元旦の土手
1月1日、僕は土手にいた。
それは僕が落ち込んでいたからではなく、僕の友人が落ち込んでいたからだ。
友人とは高校時代によく遊んだ男友達で、今では公認会計士になっている。
以前にも書いた通り、僕は落ち込むと土手に行くのだが、その友人も同じことをしているらしい。
気持ち悪いコミュニティーだと思う。
そして僕は凹んだ友人に元旦、土手に呼び出されてしまった。
年明け早々、生きる気力がなくなってしまったらしい。
なぜ生きる気力がなくなってしまったのか。
理由はざっくりと言うと「やりたいことがない」というものだった。
今まで公認会計士の資格取得に向けてがむしゃらに勉強してきたのだが、それも「やりたいこと」ではなかったらしく、自分の人生を俯瞰で見た時に嫌気がさしてしまったそうだ。
「やりたいことがない」
これはめちゃくちゃ難しい。
何より、僕の周りにはやりたいことがない人がいなさすぎる。
友人の言葉を受けて真っ先に脳裏に浮かんだのが、人力舎のキャプテンバイソンのお二人だった。
お二人のネタの中で「フランスパンでぶん殴る」的なクダリがあるのだが、その映像が浮かんだ。
(※確か強盗のネタでそのクダリがあったと思いますが、間違っていたらすいません。)
やりたいことをめちゃくちゃ見つけている、そしてやっている映像。
「フランスパン」と「ぶん殴る」がある世界に生まれたことを、これでもかというくらい謳歌している。
「フランスパンでぶん殴る」という行為がやりたくて、殴ってもパン屑が出ないようなダミーのフランスパンを紙で作り、劇場に運び、リハをし、やっている。
高野さんは筑波大学を中退してそれをやっている。
僕の友人は公認会計士になっても苦しそうなのに、キャプテンバイソンのお二人は「フランスパンでぶん殴る」をやっていて楽しそうだ。
流石に友人には「フランスパンでぶん殴ってみたらどう?」とは言えなかったので、代わりに「好きなものはないの?」と聞いてみた。
「音楽と洋服は好きだけど、打ち込むほどの熱量はない」と言われた。
結局、土手には約1時間ほどいたが何の結論も出せないまま帰宅する。
僕は相談に乗るのがめちゃくちゃ下手だ。
帰宅後、僕は「ゆきぽよと食パンの区別ができなくなる」というネタの準備をした。
やりたいことがあるのは贅沢なことなんだろうか。
芸人のコミュニティにいると尚更わからない。
ゆっちゃんが新宿の劇場まできて、舞台を転がりながら奇声を上げていたりする。
僕はなんて声をかけるべきだったんだろうか。
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