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Day1:三つの心得

小説は書き出しが重要だとされる。どこかで読んだ。しかし、詳細な理論はしらない。

確かに、読者は小説の書き出しで、これから先、繰り広げられる物語を読むかどうかを決める。書き出しがつまらなかったら、読もうとしないだろう。

これは小説である。おそらく、小説である。

どんな小説かって?

それは、書いてみないと分からない。読んでみないと分からない。書いているわたしもよく分かっていないのだから。

こうした書き出しは、小説の内では最悪の部類に入るだろう。今から面白い話を期待して読み始めた読者に対して、「よくわかならい」と心許ない宣言をするのだから。そう、確かに「面白い」話を期待して、この小説を読み始めようと考えているなら、やめたほうがいい。

これからわたしはある物語を語ろうと思っている。「物語」というにはすこし品が無し、大袈裟な気がする。大体、「物語」とつくものには壮大なイメージがある。「〇〇国物語」とか、「○氏物語」とか、ある国とある人の人生を「物語」という形で書き切った壮大なストーリーだ。これからわたしが語ろうと思っているのはそんなものではない。

わたしの背後で、キャラクターたちがウズウズしている。早く俺たちを書け。早く物語を書け。しかし、ちょっと待ってほしい。もうちょっとこの小説を始めるにあたって、せつめいがいるとおもうのだが。読者も困惑するだろうし。

え? もうこの書き出しで困惑している? 別に困惑させるつもりはないのだが……。しかし、これから先、書くにあたってはもっと困惑すると思うぞ。

え? うるせえから早く代われ? ちょっと待ってくれ。まだ説明したい。だって、わたしがこうして誰にも邪魔されずに何かを言えるのは多分、これで最初で最……ゴッ(殴る音)。

ゴソゴソ……ボッ(マイクの側で暴れる音)

(しばらく暴れる音が聞こえる。聞こえるって、誰に?と突っ込みたくなるが、とにかく、この小説の主導権争いが背後で起こっているらしい。)

(誰かが、「マイク返せ!」と叫ぶ。「うるせえ、そんなクソみたいな出だしでたまるか」と反抗的に怒鳴り返す音。)

(「もう、やめろや。喧嘩する方がクソや。せっかくアタシたちの小説が始まるのに」と、下手くそな大阪弁の女性の声。)

(仲裁もやむなく、乱闘する音。)

(「お願い、お願いだから、これだけは言わせてくれ!」悲鳴めいたナレーションの声。)

(乱闘が一次中断されたのか、沈黙が流れる。)

(「何が言いたいんだよ。」と、マイクを強奪したらしき男の声。)

(「とにかく、読者待たせてるから、マイクを返せ。いきなりお前が出てきてもわけわからんから!」ナレーターはイラついたように怒鳴り返す。)

(「じゃあ、なにか考えがあるのかよ。」と、男。
「まあ、いいやん。あんただって、この状況どうにかできるわけやないやろ」と、また下手くそな大阪弁。
「ちっ、ちゃんとお膳立てしろよ。」と男が吐き捨てるように言う。)

(ゴトリ、と床にマイクが置かれる音。ナレーターの服が擦れる音。)


アー、アー。取り乱しました。グスッ(しゃくり上げる音。)ハァーッ。

(息を整える、間。)

えーっと、と言うことで、一つこの小説を読むにあたって、申し上げたいと思います。これは、ナレーターのわたしとしての意思表明でもあります。それと、同時にこれからお付き合いしてくださる……してくれるのかな? 読者様に対する注意書きでもございます。これをご了承の上、この小説をお読みください。

えーまあ、幾つもあるわけでもないし、特に考えてきたわけでもないので、今、この場で三つにまとめさせていただきます。

まず、一つは「この小説は、何が書かれるかわからない」と言うことでございます。これは、先ほど申し上げさせていただいた通りでございます。普通の小説をお読みになりたい方は、ええ、noteに素晴らしいものがたくさんおありですので、そちらをご参照ください。



そして、二つ目はえーっと、何にしようかな。「この小説は、筋も台本も無い」ということでございます。ええ、どうやってストーリーを決めているのかと言いますと、「思いつき」でございます。ですので、深読みしたり真面目に批判するのはお控えください。ええ、でも真面目の真面目、大真面目な批判は大歓迎でございます。感動や、エモーショナルなものを求めるのもお控えください。キャラクターが駄弁っているグダグダな茶番が繰り広げられていると思います。

そして、三つ目は……「それでも楽しむこと」としましょうか。ええ、こんなくだらない小説でも読もうと思われた方、せっかくですので楽しみましょう。ええ、書いているわたしも楽しみたい! 絶対楽しみたいと思っております。ですから、ええ、ええ、楽しんでいきましょう! イエイ!

ではでは、始まります。

タイトルは、『三猿ベイベー』でございます。お楽しみに〜。

つづく。

最後までお読みくださりありがとうございます。書くことについて書くこと、とても楽しいので毎日続けていきたいと思います!