てしてし

早朝にガラス戸を開けると一面が白くて驚いた。先日の大雪をうわまわる大大雪である。今年はなかなかめずらしく、よく雪が降っている。初めて傘をさして雪の下をあるいたら、下からギュギュ厶と聞こえるだけでなく、てしてしと上からも鳴り初めての音にまた驚かされた。草むらや土だけでなく、歩道も路面までも雪で埋め尽くされている。車に乗っていたらさぞや怖いだろう。枯れ葉を落とした木はまた葉を広げるような形になっていた。あらゆる色彩が奪われたようで、それなのに鮮やかに感じるのはなぜだろう?
地元では雪がたいそうめずらしく、積もるなどもすれば小学校の授業は自由時間となり子たちが校庭へと放たれていた。わたしはどう遊んだのか忘れたが、ダルマストーブのあたたかさや、手袋の上で小さく固まっている雪の欠片など憶えている。以前より暖かくなった今日ではもうほとんど降らないらしい。今でも雪を喜ぶ癖は残っており、ひとりはしゃぐあまり乗るべき電車にあやうく遅れるところであった。それが雪景色を鮮やかに見せた理由なのかはわからない。
家からだいぶ離れている職場では積もってはいなかったが、これまためずらしいものを見た。天気雨ならぬ天気雪である。雪が降ったりやんだりしていたが、昼過ぎに日射しがあるのにまだ降っていた。てしてしと音を鳴らすであろうそれらが、鈍く光を放ちながら舞うさまは実に見事で、思わずうわあと声に出てしまった。(なつき)