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神戸とフィルムエスト

今年3月で「フィルムエストTV」も10周年。視聴者の皆さん、スタッフの皆さん…様々な方に支えてもらいながら、試行錯誤の10年でした。

いまや主流となった「80年代~90年代のような映像」は、現在も試行錯誤のまっただ中です。

古く見せるエフェクトを「香らせる程度」に抑えてみたり、逆にしっかり加えてみたり。同じエフェクトをかけたはずなのに、かける順番を変えるとなぜか雰囲気が変わったり…。

「昔っぽい雰囲気」の引き出しを増やしつつ、新作も手掛けるという「自転車操業」状態が4年も続いています。

さらに「考証」面も、試行錯誤ど真ん中。

「その時代にも存在したモノ」だから、セットのなかに小道具として置いたところ「当時っぽくない」とご指摘いただいたり、オーパーツ防止演出で「明らかにその時代にないもの」をわざと置いたら「○○がなければ完璧だった」と〝手抜かり〟認定されてしまうことも…。

当然、なにをしても「再現」なので、正解はありません。しかし、そこに〝良くない違和感〟を覚える方がいる以上は、視聴ストレスを減らすための研究を行うべきだと考えています。

考証だけではない〝当時感〟や演出について、まだまだ勉強が続きそうです。

『はい、いらっしゃい。おお、にしい君やんか! 久しぶりやなあ』。

そんななか、久しぶりに神戸へ帰りました。どうしても寄っておきたかったところが、高校時代の友人家族がやっている中華料理屋です。

ここへ通い詰めた、高校~大学時代から変わらない味。神戸に帰ってきた、という感じでほっとします。

『なんや、声枯れとるがな。風邪か? ほんならアルコールで殺菌や』

友人と、厨房から出てきたおっちゃんを交え、昼すぎからビールで盛大に乾杯。懐かし話はもちろん、近況報告や最新時事のこと、イスラエルの話、戦後名を馳せたフィクサーの話、土井勝の話…などなど、話題は多岐に広がりました。

もう70代になろうとしている、友人のおっちゃん。『まだまだいろんなことを知りたい、勉強したい』と、手のしわに反して心がとにかく若い。

『世の中変わるからな、自分もどんどん変わらなあかん。仕事でもなんでもそうや』


「でも変化するのって、特にこういう〝ファンがいる店〟は、なかなか難しいんと違いますか。その味が好きという人もいるやないですか」


『いやいや(笑) そら味付けみんな変えとるよ。特に常連さん、カウンターの人はそうやな』


えーっ!
ということは僕が食べているのは、上京前の2018年ごろの味つけってことかな。


『みんなそれぞれに好きな味があるからね』

『年齢によっても違うわな。例えば子どもさんやったら、チャーハンでも塩と胡椒は少なめにするしな。だから店入ってきはったとき、カランコロン鳴ったら、どういうお客さんか絶対見るんや』

『調味料の入れる順番で味が違うんや。せやから、そのお客さんがどの順番か覚えとかないかん(笑) ほんで、どの鍋使ったかによっても味が違うんや。チャーハン1つとっても全部違う。料理は化学反応なんや』

『〝1〟は1でも、おなじ〝1〟と違うねん。〝ちょっと上が突き出た1〟やったり、〝下に横棒が伸びてる1〟やったりするんや。それがお客さんに伝わらんでも、お客さんが満足する〝1〟にできれば、それでええんや』


当たり前だけど、それにしても、俺ってまだまだペーペーやなあ。


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