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【抄訳】ゲームディレクターによる「ジャーニー」の詳細な分析

この記事はグウェントに先日導入された「ジャーニー」と呼ばれる新しい進捗&報酬システムについて、ゲームディレクターの Jason Slama さんが公式フォーラムに投稿した解説記事の日本語要約です。

【解説記事が投稿された経緯】
  Ver.6.1 のアップデートとともに、これまでの「日別クラウン」を拡張する「ジャーニー」というシステムが導入されました。
  最初のうちはプレミアム課金の報酬の良さで歓迎されましたが、しばらくすると無課金のユーザーは以前の日別クラウンよりも獲得できる報酬ポイントが少なかったり、1週間で獲得できるクラウンポイント(以降CPと略す)に上限があることがわかり、批判の声があがりはじめました。新システム導入時にありがちなバグや、仕様の説明不足もあいまって、コミュニティの反応はどんどんネガティブになっていきました。
  そこで導入の経緯や、数値設定の根拠、今後の方針を説明する解説記事が投稿されることになりました。
  なお、クラウンポイント(CP)はラウンド勝利に対して与えられるポイントのことです。

導入

「日別クラウン」から「ジャーニー」になったことの影響について、たくさんの誤解があるので、説明を行いたい。長い記事になるが、最後には今後の方針も述べる。

これまで未公開であった基礎的なデータから議論をはじめる。青いセルは静的データであり、設定値や他のデータ分析から得られたものである。緑のセルは主にそれらを加工したデータである。

長いので、興味のある項目だけ読んでもよいし、ざっくり知りたい場合は「まとめ」だけ注目するとよい。

「ジャーニー」のレベルシステムに関する基礎的な統計

下記の表は「ジャーニー」の進捗の仕方の基礎的な数値である。レベル1から始まるためレベルアップの回数は99回である。

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まとめ
3ヶ月で 2376 CP は多い。1日あたりに必要な CP は 28 を超えており気が遠くなる。この必要 CP 量を相殺するシステムについて、この後に議論する。

1試合あたり平均何 CP 得られるか?

計算を行うために、長期間の統計で得られた下記の推定値を用いる。(訳注:小数点をカンマで書くフランス式表記であることに注意)

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これはあくまで平均であり、プレイヤーの技量によって1試合あたりの平均 CP 数は変わる。

まとめ
平均すると1試合あたり 1.18 CP が得られる。これは以前の日別クラウンと変わっていない。

1時間あたり平均何 CP 得られるか?

進行にかかる時間の大まかな目安を計算する。ボーナスの類はここでは無視する。また、これはあくまでの平均であることに注意。

まだ、説明をしていなかったが、1週間あたりに獲得できる CP 量には上限値100が設定されている。これは「ジャーニー」の完遂が早すぎてしまわないようにすることが目的である。 獲得 CP 量の上限値は日別クラウンにもあったが、こちらは1日ごとにリセットされていた。我々は毎日やり込めないせいで損する人を減らしたい一方で、無限に稼げないように週ベースの制限を設けた。

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まとめ
進行を手助けするシステムを除外すると、最大レベルに達するためには12週間で403時間が必要となる。しかし、1週間あたり17時間で獲得 CP 上限に到達する。

これだけでは、レベル50までしか上がらない。

レストボーナスの効果

毎日、全てのプレイヤーはラウンド勝利に対し「レストボーナス」で追加の CP が与えられる。これは週の獲得 CP 上限には影響しない(現在バグがあり週明けに修正予定)。「レストボーナス」の上限は 14 であり、毎日リセットされる。

これの効果は少々複雑で、あなたがカジュアルなのかガチなのかで変わってしまう。勝率の影響も受ける。ここでは平均的な数値を用いる。

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まとめ
全勝すれば1時間半かからずにレストボーナスを使いきれる。平均的にはレストボーナスの消化には2時間以上かかる。

