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滋賀県高等学校軽音楽新人大会の審査員をしてきた話

一日が何かと立て込んだりしていて「ようやっとnote書く時間にありつける」ってタイミングが23時台とかなかなかシビアな時は、逆に開き直ってのんびり書き始めるという個人的風習があります。
(とりあえずコーヒーでも飲むか…とか思い出したりして)

これは普通に書いてたら24時を跨いでしまうなぁって時に、それまでに絶対にアップしてやる!ってところに拘り過ぎてなんかバタバタバタっと適当な薄い記事を残してしまうくらいなら「その日の24時だ25時だ!」って感じで割り切ってしまおうというスタンスです。

というわけで今日は書き始めのタイミングがかなり遅くなってしまったので、書き終わって投稿する頃にはきっとなかなかの時間になってるだろうなと思いつつ「2月12日の24時台!」と自分に言い聞かせようと思います。

年に数回そういう時があるんですがどうかそのあたりは寛容に捉えていただけると有り難いところです(いつもありがとうございます!)。

そんなわけで今日はちょっと最近の中ではかなり珍しい角度の話を書きたいと思います(今年に入ってからどうしても震災関連が多かったので)。

昨日(11日のことです)は、滋賀県のシライシアターというホールで行われた『滋賀県高等学校軽音楽新人大会』の審査員という重役を担わせていただきました。

滋賀県内の高校の軽音部のバンド(1年生限定)が一堂に介して一組一曲ずつ演奏してもらって、どのバンドが一番良かったんだっていうことで残酷ながら順位付けをするというもので。

なんと総勢27バンド(すなわち27曲!)。
9校か10校くらいだったかな。

審査員は僕を含めて3名居て、それぞれ持ち点50点ずつ(5項目×10点)でそのポイントの合算で1位から27位までが決まってしまうという実にシビアな。

最終的には最優秀バンドが1組、優秀バンドが3組、奨励賞(入賞みたいなものです)が4組の上位8バンドが発表されるという形です。

僕も部活ってやつはやってきたので(こう見えてスポーツ部でした)、県大会の新人戦ってやつのあのバチバチした感じはよく知ってますが、誰の目で見ても勝敗がハッキリしているスポーツと違って「バンド演奏」というやつで順位が付くわけですが、これはなかなかやっぱり大変で。

採点競技という点ではフィギュアスケートなんかが同じような部類で思いつくんですが、例えばひとつひとつの技の難度とかキレとかそういう部分が明らかに違うとかならともかく、ある程度同じようなレベルの場合は最終的にジャッジの好みというか感性次第みたいなところってあるじゃないですか。

だから採点によってけっこう賛否が分かれたり下手したらジャッジが叩かれたりもする(M-1とかもその風潮ありますね)。


そして「バンドの審査基準」って本当に大変で、何をもって「良い」とするかっていうのは本当に本当に曖昧な部分があって。

例えば2つのバンドを見比べた時に…

Aのバンドは各々の演奏技術は今すぐプロに食い込めそうなくらいとっても高いんだけども、バンドという塊として見た時にどうも「バンド感」みたいなものが薄い…でも個人個人の演奏力は恐ろしく高いな。

Bのバンドは各々の演奏技術はちょっとアレなんだけども、ドンと塊で音を出してる「バンド感」みたいなものはあるな。でも個人個人の演奏力はもうちょっと頑張らなきゃだな。

こうなった時に審査基準の中に「技術」という観点のものもあれば「グルーヴ」という観点のものもあったりするので、例えばAのバンドに「技術8点・グルーヴ4点」で、Bのバンドに「技術5点・グルーヴ8点」と付けたとしたら、その時点でBのバンドのほうが上位ということになるわけで。

ですが、おそらく素人目では明らかにAのバンドのほうが上で(やっぱり演奏技術に意識がいっちゃうと思うので)、そもそも玄人の中でもハッキリ意見が分かれる部分もあると思います。

あとは、歌の子でも「あの子のほうが音程やリズムは良かったけど、この子のほうが声がめっちゃ良い」とか。

審査項目の中に「インパクト」的なものもあるので、「うわ…いい声!」ってだけで後者の子のほうが高得点になるケースもある。

そこまでいったらもう努力とかそんな世界じゃなくてハッキリと運だったりします(その時に並んでいる審査員の好みとのマッチングも含めて)。

実際はそういうのが5項目もありそして27バンドもあるわけですから、点数をつける側もいかに疲弊するかというところはなんとなく察していただければ幸いです。

昨日の最後、審査発表があった時の軽音部の子たちのリアクションも本当に様々でして。

例えば同じ奨励賞(入賞)で呼ばれるにしても、そこで声を上げて喜んでるバンドもいれば、賞に選ばれたとはいえ浮かない表情で壇上に上がっくるバンドもいる。

前者はそもそも自信がなかったのか他を見て圧倒されてたのかでまさか自分たちが入賞するとはって感じで、後者は最優秀を取る気満々だった子たちでしょう。

中には「なんであのバンドが賞取れるんだ?あれのどこに負けてるんだ?」みたいに思ってる子も一定数いらっしゃると思います。

これは邪推でもなんでもなくそんなもんです。
多大な経験則のもとそこは断言できます。
(というかバンドマンなんてそれくらいでいいよ)

