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自分の作品がお客さんに初めて届く瞬間を客席で見た日

僕は人様に楽曲提供をする際、専ら自宅の仕事部屋でパソコンと鍵盤と向き合いながらひとりであーでもない、こーでもないとブツクサいいながら頭を抱えながら作曲・編曲に勤しんでいます(まあクリエイターはだいたい皆さんそうでしょうけど)。

で、データのやり取りを何往復かしてOKが出たら最終データを入稿して一旦のお仕事は終了という感じなんですが、僕の中ではその瞬間に曲が完成したという気持ちはいつもあまりなくて….

やっぱりどこまでいっても曲(作品)はお客さんのもとに届いて初めて「完成」と呼ぶべきだと思っています。

いや、完成というか「誕生」と呼んだほうがいいかもしれません。

自分で作って満足して終わりならばそれまでで、お客さんに届いて初めてその作品はこの世に存在するということになるんだと思います。

今までのキャリアの中で曲を作ったことは多々ありますが、思えば誕生(お客さんに初めて届く)の瞬間はいつだってステージに居て演奏していた気がします。

そういう意味では昨夜はそこそこのキャリアの中で初めての経験だったかもしれません。

自分が作った楽曲(作詞はアーティスト本人)がこの世に初めて誕生する瞬間を、お客さんと一緒にフロアで迎えたのは。

なんとも言えない気持ちでした。

その曲が歌われてる間、僕はステージで頑張ってる彼女たちよりも終始フロアを見渡してしまっていました。
(2階席だったので1階フロアが上から見渡せました)

みんなどんな顔で聴いてくれてるかな。
ノってくれてるかな。
楽しんでくれてるかな。
聴き入ってくれてるかな。

ずっとそわそわしながらひとつの作品の誕生の瞬間を味わっていました。
(歌い出しのタイミングでこの日一番のマイクのハウリングが起きたあたりがなんともあれですけど)

それは今までみたいに「新曲やります」という感じでステージ側で演奏してる時の自分とはまったく違う感覚で、弾丸で来てよかったなと改めて思いました。

というよりもそのために行ったと言っても過言ではない。

完全にドアツードアの大阪〜東京弾丸往復でしたが、やっぱりその誕生の瞬間に立ち会いたかったものですから。

本当にあの4分のために行ったと言っても過言ではない。
(いや他の時間のステージもちゃんと見ましたよ)

そして、昨日初めてステージで流れてお客さんに届いたことで、一旦僕の中では成就した気分で、あとはよろしくお願いしますといったところ。

どうか立派に育ててくださいと。

僕は「名曲」ってのは作るもんではなくて育てるもんだと思ってて、昨日初披露された時点で「良い曲」とか「好き」とかそういう感想はもしかしたらいろんな方が持ってくれてるかもしれませんが、その人その人に対しての「名曲」にまで昇華するかどうかは、授かった人間がいかにその曲を大事に育てていくかだと思います。

その育てていく過程の中でひとつの曲に対しての各々の経験やストーリーが積み重なっていって、それがいずれノスタルジアになり「あれ名曲だよね」というところまで落とし込めるんではないかと思っています。

自分が演奏する持ち曲ではなく人さまに授けた作品なので、誕生の瞬間を客席で眺めながら「どうか大切に育ててくださいね」というあまり今まで感じたことのなかった感情が芽生えた時間でした。

演者もお客さんも含めてどうか可愛がってもらえればなあという曲に対する親心でいっぱい。

それをちょっと離れたところから見てる心地よさを覚えてしまった日でしたとさ。


さて、明日からミュージカル「えんとつ町のプペル」大阪公演の稽古が本番まで怒涛のように。

こちらはガッツリ演者として。

なんか次から次へといろいろ問題が起きて、リアルえんとつ町のプペル感が半端ないですが引き続き頑張りたいと思います。

「どうか立派に育ててくださいね」という感情もあれば、「一緒に育てていきましょ」という感情があるのもまたクリエイティブ。

ではまた。


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