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No.264 「BBT大学『実践コミュニケーション入門』始まります」

大学教員を卒業し実践コミュニケーショントレーナーとして独立した2009年、BBT(ビジネス・ブレークスルー)大学開学予定のニュースを新聞で知った。東京都千代田区のキャリア教育推進特区を利用し、スクーリングは一切なく100%の完全オンライン授業で卒業できる、しかも文部科学省認可というニュースは業界を驚かせた。その仕掛け人が、かの大前研一氏と知り納得したものだ。私にとっては単なる一ニュース、オンライン教育は自分には縁がないと他人事だった。

このニュースから間も無く、BBT大学準備事務局から「コミュニケーション基礎」の授業を担当してもらえないかとの依頼が舞い込んだ。どこでどう私に辿り着いたのか(後にある方のご紹介と知る)、寝耳に水だった。オンライン授業に興味を示さない私に対し、お話だけでもという熱意に引き寄せられお会いした。

何かを立ち上げる際の突き抜けるエネルギー。これまでも何度か体感してきたが、まさに大前研一氏の日本の教育に風穴を開けたいという熱意がひしひしと感じられた。

「対面式のアナログコミュニケーション力向上に命をかける想いで独立しました。よって、デジタルでの授業は不相応です」
率直に申し上げると、
「だからこそ貴方に白羽の矢を立てたのです。対面を重視する貴方だからこそ、デジタルにおいても受講生に熱意が伝わる授業展開をしてくださるのではと期待してのことです」
迸る熱意に圧倒され、気付かないうちに首を縦に振っていた。BBT大学とのご縁の始まりである。

初めてのスタジオ収録。まるで自分がニュースキャスターになったかのような皎然たる環境。決して嫌いではない。ワクワク感さえ覚えた。しかし収録が始まった瞬間に奈落の底に突き落とされた。
聞き手が存在しない。受講生が目の前にいない。これは想像を絶する事態だった。
「カメラレンズを受講生の目と思って話しかけてください」
人の目とカメラレンズを一緒にするなんてと憤りを感じるも、己の無能さに意気消沈。当然、期待された「熱意」など微塵たりとも伺えず・・・。
そんな様子をご覧になっていた収録スタッフのFさん。スタジオ内に入ってきてカメラの真後ろにお座りになった。
「私の目を見て授業をなさって下さい」
Fさんの機転がなければ、首になっていただろう。笑
Fさんを受講生とした授業撮影は、幼子の歩みのように進み15回分全てを撮り終えた。大きな荷物を肩から下ろしたように解放された。

約3年ごとに授業収録の撮り直しをさせてもらっている。2回目からはFさんにご迷惑がかかりすぎると、カメラのすぐ上に受講生の集合写真を貼ってもらい、その写真を見ながら収録を行った。3回目は大分慣れてカメラ相手に話ができるようになった。

今月、4回目の撮り直しをおこなっている。コロナ禍で時間に余裕が出来、少しでもカメラ目線に慣れようとYoutube講座を始めてみた。技術革新のお陰で、私一人でも収録できるところまできた。

開講から12年。これまでの受講者数は800名近くに上る。身に余る評価を受け続けてこられたのも、受講生の皆さんあってのこと。あらためて感謝の念が強まる。

今回から科目名称を「コミュニケーション基礎」から『実践コミュニケーション入門』へと変更する。より実践に活かせる内容を目指し、収録に臨んでいる。

カメラ相手の授業はまだまだ未熟ながらも、目を細めつつ12年前を振り返る自分が少しだけ誇らしい。


2022年10月

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