12/14(スーパーにて)

サンパウロのスーパーでは、レジ精算の途中で行方をくらませる人がしばしばいる(買い忘れなどに気がついた時、並び直す人は稀)。きょうもそのような状況が発生し、わたしたちの前に並んでいたアジア系のお爺さんがぷりぷりと怒り出した。彼の呪詛のことばを、曖昧な笑顔でやり過ごそうとする我々。

それなりに長い虚無の時間が過ぎた頃、ブラジル人らしきマダムが戻ってきた。その顔はあくまでもほがらか。買い忘れをしなかったことのよろこびに満ちている。しかし、お爺さんのムスッとした表情にハッと気がついた模様。そこで彼女が発した第一声は、

「おはようございまーす!」

そう来たか。しかも、お爺さんから反応がないので、ふたたび、

「おはようございまーす!」(ちなみに、発音がよい)

またも流れるシラけた時間。お爺さんはおそらくは中華系の方だったのだ。マダムは「?(あら、変ね!)」という表情をしていたが、わたしたちの方が居た堪れないような気持ちになってしまった。「おはようございまーす!」と後ろのほうから返すべきかどうか、真剣に思案してしまったほど。

ちなみに、マダムが去り、お爺さんの会計の番が来たが、彼は彼で、われわれの予想の3倍以上の時間を精算に要していた。これもまた、この街でのよくある風景、かもしれない。