トラブルと遊べ ヤンチャ・ボーイ
とにもかくにもライブにはトラブルが付きものだったりする。
好んでライブに行かれている方なら誰しもそのトラブルというやつに出くわしたことがあると思います。
ここで言うトラブルというのは「突発的なトラブル」の話。
本番を迎えるまでのプロセスで発生する大なり小なりのトラブルではなくて、板の上でいきなり起きてしまうトラブルの話。
そしてそのトラブルってだいたい「なんでよりによって今?」っていう何とも悲劇的なタイミングで起きたりする。
代表的なトラブルを何個か挙げてみる。
けっこうな頻度で起こるけどそこまで大ごとではないトラブルとして「ギターの弦が切れる」というのがあります。
ただこれもケースバイケースで、例えば全パートが終始がちゃがちゃ鳴らし続けてるロックな曲の最中にギターの弦が一本切れたところでそれはあんまり関係なくて、むしろその弦が切れてるサマすらロックに映ったりする。
片や、渾身のMCをしてフロアがすすり泣いているような状況で「それでは聴いてください」といった感じでアコギボーカルでしっとり歌い出した瞬間に「ばい〜〜〜〜ん!!!」って音と共に弦が切れたら、もうこれは目も当てられない。
「ギターの弦が切れる」というトラブルひとつにしてもコントラストは激しい。
他には、楽器(アンプ)の音が出なくなるとか、照明がいきなり落ちるとか、キーボードスタンドがいきなり壊れて楽器が落下するとか、オケの音が止まるとか、肝心なところでSEが鳴ってくれないとか…まあ挙げ出したらキリがないです。
僕も20年余のキャリアの中でそれはそれは数多く経験してきました。
(それはそれは素敵なトラブルだらけですよ)
そもそも人間とシステムが数多く関わることですから、トラブルは絶対に起きます。
「なんでよりによって今やねん!」って奇跡的なタイミングが多過ぎて、さすがに神様って存在を盲信してしまいそうになる時もあるくらいには文字通り神がかっているタイミングで起こることは多いんですが…
※ミュージカル『えんとつ町のプペル』大阪公演の大事な大事な大事な初出し公演(ゲネ公演)も、直前で会場のスピーカーが飛んで1時間押しましたねそういえば(会場のスピーカートラブルは初めて)
まあそんな感じでトラブルなんてのは要素のひとつとして絶対にある。
そういえば余談ですが「なーんか今日絶対に起きそう。なんか起きそう」ってなことを本番前に誰かが楽屋で口走ることがある。
そういう時はかなりの確率で何か起きる。
(言霊ってやつを信じてしまいそうな瞬間である)
で、「なーんか起きそう」って口走ってしまう時っていうのは、だいたいスタジオリハの時から何から全てが噛み合い過ぎてうまくいき過ぎてる場合。
こんなスムーズに最初から最後までうまくいきすぎるとかありえない…みたいなことを思ったら本番で何かしら起きる。
(まあこうやって書くと結局それは気持ちの問題なんでしょうけど)
話がそれましたが、とにかくトラブルは絶対に絶対にある。
そしてトラブルってのは単体で考えると完全にネガティブ要素であります。
進行やクリエイティブを阻害される存在であります。
なので、黙ってやり過ごしたり正攻法で対処したって損しかないんです(ライブ本番中に起きる類のトラブルの話)。
グダグダした空気だったり、一気に夢見心地から現実に戻される空気だったり、時には会場全体で本当にシャレにならない空気が流れたりします。
トラブルを正面から受け入れてしまうと…です。
っつーわけで、トラブルなんて楽しんでしまえ!ってマインドがめちゃくちゃ大事になってきます。
黙って受け入れててもとんでもない空気になるだけなんで、トラブルが起きた瞬間にいかにそのトラブルをその日のエンタメ要素に変えるか。
これは0コンマ何秒の判断の世界です。
とにかくカッコ良さはその瞬間に全て捨てて一気にネタにしないといけません。
それもトラブルの種類によってやり口は変わってきます。
例えば、僕がバンドで演奏しててここぞって時にキーボードの音が鳴らなくなったら、「あれ?あれ?」とうろたえ続けるとオーディエンスもそわそわしますし(他のパートが復旧するまで演奏を続けてくれてるとしても)、一旦曲を止めようということになったらこれはもうグダグダになってしまう。
「音が鳴らなくなったからしょうがない」ではそれまでで、トラブルがただトラブルとして機能しただけです。
じゃあ今僕がそうなったらどうするかな〜って思い浮かべたら、とりあえずライブハウスのスタッフさんに楽器のことを顎で丸投げして、MCマイク使ってフリースタイルのラップでも始めると思います。
楽器が復旧するまで。
キーボードソロだ〜ってことでラップでも。
もちろん楽器の復旧が早ければフリースタイル→キーボードっていう1人ソロメドレーが完全しますし、めちゃくちゃ手こずってたら僕のフリースタイルの語彙力がどんどん乏しくなってかなりグダグダなラップが続くでしょう。
それはそれはとっても楽しそうなお客さんの顔が浮かびます。
で「楽器の音が止まったおかげで俺のフリースタイルが聴けてよかったなっ!!!」と思いっきりドヤります。
間髪入れず「どこがやねん!!」ってツッコミが被せ気味できたらなお最高です。
こんなことを書いているとおそらく僕のファンの方からしたら「どこかのライブで一回音が止まってみてほしいな」とすら思うでしょう。
トラブルと遊ぶってのはこういうことです。
ちなみに全然ホームじゃない場所でもやると思います(微妙にマイナーチェンジはすると思うけど)。
それで僕を知らない人たちに、あいつめっちゃ変なヤツって思ってもらえれば本望です。
もちろんこんなこと最初からできたわけなくて、場数を踏んできたって蓄積と先輩方のステージで学んできたって勉強の積み重ねの上にあるのは当然です。
が、最終的にはその瞬間の度胸だと思います。
滑ったらもっともっと最悪な空気になるんで。
でもトラブルを黙って受け入れて微妙にきつい空気になるくらいなら、トラブルの好きにはさせねーよって感じで遊ぶくらいがライブはちょうどいいんだろなってことで。
なので、特に若者たちは失う信頼も実績もステージには無いんだから、トラブルなんか受け入れずにトラブルと遊び尽くしてください。
ちょっとそんなことを書きたくなった今日でした。
ではまた。
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