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王道であり斬新なストーリー。 『ワールドダイスター』が放つ超新星の輝き

 演劇アニメ。
 それは、舞台の上に青春をかける存在の輝きの軌跡を追うフィルムだ。たった一度きりの「本番」のために情熱を注ぎ、努力を尽くす――。

 2023年4月より放送している新作アニメ『ワールドダイスター』も、演劇という題材に正面から挑む作品だ。
 この作品は、演劇が一大ブームメントとなった「超演劇時代」を舞台に「ダイスター」と呼ばれる超一流の役者をめざす少女達の青春群像劇である。

 制作を担うスタッフの布陣にも注目したい。
 キャラクター原案に人気イラストレーターのMika Pikazoを起用し、ストーリー原案は『勇者である』シリーズを手がけたタカヒロ、音楽制作は『ウマ娘 プリティダービー』と同じランティスが担う。
 まさに最先端を走るトップクリエイターたちが結集した超・メディアミックス作品といえるが、特筆すべきはその物語だ。

新作舞台アニメの幕が上がる


 本作の一番の魅力はストーリーにある。
 同ジャンルの先行作品としては『少女歌劇☆レビュースタァライト』が有名だが「スタァライト」の見どころが歌とアクションにあるのに対して、
 『ワールドダイスター』では奇抜な設定を用いながらも、地に足のついたドラマが展開される。

 とりわけ演技と役者について、丹念に掘り下げられている点が興味深い。

 第1話では、天真爛漫な女子高生・鳳(おおとり) ここなが、憧れの劇団である『シリウス』への入団オーディションを受ける。
 オーディションの稽古相手は『シリウス』のNo.1役者である柊 望有(ひいらぎ のあ)。彼女がみせる磨き抜かれた演技は、受験者たちの拙く弱い演技と対比されることで、より際立つ。
 それは残酷なほどに、両者の『センス』の差を感じさせるだろう。
 しかし、ここな達もまた役者である。
 作中では、役者たちがどのような思考を経て演技プランを組み立てているのかを詳細に描いていく。

 未熟な役者の卵たちが、ベテラン女優に一矢報いようと懸命に試行し奮闘する姿には、視聴者もつい手に汗を握らざるをえない。

 そんな"ストーリーから熱くさせられるアニメ"なのだ。

王道であり斬新な ”ふたりの関係性”


 天真爛漫な女子高生・鳳ここなが、舞台に命をかける仲間たちとの出会いを通して成長していく……。『ワールドダイスター』は、青春モノと演劇モノの王道をなぞったアニメだと思うことだろう。
 このアニメを4話まで見た感想としては、むしろ「斬新」の一言に尽きる。
  
 なぜなら、ここな親友である静香のやりとりは、冒頭から”ある違和感”を感じさせるからだ。

 その違和感の正体とは?
 ぜひ第1話のラストを見届けてほしい。

終幕まで、まばたきをする間もなく


 もちろん、第2話以降にも観客を飽きさせない趣向が散りばめられている。個性豊かなサブキャラクターたちが繰り広げる会話劇。古典的名作をアレンジした劇中劇。華やかな歌唱シーン。アニメ好きも、演劇好きも、どちらも満足できることまちがいなしだ。
 観客席から舞台を見上げるうちに、魔法のような早着替えをおこなう役者たちに観了されるように、作品から目が離せなくなる瞬間が何度も訪れる。『ワールドダイスター』の視聴体験は、まるで観劇そのものといえる。

『ワールドダイスター』は現在、第7話まで放送・配信中。
 大注目の新作アニメは、いよいよ終幕へと向かっていく真っただ中だ。ここなたちの活躍から、ますます目が離せない。
 


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