The Lake

赤々と燃えるようだったハナミズキの葉はすっかり落ち、細い枝が風に吹かれて揺れている。裸のハナミズキはあまりにも弱弱しい。一方で、遠くに見える枇杷はくすんだ花をもりもりとつけている。

二月に入り、そろそろ梅が見頃なのだろう。このところ食料品すらネットで済ませがちで家からほとんど出ておらず、頭の中に残っている、小学生のころ、給食室の前にあったあの一本をまたもや思い出している。古い大きな学校で、屋根付きの大きな相撲場があった。けれども自分と同じ世代の子供は誰も相撲をしないし、そういった部活もなく、給食室へ向かう渡り廊下の手前はただ人の寄り付かない場所になっていた。そこにお世辞にもたくさんとは言えない真っ白な花をつける梅が、その寂しい場所を少しだけ彩っていた。そのバランスが気持ちよく、寒さにも負けず休み時間によくひとりで見ていた。

そういえば去年もこの話を書いたような気がする。それほど自分の中に強くあるのだろう。実際毎年頭に浮かんでくる。小学生時代のことはほとんど覚えていないけれど、ビオトープのメダカ、動物小屋のウサギと小鳥、大きなソテツと大量の桜をはじめとした多様な植物、職員室前の大きな鯉のいる蓮池、一輪車、鉄棒台、そうした写真の様なイメージは鮮明に残っている。
中学校はあまりそういった目の喜びがなく、古い校舎の天井についた扇風機だとか、ウォータークーラーが思い出される。

ひととの思い出を忘れやすいからこそ、景色に頼って記憶を掘り出していく。植物たちはそのための鍵になりやすい。記憶を積み重ね、知識で固めていくことで、いろいろな鍵穴を開けられるようになればいいなと思う。
そのためにも今朝は久しぶりに外へ出た。イメージの中の梅とは違ったけれど、日差しを受けた鮮やかな桃色の梅も、また鍵へと変わっていくのだろう。


The Lake - Rinbjo 
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