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(第8回 新千歳空港国際アニメーション映画祭感想)(5/6)プロフェッショナル・トーク: アニメーション監督 平尾隆之×エディター 今井剛 「ポンポさんの、ニャリウッド式 編集論」

そろそろ日が経ちすぎて鮮明な記憶が薄れつつありますが、メモを頼りに記載していきます!

はじめに

ポンポさんという作品は映画における「編集」に焦点を当てた非常に珍しい作品ですが、それもあって本セッションに限らず映画やアニメにおける編集の役割という記事も多方面で見かけることができます。
私自身もそれらの記事で編集の役割というものを多少なりとも理解を進めていたのもあり、それらの記事のおさらい的な内容であったり、より具体的な内容の掘り下げを垣間見ることができてとても為になったセッションでした。

また、ポンポさんにおける編集という部分に限らず、平尾監督と今井さんとの関係性や今敏監督に学んだものづくりに対するマインド・バックグラウンドから自然と滲み出てきた考え方など、様々な要素が積み重なった結果生まれてきたのが本作であるということをひしひしと感じられる見応えのある内容だったかと思います。


編集の立ち位置

アニメにおいても実写においても編集は気持ちよく見せる・テーマに合わせて見せるなど作品においての重要な役割で、その上でアニメは段階を踏んでブラッシュアップしていくのに対して実写はあるものをどう組み上げるのかという違いがある。
アニメにおいては絵コンテという設計図が存在しているので編集の役割というのがあまりピンと来なかったりしていたものの、より良い間のとり方を検証していくフェーズと捉えると自ずと理解しやすくなった記憶がある。

発想や捉え方がすごく面白いと感じたのは絵コンテの考え方について。
アニメにおいての絵コンテは一度頭の中で編集を挟んでいるような感覚があるが、実写においては複数のカメラアングルの中から良いものを選択していくことでまさに絵コンテを組み上げていくようなこともあるという例え方が今までに感じたことのないものの見方で非常に好き。

ポンポさんにおいてはストーリーボードProで平尾監督が絵コンテをそのままVコンテに仕上げ、それを元に課題の共有などを行ないながら今井さんに一度預けてカッティングのキャッチボールを行なっていくという一節から、今井さんをしっかりと信頼されている様子が伺えました。
この作り方自体もお二人の今までのコミュニケーションの中でより良いものを作っていきたいという考えと、自分だけに固執せずに自分の中にないものを引き出してもらう良いものづくりに身を置かれているのが感じられました。

特に今回のセッションでは時折飛び出す一つ一つの例え方が非常に秀逸だと感じるのですが、これらのやり取りは出版における作家と編集の工程に似ているという点も面白かった。
ラフやプロット、ストーリーラインという点で作品を共有し、物語の組み方やより良く伝わる方法を模索していくという工程において、平尾監督と編集の今井さんは出版のビジュアル版というのは非常にしっくりきた。


編集術

平尾監督によるVコンテの初稿と上映された本編を比較すると時間軸が大胆に切り取られているのがわかる。
本人が思っているよりも案外説明は省いても物語は成立したり、時間軸を入れ替えることで流れが良くなるという物事の捉え方その一つ一つに対する感覚が鋭い今井さんの編集は似たようなことをしている身としても非常に参考になる一節だった。

今井さんの編集の仕方について、ジーンとペーターゼンとのやり取りを組み替えたときに時間軸の違いや編集カットのインサートなど様々なタイミングで組み込まれていた。
この考え方は理論的に考えつつも、上手い編集マンはやっぱりそれに加えて自分が見た時の気持ち良さ・感覚的な部分が非常に長けているという点は面白かったし自分自身も非常に同意できるところがあった。
動きの中抜をするという点や人間にとって表情が汲み取れるのは6コマという教えなど、作品によってその方法は異なるがパズルをどう組み上げていけば綺麗な流れを作ることができるのかどうかを考えるというところはうんうんと頷きながら聞いてしまった。


まとめ

様々な思いやバックグラウンドを持った平尾監督と、その監督と長年タッグを組み、実写の編集やノウハウといった部分を持ち寄った今井さんだからこそ形作られたフィルムこそがポンポさんだという思いが非常に強くなるセッションだったと思う。
ポンポさんを通じて編集の仕事について興味を持ち、更にそのポンポさんの編集においての課題や苦悩(90分という時間や作中での「贅肉だらけの作品」)というものに苦しめられたのはお二人に限らず本作に携わる多くの方たちが思うところだと思うが、このお二人による編集トークはとても贅沢な時間で終始楽しむことができました。

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