毎日平均2.4時間で消化できるという数値は、前項の週の獲得 CP 上限に達する1日あたり平均2.4時間プレイのものと同じになっている。

この段階で、無課金でも毎日努力すればレベル100に到達できるようになっている。

ジャーニークエストについて

さて、進行の方法は他にも用意されている。遅れてジャーニーに参加したプレイヤーが追いつけるために、そして要求量を緩和するためにジャーニークエストを追加した。

ジャーニークエストの仕様
プレイヤーは2つの連続クエストにアクセスできるようになっており、各々、1つを完了すると次に進むようになっている。片方の連続クエストは無料であり、もう片方はプレミアム課金と連動している追加クエストである。細かい挙動は下記の通り。
■ 課金の有無にかかわらず、全てのプレイヤーは2つの連続クエストを進行し完了できる(バグがあり修正予定)。
■ 全てのプレイヤーは無料分の連続クエストを完了すると報酬が得られる。プレミアム連続クエスト分は課金をしないと報酬は得られない。
■ プレミアム課金をすると既に完了している分のプレミアム連続クエストの報酬が得られる。
■ 連続クエストは両方とも毎週新しく3つのクエストが増える。
■ クエストはジャーニーの終了日までなくなることはない。つまり、最終週に参加した場合は、無料分の合計36の連続クエストと、合計36のプレミアム連続クエスト(合わせて72クエスト= 1440 CP 分)を最初から進行することができる

全てのクエストは 20 CP が完了報酬となっている。クエストの目標は:
■ 2~3試合で完了するぐらいの簡単なクエストにする。
■ 活力や同化など、特定のプレイを必要とするクエストはより簡単に終わるようにする。

ジャーニーを完遂してしまったとしても、クエストは進行できる。しかし、報酬は意味がなくなる。

では、数字を見ていこう。

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まとめ
連続クエストを完了するまでの平均的な時間は1週間当たり1時間半と少ない。他と比較すると楽に CP が稼げるようになっている。3ヶ月の全工程で18時間しか必要としない。

無課金プレイヤーの場合、クエストを完了することでLv100までに稼ぐ必要のある CP 量が30%削減される。途中参加で追いつけるようにすると同時にカジュアルなプレイヤーのブースト要素となっている。

課金したプレイヤーの場合は稼ぐべき CP 量は60%も削減される。

いつまでにジャーニーを開始しないとダメか?

クエストによって CP 量が稼ぎやすくなっており、途中参加であっても比較的簡単にLv100に到達するできる。プレミアム課金をした場合は 936 CP をクエスト以外で稼ぐ必要がある。無課金の場合は 1656 CP が必要だ。

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まとめ
無課金の場合、1ヶ月遅れで途中参加してもLv100に到達できる。
プレミアム課金の場合は2ヶ月遅れでもLv100に到達できる。
無課金プレイヤーでもLv100に到達までに余裕がある。

ジャーニーの総報酬ポイント

報酬ポイント(以下、RP:Reward Point を略す)の価値がどの程度かに関して、いくつかの前提がある。

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まとめ
「total RP(総報酬ポイント)」と「Avg RP per level(1レベルあたりの平均報酬ポイント)」は、この後の計算で用いる。「Small RP amount(小型報酬ポイントの量)」を2から3にする場合も考えてみる。

日別クラウンシステム時代のプレイヤーはどうだったか?

プレイヤーの実際の行動について見ていく。拡張直後のような人が増えるタイミングではない平均的な1日について考える。この数値は数カ月の平均であり、誤差があっても無視できる数値である。

この数値は、試合後の小報酬(訳注:試合後にカードや鉱石、報酬ポイントが貰えるシステムでジャーニー導入で廃止された)としてもらえる報酬ポイントは反映しているが、他の小報酬は含まれていない。そのため、実際の RP 換算の数値は高くなるが、その影響は非常に小さい。

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まとめ
この表は平均的なプレイヤーであっても 2 RP 程度しか得てしないことを示している。1日最大 9 RP 手に入っていたという話があるが、それよりはるかに少ない。これは我々の古いシステムが小報酬を含んでいたとしても大多数の人にとって意味のある進捗を与えることに失敗していたことを示している。毎日進捗がリセットされることが原因で、1日にわずかな試合しかしていないプレイヤーは報酬獲得まで到達できなかったと考えている。我々はこれを解決するために日課システムから週課システムに変えた。

3ヶ月でどれだけの RP が獲得できるか?

この回答をする前に、ジャーニーでレベル100に到達した後にどうなるかを説明する。小報酬のない日別クラウンシステムが戻ってくる。日別クラウンが導入されて以降、ゲームに加わった補助的な報酬システムを考慮して、ジャーニー完了後に戻ってくる日別クラウンから小報酬を取り除くことにした。これにより、ジャーニー完了後は1日あたり 6 RP が獲得上限となる。小報酬を RP に換算する場合、1日の上限は 4 RP相当となり、旧システムでは1日あたり最大 10 RP 得ていたことになる。

では、旧システムの数値を見ていく。

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現行システムの無課金ユーザーの数値は、

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プレミアム課金したユーザーの数値は、

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​まとめ
無課金ユーザーも課金ユーザーも、1日あたりに獲得できる RP 量はジャーニーが有効な間は、ジャーニー完了後よりも少ない。これが大きな問題であることがわかった。原因の1つは、最終段階でプレミアム課金時の報酬の RP 部分をその経済上の影響を考慮せずに装飾アイテムに変えたことである。

週あたりの獲得 CP 上限を上げれば良いのでは?