今回、27バンドを横一線で並べて1〜27位をつけたわけですが、こんなことを言うと身も蓋もないけども「いや無理があるわ」と途中から思っていたのは事実。

そもそもちょっとジャジーなオシャレロックをやってるバンドと3ピースでゴリゴリパンクで攻めてくるバンド、さあどっちが高得点なんてそんなの分からんわけで。

定番の食べ物に例えてみると、目の前に10店舗のカレーが並んでて「これらのカレーを1位から10位まで付けてください」ならまだどうにかなりそうですが、「ラーメン・うどん・そば・パスタ・寿司・焼肉…」みたいな感じで並んでいて「さあ順位付けてください」ってのはもう「分からん」じゃないですか(いやでも真剣に向き合いましたよ)。

その時の気分にもよるだろうし、その人の食の好みも大きく反映されるし、なにより「食べる順番」で大きく変わってきそう。

この「順番」ってやつはハッキリと残酷だなと思います。

いくら大会とはいえステージで演奏していて客席に人がギッシリという空気はやっぱり「ライブ」です。
(客席には保護者の方だったり出番待ちor出番終わりの他の子たち)

最初のほうは会場の空気は重いんだけども、途中くらいから客席がオーディエンス化して手拍子やコールアンドレスポンス的な合いの手が熱くなってきたりする。

これは同じ演奏してる側としてもとってもとっても分かりますが、それは確実に演奏の熱量が上がります。すなわち「良く」なります。

まだ場の空気が硬い序盤と、ある程度柔らかくなってきて普通にライブっぽい空気になってる中盤以降では、ここに大きなアドバンテージはハッキリと生まれます。演奏なんか本当に。

正直これは不可抗力的に平等ではないと思います。
完全に「運」です。

ですが自分もこの世界に居て年々痛感しますけど「運」ってめちゃくちゃ大事。もう本当に「運」とか「たまたま」にいかに遭遇するかだと思います。
(実力が拮抗している中で頭ひとつ抜けるには)

当然、審査しててそんなことも過ぎるわけですね。

「さっきのバンドにこのオーディエンスの空気があったらもっと絶対に点数ハネてるな」みたいな。そしたら普通に順位変わってるなって感じで。

そんな感じでありとあらゆることが紙一重の中、最終的な順位はどうしても決まってしまうわけで。

諸々終わって会場を後にしようとした時に、廊下の隅っこで泣いている子をちらほら見かけました。

はたまた「ちっくしょ!」って感じでやり場のない感情を爆発させている子も見ました(いいぞ!)。

その日の1曲、目の前の1音1音に何ヶ月もかけてきたが故の…です。
(いやもう審査した側として本当に本当に胸が痛かったよ)

でもああいう子たちはまた確実にここから強くなるし、もっともっと音楽が好きになるし、だからこそ音楽に振り回されるし、楽器にも振り回される。

時に楽器を嫌いになる。
で、また好きになる。
(ようこそ!)

しかし本当にみんなキラキラしていました。
とってもかっこよかったしとってもかわいかった。
何よりとっても音楽に、そして楽器にひたむき。

まだ1年生ですから、ここからいろいろあると思います。
残念ながら楽器を置く子も出てくるでしょう(いろいろ多感な時期ですしね)。

個人的に昨日の子たちを見て思うところは、偉そうに審査する側じゃなくて同じアーティスト・バンドマンとして同じステージに立つっていう未来が来ることを願っています。

そう思える子たちばかりでした。本当に。
※普通にスカウトしたい子(現場連れていってみたい子)もちらほら居たのよ

まああとは…

個人的な話として「当たり前のように楽器を鳴らせる尊さ」ってやつを本当に本当に痛感した2024年でありまして、そんな中昨日が今年に入って初めての現場らしい現場だったわけなんですが…

そこに拡がっていたのは何ヶ月も鍛錬を重ねた先の一音に全力を懸けて涙する子たちの姿だったわけで「果たしてこの子たちみたいに、目の前の一音一音にそこまで気持ち込もってるだろうか」と良い刺激を受けたのも事実。

みんなとっても美しかったです。

そして、今回のオファーはこの滋賀の軽音部の諸々を仕切られている業界の大先輩の方に「ぜひ西村さんに審査員をやっていただきたい!」と直々に熱いお声がけをいただいたものでありまして。

ですが当然僕は今年に入っていろいろバタバタしていたのもあって「2月半ばの状況次第」っていう感じでギリギリまで明確な返事を保留させてもらっていたんですが、運営面がバタつくにも関わらず「見込み」でずっと待ってくださったので「誰か審査員が必要」とかではなく僕に審査をお願いしたいっていう気概をひしひしと感じ取らせていただきました。

結果、幸いなことにこの日を迎えるまでに諸々目処がたったので無事に参加させてもらえました。

この場を借りて改めて関係各位に御礼申し上げます。
本当にありがとうございます。

すっかり長くなっちゃって(そして案の定遅い更新になっちゃって)申し訳ないんですが、なんかの間違いで昨日参加してた子たち一人でも多くの子にこの記事が届くといいなあ〜なんて思いながら、ガッツリ綴ってみました。

まあちょっとだけ長くやってる先輩の戯言として読んでもらえれば幸いです。

ではまた。



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