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超CSカバレージ~不運の星の王子様~(決勝トーナメント1回戦)篠田ひなたVSガラルの王

「よりにもよってか……」

決勝トーナメントの組み合わせを知った篠田ひなたの口から思わずため息が漏れ出る。

対戦相手『ガラルの王』が操るのは『ドロマー退化』

アドバンス環境ではオリジナルほど使用者がおらず、母数の少ないデッキタイプだ。

それを言えば彼の使う『青魔道具』は、アドバンスにおいてはもはや絶滅危惧種のような存在なのだが。

この2つのデッキタイプの有利不利はハッキリしている。

キルターンはどちらも最速4ターンだが、求められる要求値が大きく異なるため、4キルの再現性では『ドロマー退化』に大きく軍配が上がる。


加えて『ヘブンキッド』などのカード指定除去は『青魔道具』側のキーカード《卍新世壊卍》を取り除くことができるのに対し、『青魔道具』は相手に干渉する手段を一切持たない。

せめてもの救いは、予選順位の差によって篠田ひなたに先攻が約束されていることか。

『『よろしくお願いします』』

挨拶を終え、祈るように初手を眺める篠田ひなた。

だがそこに、彼が待ち望んだ《卍新世壊卍》の姿はない。

3秒ほど瞑目し、《終末の時計ザ・クロック》をチャージしてターンを終了する。


対するガラルの王がチャージしたのは《オリオティス・ジャッジ》

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青魔道具側からすると実に嫌なトリガーだ。

安易な先攻4ターンキルは許さないという意志を感じる。


(頼む、頼む、頼むっっ……)

篠田の必死の祈る声が、見ているこっちまで届いてくるかのようだった。

そう。ターニングポイントはここなのだ。

ここで《卍新世壊卍》を引くことができれば、彼は勝機を手にすることができる。

先攻4キルプランをとることができずとも、《卍新世壊卍》を除去するために《HEAVEN・キッド》を使わせるだけでも相手のキーパーツを消費させることができる。除去されるまでに手札を増やせるのも見逃せない点だ。


だが、その祈りが届くことは無く。

「……堕呪ゴンパドゥをプレイします」

悲痛な面持ちでキーカードを探しに行く篠田。

対するガラルの王は《死神術師デスマーチ》をチャージし、悠々と《エマージェンシー・タイフーン》をプレイ。

切札である《竜魔神王バルカディアNEX》が墓地に捨てられる。

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《デスマーチ》をチャージした上での《バルカディア》捨て。

《新世壊》をプレイできていない篠田にとってこの動きはあまりにも厳しい。


続く3ターン目にも《新世壊》をプレイすることはできず、《堕呪バレッドゥ》で山札を掘るにとどまる。

ガラルの王は《サイバー・チューン》をプレイし、盤石の構えだ。


この苦境においても幸運の女神は一切篠田に振り向くことは無く。

4ターン目も《バレッドゥ》《ゴンパドゥ》を討つだけでターンを終了する。

半ば諦めとともにターンを終了する篠田だったが、意外にもガラルの王がプレイしたのは《サイバー・チューン》

彼の相手もまた万全ではなかったのだ。


迎える5ターン目。いい加減《新世壊》を貼りたい篠田。

いや、貼らないと話にならない。

しかしそんな彼がプレイしたのは《堕呪ギャプドゥ》

申し訳程度に《ガル・ラガンザーク》が現れる。

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踏み倒しを封じる『青魔道具』の重要なシステムクリーチャーだが、攻撃時に破壊効果を持つ《バルカディア》を前にしては、その存在はでくの坊に等しい。


手撃ちするには最もバリューの低い《堕呪ギャプドゥ》だが、その1ドローは篠田に垂涎の1枚をもたらした。

「不可能を可能に!秩序を混沌に!全てを塗り変えよ!

展開!!卍新世壊卍グランドジーオ!!!」

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『5ターン新世壊』

百人に聞けば百人が弱いと答えるようなスタート。

だがこれが、最善を尽くした結果なのだ。

彼にできるのはもはや、ただただ祈るのみ。



「死神術師デスマーチ、白騎士の精霊HEAVEN・キッド召喚!!


現れよ!王の中の王!竜魔神王バルカディア・NEX!!!」


死神の仮面の下から現れたるは、環境における最強のフィニッシャー《バルカディアNEX》。


邪魔なクリーチャーを粉砕し、あらゆる呪文を封殺し、そして頼もしい仲間を呼ぶ。

その一撃はいとも簡単に《ガルラガン》を打ち砕き、ガラルの王に踏み倒しの自由を与える。


この時点で既に9割方勝負は決まっていた。

一般的に、《バルカディア》の踏み倒し先は《ゲンムエンペラー》《Vol-Val-8》《The 邪悪 寄成ギョウ》などの大型クリーチャーだ。


だが、こと『青魔道具』を相手するにあたり、それらのカードは必要ない。


《白騎士の精霊HEAVEN・キッド》で《卍新世壊卍》をシールドに送れば、すべてが解決するのだ。

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これに対抗するために《卍新世壊卍》を2枚張るなどのプレイもあるが、

