ホワイトシチュー
決して怒りに任せて書いたわけではない。
解散発表の文章も細心の注意を払い手書きにしたが、とある先輩に「ニシブチあれめっちゃ怒ってたやろ?」と言われてしまったので、ここではさらに気をつける。
この先の文章は、僕が満面の笑みでホワイトシチューをやさしくかき混ぜながら話していると思ってほしい。
ニシブチが満面の笑みで・・・ホワイトシチューを・・・やさしくかき混ぜている・・・
姿がイメージできた方から次の文章に進んでください。
今日、9月18日(月)「ジュウロッカイ」でM1グランプリに出る予定だった。
しかし、警備員の体調不良が原因で欠場となった。
先に述べておきたいが僕は警備員の体調不良を全く責めておらず、糾弾する意図で本文を書いていないことだ。
僕だって体調不良で迷惑をかけたことがあるので、その点はご理解いただきたい。
その上で、この数日間のことを中心に書く。
さて、ジュウロッカイについては漫才は警備員、コントはニシブチが書くと言う分業制を取っている。(稀に警備員がコント、ニシブチが漫才を書くこともある。)
こちらは「得意」「不得意」というより、どちらも「書きたい」人なので、ジュウロッカイ内ではお互いで創作のフィールドを確保するために成立したやり方のように感じる。
したがって、M1グランプリについては警備員がリーダーとなり進めていくこととなる。
M1グランプリの出場日程が決まったのが9月11日(月)だった。
今から1週間前のことだ。
日程が決まった時点で、僕は警備員に連絡をした。
ジュウロッカイ(ハチカイ)には「(主要な大会は)1週間前にネタを共有・相談する」というルールがある。これは昨年のM1グランプリ3回戦でネタを詰め切れず、悔しい思いをしたことが原因で発足したルールである。
9月11日(月)時点、ネタの候補はほぼなかった。
発表時で既に1週間前なのでここからハイペースで進める必要があると僕は感じていた。
しかしこの日程の共有を最後に、警備員との連絡が途絶える。
9月15日(金)警備員がピンの仕事を欠席したことをTwitter(X)で見て、彼が体調不良になったことを知った。
直後に「体調悪いところ申し訳ない、M1どうなりそう?」と連絡をするも、返信がこない。
翌日の9月16日(土)は僕がピンでやっているラジオの公開収録があった。
公開収録といっても収録と2つの企画を用意する必要があり、かなりハイカロリーだった。
全力を注ぐ中で、頭の片隅ではM1に対する不安が渦巻いていた。
警備員の容態についてはこの日、パッチューネの社長にも確認した。
9月15日(金)に連絡があったそうだが、それ以降は音信不通だそうだ。
M1の前日、9月16日(日)は万が一連絡が来た時のために丸一日開けておいた。
しかし連絡は来なかった。
夕方には家を出て、最寄りにあるコメダ珈琲で、やるかもわからない1回戦のネタを彼の代わりに書いた。
過去のボケをかき集めて、警備員が得意そうなボケで2分間埋めた。
喫茶店を出る頃には夜になっていた。
その後はジュウロッカイ(ハチカイ)のネタ作りにいつも入ってくれている作家・U君に連絡し、急遽、オンラインでネタの調整に協力してもらった。
U君は「心配ですね」と言ってくれた。
僕は「やるかもわからないネタを、ごめんな」と言った。
この時点で警備員の情報については9月15日(金)にTwitter(X)に投稿されたライブの欠席発表だけである。
9月18日(月)1回戦当日になった。
もうなんとなく出られない感じはしていたが、一応AM8:00にアラームを設定した。
僕は本当にネタをやるのが好きなんだと思う、昼まで寝たらいいのにな。
LINEを確認したらAM7:47に警備員からメッセージが来ていた。
あえて明確な文章は伏せるが「すまん、熱が37.5℃あって今日はしんどいかも」というメッセージだった。
ひとまず、生きていて良かった。
しかし、現状それしかやりとりができていないので彼の容態は計り知れない。
僕はただ体調の回復を祈っている。
そのあとはパッチューネの社長と電話して、M1のことやその後のことも話し合った。
パッチューネは素晴らしい事務所だと改めて感じた。
社長とは30分ほど電話をした。
電話を切ってから、LINEを開いて、警備員に「わかった。お大事に。」と返信した。
それから僕はハチカイのことを思い出していた。
警備員とこんぽんと2年半やってきた。
僕は去年「不気味の谷を抜けたばかりのコンピューター・グラフィックス」と警備員にnoteで揶揄されてしまったが、今はどうだろうか。
(参照:https://note.com/kevipper/n/nd65a7a79c3c7)
僕は「芸人として成功していく」こともそうだが、その過程を通して、人間らしく成長したいと思っている。
そしてハチカイとして活動してきた2年半は、僕にとってかけがえのない自信となった。
体力的にかなり苦しい時もあったが、この2年半の努力で、自分を嫌いにならずに済んだ。
全ての体験が僕の本心を引き出してくれて、トラウマも克服も多く味わい、谷から遠ざかることでポリゴンをなめらかにしてくれた。
M1のやり取りの中で、パッチューネの社長から「ニシブチは強い!」と言葉をもらった。
「ニシブチは強い!」
強い
つよい
ツヨイ
ツよイ
っヨぃ
僕は強いんだろうか。
クローゼットに漫才衣装をしまいながら、そんなことを考えている。
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