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(アニメ感想)逆転世界ノ電池少女

最終回を終えての感想

全体的にオリジナルアニメということもあり分かりやすく、作品コンセプトにブレがない作りで良いものでした。
1話の情報量をギリギリ成立できる塩梅で詰め込んでいるのはさすがだったのですが、惜しむらくは終盤部分でその辺りの悪い側面が出てしまったような気がしていて、助走というか所謂最終決戦に向けての昂ぶりのような感情が薄味になってしまったのは作品コンセプトを考えると勿体なかったのではないかと感じました。
終わりもなんというか続きがあるような終わり方(実際そうなのかも知れない)をしていて百歩譲って原作ありきのものであれば分かるのですが、オリジナルタイトルということを踏まえるとまとまってはいたものの少し消化不良感が残りました。

「原作:伽藍堂」「ガランドール」「空っぽの人間」と中身が無いということが非常に強調されていて、その象徴である細道が好きなものを見出していく(思い出す、見つめ直していく)中でそれをくれたもの(作品や電池少女たち)に借りを返していく(恩返ししていく)という図式に伝えたかったメッセージのようなものは感じられたのではないかと思います。

要素ごとは良かった話

全体的に必要な要素は基本的に揃っているものの割合などが惜しいポイントでした。
個人的に1話の掴みは非常に良かったと思っていて、熱血ロボットアニメの系譜・コンセプトがギュッと詰まっていて、むしろこの内容を全て1話に適切に詰めることができたのは素晴らしい出来だったと思います。
展開だけを見ると通常だとここまでいくのに2,3話使いそうなくらいの勢いがありました。
1話の勢いからは作品に対する熱意のようなものが滲み出ていてパーフェクトな掴みだったと思います。

その後も細道とリンとの関係性、ガランドールに乗ることについての掘り下げやそこに加わる仲間・夕紀という存在もお約束感もありつつ、今後の展開を感じられて良かった。
そこに更にミサが加わって二人とはまた違った関係性が見え始めるというところも良かった。
もちろんその後に小休止回的なものを挟みつつ、真国側の掘り下げもあり…と改めて振り返っても要素はやっぱりちゃんと揃っている気がします。

そこでやはり一番ネックだったのは素直に尺の問題ではないかと思います。
ミミが仲間になって一段落するのに8,9話使ってしまっているので、話数的にはもうすぐに最終決戦に向かわなければいけないという段階にきており、この辺りからは少なからず駆け足感を感じました。
ここまではちょいちょい真国側の敵も出てはきましたがつまるところアラハバキ側の準備の話。
熱血アニメにおいては敵側の掘り下げというかお互いが戦う意味を理解してぶつかり合うところに一番燃える部分があるかなと思うので、真国側への感情移入がどうしても足りなかったのではないかと思います。

途中で出てきた真国側のお偉いさんも結局ビッグサイトを意図せず落としてしまうためのただの布石という感じになってしまい、真の敵がチラ見えしているだけという都合の良い存在でした。
前述のとおり残り話数的に準備が終わったら最終決戦にすぐに向かうことになってしまったので、「侵略する真国との対立」「文化を守る」という大きな舞台があるにも関わらずビッグサイトが落ちてきてしまう(=貴重なアイテムや思い出が消えてしまう)という突発的な要素がラスボスになってしまったので急にスケールが小さくなってしまったような気がします。
もちろん作品としては守るべき非常に重要な要素ではあるのですが、作品コンセプトとしては「たとえ思い出のアイテムや土地が無くなったとしても俺たちの心のなかには生き続けて消えないものがあるんだ!」くらいの方がむしろ正しく熱い気がするので、そこはちょっと矛盾しているかも知れません。

これが2クールタイトルであればまた話は違ってきていて、1クール目にまずは一つの大きな戦いを終えて敵との和解、その後の2クール目では真国・幻国それぞれのキャラのさらなる掘り下げ、真の敵・黒幕との戦い、それぞれの考える「文化」とは…というもっと広い図式にすることになるのでまさに王道の展開へと向かっていけるのではないかと思います。
設定レベルだと多分そこまで作っているのではないかと思うのでやはり純粋に色々な大人の事情なんですかね…。
二期があれば事実上解決はすると思いますが、いずれにせよ一期というものの不完全燃焼感が拭えないので、やはり24話のボリュームでまとめあげるのが正しく熱血アニメという感じがします。

一つノイズな要素とするなら、宗方さんは正直いなくても良かったんじゃないかなぁ…とは思います。
細道の暗い部分を見せたりするのに必要な人物ではあるのですが、アラハバキの中で溶け込んでいるわけでもなく、かといって真国と繋がりがあるわけでもないので、ただただ不快な人物という立ち位置で作品としてもっと存在する意味が欲しいキャラでした。
真国側のムサシとヤクモもノイズにはならないのでそこまで気にはならないのですが、逆に数少ない真国の敵としてこちらももっと意味が欲しい存在とすると近いイメージです。

終わり

「熱血アニメ」というところお題目に考えてしまうのでどうしても意識してしまう部分はあるのですが、単体作品として見れば前述どおり一通りの要素がしっかりと組み込まれており、話数ごとの内容もしっかり詰まっているので最近あまり見ないタイプのアニメ・試みで見応えのある作品であったと思います。
お話としても続けられる状態であると思うので、もし二期が来るとしたら楽しみですね。

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