上記の問題点を考えると、ジャーニーから獲得できる RP を増やしても、究極的には満足いく結果にならない。ジャーニーで得られる RP 量をかなり増やさないといけなくなる。しかし、それでは多くのプレイヤーに影響を与えてしまうので、進行速度の観点から解決を試みる。

【訳注】
  現在のシステムでは獲得 CP 量に週上限があるため、無課金ユーザーはどんなにプレイをしても9週間はジャーニーをして、その後3週間は小報酬なしの日別クラウンをすることになる。
  12週間でみると、1日あたり最大 3.16 RPとなり、現在の小報酬ありの 10 RP 相当と比較すると3分の1である。小報酬を無視したとしても1日あたり最大 6 CP にするためにはジャーニーから得られる RP 量をほぼ倍にする必要がある。
  しかし、倍にしてしまうと、多くのカジュアルなプレイヤーまでもが毎日10時間プレイするような人と同じだけの報酬を得られてしまい、別の問題が生まれる。

たとえば、週上限を 200 CP にしてみる。

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課金プレイヤーに関しては良い感じの値になった。しかし、無課金プレイヤーは、まだ足りていない。そこで週上限を 350 CP にしてみる。

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この閾値が良さそうである。無課金でも課金でも以前よりは1日あたりの最大報酬ポイントは増える。他のデータからも考えて良い波及効果が得られている。

他の RP 獲得手段も考慮すると、無課金プレイヤーは月間 200 RP 以上を稼げるので、シーズンツリーもやりやすくなる。

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途中参加でもLv100まで終わらせられる“終電”のタイミングもより健全になる。

結語

新しいシステムは1日に11時間以上プレイするような人にとっては報酬が少なくなる。それもかなり減ることになる。しかし、約88%のプレイヤーはもっと報酬を得られるようになる。これはジャーニークエストのおかげで必要な CP 量が無課金なら30%、課金なら60%減ることに由来する。1週間あたり7時間半で済み、加えて、どのタイミングでもジャーニーを完了することができる。さらに、毎日プレイしなくてもジャーニーを完了すれば毎日 2 CP(訳注:6ラウンド勝利)を得るだけプレイしたのと同じ RP 量を獲得できる。課金した場合はそれ以上となる。

さらに言えば、これらは他の報酬ポイント獲得手段であるシーズン終了時のランク報酬やログインボーナス、デイリークエストや依頼、プレスティージの特典を含まない。小報酬がなくなりはしたが、プレイヤーは自分のペースに合わせた潤沢な報酬システムを享受していると考えている。追記があるが、いくつかのことをしなければならなず、それまでご不便をおかけします。
■ 週の獲得 CP 上限を350にする
■ レストボーナスを含むいくつかのバグを直す

ところで、お願いがあります。みなさんは私たちにもっとコミュニケーションをしてほしいと要求しました。何人かが指摘したように、大事なのは対話であり、ただ私たちが説明するだけではありません。このスレッドは、私たちの透明性に対する努力の一環であり、みなさんの意見を聞いていることを示すためのものです。私たちは考えを示すことで、議論のたたき台を作りました。一方、一部の人に対して、もっと広い心を持ち、変更が行われた直後に私たちに刃を向けないように自制心を持ってもらいたいと思います。私たちは失敗することがありますが、みなさんの意見は聞いており、グウェントを最高のゲームにするための解決策を模索しています。

最後になりますが、金曜夜の寝る前に投稿したので返信は遅くなります。

【訳者あとがき】
  本来であれば、「ジャーニー」は3月14・15日の Gwent World Masters 大会でお披露目されたものだと思います。新型コロナウイルス関連の状況変化を受け、サプライズ導入という形になったのでしょう。
  大会でお披露目されていれば、そこから2週間はあったのでコミュニティの懸念点を開発陣が吸い上げ、仕様の説明をしたり FAQ を増やすこともできたでしょう。導入前にこの解説記事が欲しかったというのが本心ですが、現在の世界的な状況を考えると仕方ない部分もあるでしょう。
  最終的に「ガチプレイヤーほど損をする」という現行システムの問題部分が改まる予定とのことで、良い形に落ち着くと思います。

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