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No.280 「還暦前の大失態と決意表明」

「これからも基本を忘れずにお互い心地好いコミュニケーションを図ってまいりましょう。本日は有難うございました」と、丁寧に頭を下げる。受講者の皆さんから賜る温かな拍手。
無事大切な研修を終えたと安堵した瞬間、司会の方が私の耳元で、「先生、終了時間は12時ですが・・・」と、申し訳なさそうに仰る。時刻は、11時30分。そう、私は終了時間を勘違いしたのだ。

今や全国からご依頼をいただく身。更には、人様の前でお話をする方々にも心構えやノウハウをお伝えする身。そんな身にとって、あり得ない大失態である。

プロフェッショナルとしての自覚と責任は、誰よりも持ち合わせている。(いや、「いた」と過去形で書かねばなるまい)
会場選びから細かなリクエスト表を提出し最適な部屋をお願いする。会場が既に決まっている場合には、見取り図を取り寄せ、机、椅子、ボード、備品などの設備を念入りに確認する。会場写真もお願いする。それらを基に、ご依頼内容、受講者プロフィール、事前アンケート等の情報を加味しつつ、研修イメージを練り上げる。

当日の会場到着は、最低でも90分前。初めてのご依頼で会場情報が少ない場合には、数時間前から入れるようお願いする。席の配置、音響確認、資材配布などを終えた後、実際に動きを確認しつつイメージトレーニングする。最後は、怪我や事故に繋がるものなど無いかを確認しながら細かなごみを拾う。迎え入れる準備が整ったところで、お手洗いに行き身だしなみを確認。軽いボイストレーニングとストレッチで発声を促し表情を和らげる。
受講者が会場に足を踏み入れたところから一期一会。一つとして手を抜いてはならない。

今回、予兆を感じていた。「なぜこんなに早口にならざるを得ないのか」「なぜやろうと思っていたものを割愛しなければならないのか」そんな懸念がよぎっていた。
こんなとき、いつもなら原因を探ろうとレジュメを振り返ったり時間を確認したりするのだが、今回はそれらを蔑ろにして自分が勘違いした終了時間通りに終わらせることに、より注意を払った。
正直、なぜこのような行動を取ってしまったのか、悔やんでも悔やみきれない。

「猿も木から落ちるよ」と妻は言うが、猿は木登りのプロではない。さらには、木登りでお金を貰ってはいない。
『プロフェッショナル』を謳い人様からお金を頂く身は落ちたらおしまい。失敗は許されない。その覚悟と責任がなければ、プロフェッショナルとは謳えない。

今、これまでの「研修前チェックリスト」に加え、『研修チェックリスト』を作成し時間経過と共に確認している。長年の経験による勘や裁量に頼ることのないよう見える化を図った。

今の仕事が天職だと信じて疑わない。
還暦後もプロフェッショナルと謳い続けるために、ここで改めて決意表明する。


2024年2月


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