飛行場

月蝕であった。めずらしいものを見れたが心躍るようなものでもなく、ほうほうと頷くばかりであり、その後の満月がやたら光ってみえてきれいに感じられたほどである。昔の人が蝕を凶兆とみたのがなんとなくわかったような気がする。
さて、ついこのあいだ、仕事が決まった。長い求職期間を経ただけ、嬉しいというより疲れのほうが出てしまう。とはいえ、決まったからにはあとは進むだけであり、これはなんとなく旅行の気持ちと似ている。航空券はとった。あとはポンと出てワーッといくだけ。そんな感じで喩えると、今は飛行場の腰掛けでぽかんとしながら、足をぶらぶらさせているようなものかもしれない。わかっているのについていけないのだ。けれども、目的地に降り立てば、あとはテンポを失わないように気をつけつつ、目まぐるしく変わる景色や人と向かい合い、この身を馴染ませていくことを楽しめることは何度も経験している。そんなことを仕事でできたらいいと願うばかりである。(なつき)