見出し画像

【翻訳】Slavic Saturday:ヴォジャノーイ

この記事は「グウェントで学ぶスラヴ文化」をテーマに2021年11月6日に Notion 上で公開されたものの移転記事です。原則として当時のまま転載していますが、ほとんどの画像は転載していません

著者:DrDenuz 翻訳:nippongwent
この記事は「Team Bandit Gang」の記事「Slavic Saturday: Vodyanoy (EP10)」の日本語訳です。元記事のURLは既にリンク切れとなっています。
URL:https://teambanditgang.com/slavic-saturday-vodyanoy-ep10/

導入

昔のスラヴ人たちにとって、森とその中にある沼はどこにでもあるものでした。農場や村の周り、山でさえ、森に囲まれていました。それらの森には精霊が棲んでいました。
スラヴの神話に登場する精霊は、ほとんどが肯定的には描かれません。夜の影に潜む悪魔の話は、スラヴの部族や国中に広まっていましたが、その中でも最も恐ろしい話の一つがヴォジャノーイです。
ヴォジャノーイは、男性の邪悪な水の精霊で、蛙のような顔をした裸の老人の姿をしています。

訳注:グウェント民が崇めている「ダゴン」(Dagon)はメソポタミアの海神の名です。The Witcher のボスとして登場しています。一方、ヴォジャノーイはもっと一般的な水の怪異で、日本でいうと「河童」が近いと考えられます。河童との類似点と相違点を考えてみるのも面白いでしょう。

語源

「ヴォジャノーイ」という言葉はロシア語の「водяно́й」を読んだもので、「水中から来た男」という意味があります。
別名として「ヴォドニク」「ヴォデニャク」「ヴォジャニク」「ヴォドニーク」「ハストルマン」があります。

ヴォジャノーイの様々な顔

上記の通り、ヴォジャノーイは蛙のような顔をした裸の老人の姿をしていて、緑色の髪と髭を持っています。皮膚の代わりに黒/灰色/緑色の魚鱗を持ち、体は藻と泥で覆われています。この川の悪魔は水かきのある手足を持っており、目は燃える火のように赤く、背面には魚もうらやむような尻尾が生えていました。
スロヴァキアとチェコではヴォジャノーイはそれぞれヴォドニーク、ハストルマンと呼ばれ、その姿は蛙のような生物から、より擬人化された存在へとなっています。人間と異なる特徴は、えら、水かき、そして最も注目すべきは藻に覆われた緑色の皮膚です。また、淡い緑色のおしゃれな髪を持っており、現代のインフルエンサーではありませんが、流行に敏感な存在といえるでしょう。
大抵の場合、ヴォドニークは本当におかしな着こなしをしていたようです:継ぎ接ぎのあるシャツに、水に浸かったコート、あるいは長いリボンのついたボーターハットから真っ赤なシルクハットのような奇妙な帽子です。

訳注:「ボーターハット」(カンカン帽)は麦わら帽子の一種です(参考:Wikipedia

行動

ヴォジャノーイは水に半分沈んだ丸太に乗っかり、大きな水しぶきを立てながら、川沿いを移動しているのですぐに気が付きます。一見、気まぐれで、むしろ無害に思えますが、水のドリアードやルサルカと一緒に、水難死の大部分の原因であると囁かれています。
ヴォジャノーイは、機嫌が良いときは人を助けてくれることもありますが、ほとんどの場合、この水の住人は昔のスラブの村の生活を脅かす存在でした。ヴォジャノーイの怒りからは逃れられなず、ダムは破壊され、水車は流され、人や動物は溺れさせられます。この水辺の悪魔が強く害意を抱いたときは、彼の水中の住居の奴隷にさせられます。哀れな被害者は、この水底の悪漢のあらゆる気まぐれに晒され、逃げることはできません。

スロヴァキアやチェコの地では、この川の魔物は犠牲者の魂をティーポットに貯め込んでおり、これがヴォジャノーイの社会での地位を表していると言われています。より多くの魂の入ったティーポットを持っているものが特権を享受していました。犠牲者にとって幸いなのは、ティーポットを開けることで魂が解放できることでした。
ヴォドニーチ(ヴォドニークの複数形)は暇なときはカードで遊んだり、パイプをふかしたり、あるいは単純に川や湖の近くの岩に寝そべっていました。
ヴォドニークたちの住まう川や湖の魚たちは、この緑の男の手下でした。

ヴォジャノーイ対策

ヴォジャノーイを鎮めるために、漁師や粉ひき屋は供え物をすることがありました。たとえは漁師はタバコを少しのあいだ水面に置き、次のように唱えました。「これはヴォドニーク様のタバコでございます。では、魚をください」。
そのほかにも、動物や人間でさえも生け贄に捧げるといった予防策がありました。ウクライナではあまり大げさでない方法が賢い助言として伝わっており、水辺の近くに馬の頭蓋骨を埋めることが推奨されていました。また、ベラルーシでは黒い雄鶏を水車小屋の扉の下に埋めることや、黒い猫と雄鶏を水車小屋に置くことが推奨されていました。

DrDenuz は Bandit Gang のゲストライターです。 彼についての情報はこちら:TwitterTwitchYouTube

※カード情報は https://gwent.one/jp/cards/ の Export 機能を使用しています
※「日本グウェン党」の記事は「CDPRファンコンテンツガイドライン」に従って作成された非公式のファン作品であり、CD PROJEKT REDによって承認されたものではありません

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?