7/21

いつもの産直で野菜を買う。トマトが少なくなっております!とマイクをつけた店員さんが買い物客に呼びかけている。売り場を見ると、確かに少ない。手にとってみると、価格が先週と全然違う。買うのをやめて、スーパーに立ち寄ることにする。

スーパーに着いたのは開店時刻と同時だった。並んでいた何人かの人たちが店の中に吸い込まれてゆく。そちらに目をやりつつも、気になって仕方がないものがある。入り口ドア付近に突如設置された、プレハブ小屋ふうのスペース。あれは何だ。

よく売りに来ている焼き鳥屋が設えを変えたのかと思ったが、そうではないらしい。焼き鳥屋ではなくスーパーの店員でもない男の人たち(各々がTシャツと長ズボンとゴム長姿)が、せっせと何か作業をしている。少し離れたところからじっと見て、これが鰻の焼き場であることにようやく気がついた。傍に置いたバケツの中には1.5リットルのスポーツドリンクのボトルが何本も冷やされていて、彼らの今日1日の忙しさを思わせる。

入店すると、入り口には土用丑の付け合わせに!というポップとともにミョウガや大葉や三つ葉が売られていて、足を止めてそれを買う人が多数いる。つられてミョウガを買いそうになったが、安くないことに気付いて押しとどまった(ちなみに、目的のトマトは先週より100円も値上がりしていた)。

店内にも徐々に鰻の焼ける匂いが充満してきている。鮮魚売り場を通ると、威勢のよいおじさんが焼き鰻一尾2,580円のパックを手にした奥さんに、「絶対、ぜぇーったい美味しい!」と大声で話しかけている。数人の客がそちらに目を向けたのを捉えると、さらに音量を上げ、「今焼きました!今焼いたばかり!15分前に焼いた!」と叫んでいた。

普段はおとなしい雰囲気のスーパーだから、今日の突然の活気を受けて、熱狂の渦が生まれつつあるような感じがする。家庭科の授業で習った、実演販売で会場の熱気にやられて馬鹿みたいに買い物をしてしまう話を思い出す。巻き込まれない自信がないので、トマトともやしと舞茸と椎茸だけを買い、急ぎ足で店を後にした。週末に鰻を食べておいてよかった。