作曲の現在地を探りたいという目的なので、出来上がったもののクオリティがどうであれそこはあんまり関係なく。

今から少しやってみようと思います。

完成品はメンバーシップで公開するつもりです。

長々と読んでいただいてありがとうございました。

ではまた。



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西村広文 HirofumiNishimura
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