第44話あとがき 飛ぶ予感
ハルコが勤めるイベント制作会社は、その名の通りイベントを運営する会社なのですが、イベントスタッフも自社で育成していました。そのほとんどは18歳から30歳くらいの学生やフリーターです。
ネットで応募してきた方に連絡し、日程を調整して面接するのもハルコの仕事でした。
イベントと言っても、ティッシュ配りやポスティングから、コンサート、販促イベント、企業式典、夏祭りなどその時々で様々な案件があります。案件によって条件が異なり、それに応じて毎日毎日たくさんの方の面接をしていました。
面接官としてのハルコの任務は大きく2つ。
一つは、応募してきたスタッフを「働かせる」こと。
どんなにやる気があっても、仕事の条件が良くても、面接した社員に不安を覚えれば、スタッフは働いてくれません。
一般的な長期アルバイトと違ってシフトもなく、近所でもなし。
スタッフ登録しておいて働きたい日にメールで仕事を紹介してもらうだけ。スタッフからすれば、働かなくても罪悪感は全くありません。
「この会社、ちょっと不安だな」
と思えばスケジュールを出さなければいいのです。なんならこちらが不安を与えるまでもなく
「やっぱりやる気がなくなった」
という理由で働かなくたって咎められません。
気持ちはとても分かります。
そもそも「やる気」というものは時間が経てば段々と落ち着いて、やがて消滅するのが自然です。
ネットで調べて、応募して、メールでやり取りして、面接に来ただけでも偉いじゃないですか。そこで「やる気」が消滅してしまっても全然おかしくないと思います。そこまでの「やる気」が確かにあったということを、褒めてあげたいくらいです。
しかしだよ…
ということは、ですよ。
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