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(アニメ感想)真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました

タイトル長いので以下真の仲間。

ざっくり感想

6話くらいまで観ていたのですが、年末の慌ただしさで止まってしまっていたのを落ち着いたタイミングで一気に観ました。
個人的に全体の印象としては最初抱いていた結末・イメージよりも断然良い印象で終えることができたのではないかと思います。
当然原作はずっと続いているのでこれからも続くという感じで終わったのですが、それでもすっきりとまとまり、なんというか終わりよければ全て良しという印象です。

あまり自分は詳しくはないのですがいわゆる小説家になろうでの「追放系」というジャンルの始祖的な存在というのは耳にしました。
そのジャンルの面白みというと主人公が何かしらハッピーに過ごしている反面、元のパーティー等は上手くいかず、時にはその主人公と相対して粗雑に扱われるというとこになるのですが、そういう見方でいうと本作はあまりそういった面が強く出ていません。
主人公のレッドは非常に真面目ですし、あくまでハッピーなレッドたちと大変なパーティーという二本の話が並行に進んでいく感じで、これならずっとハッピーなラブコメだけで良いのでは…?と思っていたので特に前半はしっくり来ない印象です。
むしろ、スローライフを謳っている割にはある種のノイズがちょくちょく入ってくるので、前半部分で脱落した人も少なからずいるのでは。

勇者を救う物語

その全く別の特色を持つ二本の話が一本にまとまり始めた9話あたりから個人的にはすごく面白く感じていきました。
特にティセによる第三者視点で雰囲気を壊さない範囲でギャグを乗せつつ、それぞれの関係性を見直していく10話「これは勇者を救う物語」は全話数の中でも非常に良い回でしたし、ある意味「真の仲間」全体のテーマにもあたるものではないかと思います。

この話を軸にその後の話数にも展開されていくのですが最終回を観てから思うと、この「勇者」はルーティでもあり、世界を救おうとする人々そのものを指していて、「加護」というこの世界における絶対的な神の啓示に翻弄されたり抗ったりする人(テオドラやアレスなんかもそうだと思います)を救う話というのがこの話数以降のことなのではないかと思っています。
自分の意思で考え、誰かに言われたからではなく自分の思いや考え方を大事にすることこそが「生きる」ということ…というのが「真の仲間」のテーマなのかなと思ったりしました。

まあ点で見ればハッピーな結末であるものの、全体を見ると魔王討伐という世界最大戦力の離脱という状態なので全くもって由々しき事態なのでなんとも言えないのですが、「勇者に生まれた人間は望まない自らを犠牲にしてでも世界のために死ね」ということが正しいことなのかという話が全13話で展開されているので、逆に説得されて安直に勇者に戻るようなエンディングよりは好感が持てます(多分テオドラが世界を導くために奔走するので)

その他羅列

・レッドの好意
スローライフ感があるかと言われると若干怪しいものの、イチャイチャラブコメとしては安心して観れるものでした。
レッドが優柔不断ではなくちゃんとリットに対して好意を向けているのが感じられて良かった。

・思わぬ収穫
前述のように本当にスローライフだけを望んでいた人にとってはどうしても肌に合わない作品であったと思う反面、意図せず別の作品に化けたのが個人的には良かった。
スローライフだけだと中途半端にノイズがあり、「追放系」や最近はよりカタルシスをもたせる「追放ざまぁ系」というよりメリハリの強いものがあるのですがそこを指標にすると弱いという状態でした。
しかし、作品として一つのテーマのようなものが垣間見え、最終的にはそこを楽しんでいたので面白い作品にラブコメ要素もついてきてお得みたいな気分でした。

・ヘイトコントロール
面白さを出す上で優秀だったのはやはりアレス。
アレスが徹底的に悪役、しかも利己的で視聴者の大半が嫌悪するような悪役でい続けたことは非常に重要でした。
よく自分はこういった嫌悪感などをゲームになぞらえてヘイトと呼ぶのですが、このヘイトのコントロールが上手かったと思います。
一同が嫌っている人物に対する感情をコントロールできるということは正しく処理することで狙ってカタルシスを生み出すことができるということです。
これが主人公やヒロイン、良い面もある悪役のように感じ方を分散するとチグハグになってしまうので、全員が好きなキャラを作るのは難しいですが全員には嫌われないキャラとみんな嫌いなキャラがいると面白いです。

・ルーティ、大空直美さん
無機質な女の子でずっとその調子かと思っていたのですが後半にかけて感情豊かになっていき表情もコロコロ変わるようになって可愛かったですね。
何よりも声色でもその雰囲気を的確に表現してくれた大空直美さんの演技が良かったです。
最初の感情を押し殺した感じから感情が乗ってくると大空直美さんっぽさが出てきた気がします。
ティセとのペア感もそうですし、リットとレッドを取り合っている感じも最後にみれてその先が観たくなりました。

・楽曲
いわゆる「なろう系」と呼ばれる本作ですが、OPもEDも全然アニメ色がありません。
しかも(悪い意味はなく)OP/EDを入れ替えても成立できるようなスッキリとした雰囲気のある楽曲でとても味があります。
そのことからもなんとなくやっぱり作品のテーマに「生きる」ということが含まれているような気がしました。


終わり

特になろう系やラノベ作品に偏見なく、むしろ好んで見る方でありながらも正直あまり期待していなかった作品だったのですが、思わず感想をまとめたくなるくらいには良い仕上がりでした。
もちろん細部を見ていくと前半部分は怪しい部分も多々ありましたし、万人受けするものではないのですがとても豊かな気持ちになれる作品だったと思います。

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