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FF15に出てくる店の運営上の工夫は?

日本を代表するRPGの大作『ファイナルファンタジー』。
その15作目であるファイナルファンタジー15では、主人公のノクティスたちが自動車での旅の途中でちょいちょい休憩を挟んだり、買い物を楽しんだりする。
ファンタジー世界だけど現実の車での旅行みたいで、ちょっとシュールだけどなんか楽しい。
中にはチェーン展開している店舗もあるようで、今日はこのあたりに着眼点を置いて考えてみたい。

以前取り上げた『ペルソナ4』に続き、チェーンストア理論上ゲーム内の描写にどのような工夫を見出せるか、卸・小売業界に15年務めていた筆者が考えてみる。
そう、やはり暇なのである。

FF15の世界において、以下の2つの店が大陸内に複数店舗を出店している。

①コルニクス鉱油のミニマート(スーパレット/ミニスーパー)
②クロウズネスト(ダイナー/ファストフード)

写真右の建物が①のコルニクス鉱油ミニマート、左が②のクロウズネスト

まず①のミニマートだが、これは作中のガソリンスタンドに併設されたミニスーパーである。もしくは、耳慣れない業態かもしれないが、スーパレットと呼ばれるものに分類されるかもしれない。
スーパレットとは、食品や日用雑貨を扱うがスーパーより品目を絞っており、店舗面積は50坪前後と小型だ。
アメリカに多い店舗形態だが、最近はスーパレットではなく日本型コンビニエンスストアがガソリンスタンドに併設されて展開しているとも聞く。

ミニマート

FF15のミニマートは30坪程度だろうか?
妙にこざっぱりとしている。
店舗の備品か商品かわからないような陳列方法はちょっといただけないが、シェルフレディパッケージングの商品があり、陳列の手間を軽減していることが分かる。
シェルフレディパッケージングとは、パッケージの箱や段ボールを一部切り取って、そのまま陳列箱として棚に置けちゃう商品のことだ。
写真だと小さくわかりづらいかもしれないが、店員の手前の棚の真ん中の段あたりにある商品がそんな感じだ。黄色と青のスナック菓子のようなパッケージの商品。

こういうやつ

カッターなど使わず、手でペリペリって開けてそのまま陳列できるので手間が少ない。
商品が減ってきて後ろに倒れる、ということも防げて便利だ。
この商品は他の店舗でも入口近くのゴンドラに置かれているので、売れ筋なのだと思う。

先ほどの写真と多分同じ商品。別店舗では入り口付近においてある。

この商品はもしかしたらギサールの野菜チップスかもしれない。
ギサールの野菜はチョコボの餌だが、この世界では人間用にもスナック菓子として好まれているらしい。
別の街で大量に陳列されているのを見て、ノクティスたちが何か感想を言っていた気がする。

いずれにせよ売れ筋は入口やレジ前に置くのはとても良い。
ただ、売れ筋であるならもう少し量がいると思う。
せっかく店内の商品数を増やし過ぎず絞られているのに(ゲームの都合ではない!きっと優れた経営判断によるものだ!)、売れ筋を一品大量陳列できていないのはもったいない。

続いて②のクロウズネストを見てみよう。

クロウズネスト店内。左がカウンター席、右がボックス席。

クロウズネストはファストフード店。アメリカではダイナーと呼ばれる業態に近い。
ハリウッド映画とかによく出てくる派手な革張りソファで、ポリスメンがハンバーガー食ってるようなあれだ。というかFF15はまさにあのイメージだろう。

FF15のクロウズネストはどの店舗も同じレイアウトで、カウンターが10席、4人掛けボックス席が4つある。
店舗面積は20坪といったところだろうか。
メニューは3つ。
ジェッティーズという瓶のドリンクと、ケニーズ・ポテトという名のフライドポテト。
そしてケニーズ・サーモンというサーモンのチーズ焼きみたいなものがある。

カウンター。ちょっと乱雑?

レイアウトは統一されていて、無駄がない。
おそらく提供時間も早く、この店ではスムーズに注文から会計まで済ませられるだろう。
アメリカのダイナーっぽく、さっと車で来店して朝飯なり晩飯なりをさっと済ませてどこかへ行く、という業態の意義を果たしていると思う。
気になるのは従業員導線だ。
写真左上に少し見切れてるが、ちょっと高いところに物を置きすぎな気がする。
マクドナルドやスターバックスなど、世界的に優れたシステムを持つフードチェーン店は、従業員が背を伸ばしたり、屈んだりすることなく道具や食材を取ることができる。
この写真だと、上の棚のものを取るのに踏み台が必要そうだ。

また、購入頻度の違うメニューによって材料の置き場所を変えるなどの工夫も必要だ。
例えばスターバックスでは、売れ数が多く提供速度も速いドリップコーヒーはレジ近くに。提供に時間がかかり、地域によっては売れ数も少ないエスプレッソはレジから離れた場所に、など材料置場や調理場所も工夫されている。
この店ではジェッティーズという瓶入りの飲料が良く出ているようで、カウンターで別のお客がこれだけ飲んでる風景をよく見る。これしかないとは言ってはいけない。
よくわからなかったが、たぶんレジ下に大量に置いてあるのだろう。
できれば屈まないで済む位置に置いておきたい。

謎のキャラクターがいるよ

あと、これはなんとなくだけどミニマートもクロウズネストも直営店じゃなくフランチャイズな気がする。

どちらも広範囲でポツポツ、としか店舗がなくドミナント化(商勢圏内に自社の店舗を集中出店し、寡占化すること)が進んでいないようだ。
したがって複数店舗によるマスメリットを得られず、まだまだ直営だと営業コストがかかるのではないかと思われる。

メニューやレイアウトの統一、変なキャラクターなどによるブランディングは本部で進めるものの、経営自体はオーナーに任せた方がよさそうだ。
しかし2企業とも安価で一般庶民向けのようなので、商圏は狭くても通用するフォーマットだ。
それでも多店舗化できない原因はどこにあるのだろう。

FF15の舞台イオスは、街を少し離れると深い山や谷があり、そこには危害を加えるモンスターがいる。
おそらくこの辺りが出店を阻害する要因なのだろう。
正直イオスの人口や、大陸のどのあたりまで都市化が進んでいるのかがわからないから何とも言えないが、夜はなんかバケモノでるし街から街への移動はそんなに頻繁に行えないはずだ。
モンスターへの対策、長距離交通手段の整備で広範囲の都市化が待たれる。

そんな感じでFF15をプレイしてみた。
車でおおよその距離を計算できそうなので、出店場所とかもう少し考えられそうだ。多分やらないけど。
でもまたこんな具合に、別のゲームでも店を見ていきながらアホなことを考えたいと思う。


参考文献
『フードサービス業チェーン化入門』渥美俊一
『アメリカのチェーンストア見学』桜井多恵子

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