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いつもの産直で野菜の買い出し。ここに来ると「旬」というものが手にとるようにわかり、まだ僅かに浦島太郎気分を引きずっている私には毎回新鮮な驚きがある。最近は大根がすべすべと白く美しい。よく目につく所にごろごろとたくさん並べられ、存在感を発揮している。

売り場では、私より二回りほど歳上と見える女性たちが「大きいわねえ!」「この大きさしかないのかしら」などと言い合いながら、どの大根を買うかを吟味している。確かにスーパーで売られているものよりも、1.5〜1.8倍ほどは大きい。それでいて価格は1本120円前後と安い。2人暮らしには少し大きすぎるかしらと思いつつも、1本選んでその場を離れた。

店内をぐるぐる回ってキャベツや茄子などをカゴに入れ、やっぱり持て余してしまうような気がして再び大根コーナーへと戻る。すると、さっきは見落としていた一角に、違う生産者の方のやや小ぶり(といっても十分なサイズ)の大根が70円前後で並べられているのに気がついた。

ひとり嬉々として選び直していると、ニコニコ顔のマダムがやってきて、「ここに良いのがあったのねえ」と話しかけられる。「そうなんです、このくらいの大きさの方が使いやすいですよね」と応じると、「それに何より」と来たので、「安いですしね」と返すと、さらにニッコリとしながら「そうよねえ。見つけてくれてありがとう!」とお礼を言ってくださった。

大根を選んでいてお礼を言われたのは、たぶん人生で初めての出来事だな、でもなんだかうれしいな、と思いながら帰路についた。見るからに新鮮だったので大根サラダにして今日の夕飯に出したら、今日のできごとを何も知らない夫がおいしいおいしいとそれを食べていて、ますますひっそりと喜んだ。