先ほどようやく《新世壊》に辿り着いた篠田にそれを求めるのは無理というものだ。

「……ん?」

しかしながら、待てども待てどもヘブンキッドが現れない。

厳しい表情を浮かべるガラルの王は、ただシールドの中身を確認しているという訳ではなさそうだ。

「……万物流転し虚無と化す!いでよ!!無限龍ゲンム・エンペラー!!!」

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ガラルの王の口上通り、ゲンムは篠田のデッキのカードの大半を無効化する厄介極まりないカードだ。

これが《VolVal8》や《ギョウ》であればいくらでも打つ手があるが、そこの勘所はさすがとガラルの王を称えるべきだろう。


だがそれでも、負けてはいない。

必死の思いで手に入れた彼の《卍新世壊卍グランドジーオ》は、まだ残っている。


バルカディアの砕いた5枚のシールドから、《クロック》と《ギャプドゥ》がトリガーする。

能力を失ってはいるものの、この2枚はどちらも重要な働きをする。

特に 《ギャプドゥ》は、《新世壊》のカウントを進め、倒れた《ガルラガン》を戦場に呼び戻す。


迎えた6ターン目。

篠田は《バレッドゥ》《ゴンパドゥ》《ゾメンザン》を立て続けにプレイ。

卍新世壊卍グランドジーオ》の起動条件を満たす。

しかしゲンムの妨害により、思うようにカードが集まらない。

《月下卍壊ガリュミーズ》の効果で出せるのは、《メラヴォルガル》と《ガル・ラガンザーク》が1枚ずつ。


勝利を目指すには、このターン中に攻撃を仕掛けなければならない。


《堕呪》の詠唱によりゾンビのごとく蘇った《ガルラガン》がシールドに攻撃する。

ガラルの王が持つ恐ろしい防御札も、今は《ゲンム》が無効化している。

《クロック》《オリジャ》恐るるに足らず、だ。

ブレイクしたシールドからは《HEAVEN・キッド》のGストライクが発動し、篠田の《クロック》が動きを中止する。


だがそれでも、篠田ひなたは止まらない。


「北に蒼き月昇る時、朱雀達が蘇る!!

 月下卍壊!!!ガリュミーズ!」

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戦場にアテンドされる《メラヴォルガル》と《ガルラガン》

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その能力でガラルの王のシールドは2枚にまで減少する。

トリガーした鬼札《オリオティス・ジャッジ》はやはり、《ゲンム》によって使うことができない。


対戦後、口さがない者たちは《ゲンム》を出したことは間違いだと笑っていたが、それは違うのではないかと私は思う。(もちろんマナー的には論外だが、その上で指摘内容的にも)

ガラルの王は《バルカディア》で攻撃した時点で、自らの楯に《終末の時計ザ・クロック》がないことを確認した。

対戦相手である篠田のマナには《メラヴォルガル》が見えている。

2回《バレッドゥ》を撃っているにも関わらず、墓地に《メラヴォルガル》《ガリュミーズ》はない。

《堕呪》のドロー効果を封じれば、たとえ《ガリュミーズ》を撃たれても致命傷にはならないかもしれない。


一方で《堕呪》を無効化しなかった場合、現れたドルスザクを倒せたとしても別の脅威が現れる。


そう。《ドッカンデイヤー》だ。

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堕呪と《新世壊》効果で増えた手札を全てつぎ込む必殺の一撃を受けきることは至難の業だ。


《ゲンム》を出せば、《ガリュミーズ》の効力を弱めつつ、《ドッカンデイヤー》プランを潰すことができる。

ガラルの王の判断は、決して間違っていなかったように思う。



閑話休題。

手札とマナを見て一瞬考える篠田。

勝負の行く末に影響がないと知りつつも、2枚目の《新世壊》を貼り堕呪を唱える。

そして息を整えると、《ガルラガン》を攻撃に向かわせる。

この攻撃は《ゲンム》が阻む。

2体目の《ガルラガン》が砕いたシールドから姿を見せたのはまたもや《HEAVEN・キッド》

《メラヴォルガル》の動きを止めるも、それだけではまだ足りない。

無防備となったガラルの王に《終末の時計ザ・クロック》がとどめを刺した。



この試合は、どちらも良い動きをしたとは決して言えないような内容だった。

ガラルの王はフィニッシュが5ターン目まで遅れるし、特に篠田は5ターン目の最後にようやく《卍新世壊卍》を展開するというありさまだ。


だがそんな惨状の中でも決して勝負を投げ出さず、一手一手を大切にプレイを重ねていった。


その不屈の闘志の恩賞こそが、かけがえのないこの勝利だったのかもしれない。


勝者は篠田ひなた!!おめでとう!!!



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