歩道橋

先日歩道橋の階段を降りていると下に人が倒れているのを目撃しました。何があったんだ?と立ち止まりました。
その次に目に入ったのは周りにいたその人を見て通報したと見られる人と救急隊員の人、そして野次馬の方々。お手本のような事件現場の様相を呈していました。
しかし様子を見る限り僕にできることは何もなさそうで、そうならば特に野次馬趣味がない以上この場から早く立ち去るのが得策。そう判断してまた僕は階段を降り始めました。正面に事件現場を捉えながら階段を降りていると急に視界に空が映りました。滑った、と気づくのにそう時間はかかりませんでした。ここから時間がゆっくり流れ始めます。よく命の危機を感じた時、脳がそれを回避するために過去の記憶を遡って脱出方法を探るなんて言いますがまさにその状態でした。咄嗟に僕は階段の手すりに手を掴み、後方に向かって倒れ始める体を支えようとしました。頼れるのは手すりを掴んでいる右腕のみ。そんな時僕の右腕はいつも以上の力を発揮してなんとか僕が転ぶのを阻止してくれました。火事場の馬鹿力というものでしょうか。
なんとか救急車をもう一台呼ぶことになるのを回避した後動揺を抑えながら慎重に階段を下り終え、現場を横目に立ち去りました。救急隊員の方も救護中に別の急患が落ちてきたら最悪どころじゃないですからね。とりあえずお手を煩わせることにならず良かったです。
現場を通り過ぎた後背中で騒然とした様子を感じながら歩いているとふと気づきました。
もしかしたらあの倒れてた人も僕と同じ場所で滑ってしまったのではないか?と。僕もあの時手すりに掴まれていなかったらあのまま落下していたと思います。そうなるとちょうどあの人が倒れていた場所に倒れることになっていたのでは?
そんな疑問が頭の中を巡ります。
こんな体験、人生初でした。

#8

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